2017年3月 No.100
 

特集‌ 塩ビリサイクルの3つの動き


Report 2(株)大水産業鰍ノ見る、塩ビ管リサイクルの今

JIS認証品
「タイスイRスーパーVU」
JIS認証品
「タイスイRスーパーVU」

リサイクル管の信頼性向上へ多様なチャレンジ。
高品質追求ゆえの課題も

 塩ビ管リサイクルを土台に事業の多角化を進めてきた照和樹脂に対し、1975年の設立以来、塩ビ管リサイクルの可能性をひと筋に追及してきたのが大水産業(佐藤志郎社長/本社 埼玉県さいたま市)。本誌は、連載企画「リサイクルの現場から」第2回に取り上げて以来、随時その動向に注目してきました。今回の取材からも、課題を抱える中で、リサイクル塩ビ管の普及へチャレンジし続ける姿が見えてきます。

●広がる、特定調達品認定の動き

佐藤社長
佐藤社長

 大水産業は、塩化ビニル管・継手協会(以下、協会)が運営する塩ビ管・継手リサイクル事業の協力会社のひとつで、事業のスタート当初から、再生管の品質と信頼性の向上へ向け、業界唯一のJIS取得(2003年)、自治体のグリーン調達認定への取り組みなど、意欲的な活動を展開してきました。
 同社の最大の強みは、使用済み塩ビ管の回収から再生原料の加工、再生管製造まで一環した自社生産体制を構築していること(右のフロー参照)。本社・浦和工場と茨城県石岡市の八郷工場の2箇所を回収・製造拠点に開発された製品群(協会規格〈AS58〉のタイスイⓉVU、JIS認証品のタイスイRスーパーVUとRスーパーVPなど)は、関東一円から東海、東北地方まで広く普及しています。事業の近況について佐藤社長に伺いました。

■自治体の特定調達認定状況

► 愛知県「リサイクル建設資材評価制度」2002年8月
► 茨城県「リサイクル建設資材評価認定制度」2005年9月
► 新潟市「下水道建設課資材認定」2007年2月
► 秋田県「リサイクル製品認定制度」2012年8月
► 埼玉県「彩の国リサイクル製品認定制度」2012年10月
► 茨城県「リサイクル製品認定制度」2013年3月

彩の国リサイクル製品

► 新潟県弥彦村「建設企業課資材認定」2014年1月
► 神奈川県「県土整備局建設リサイクル資材」2016年4月

 「2015年度の実績では、協会のリサイクルシステム全体の受入量年間2万トン強のうち約16%を当社で受け入れ、業界トップの受入量となっている。販売面では、JIS規格の取得をテコに、自治体の特定調達品としての利用促進に力を入れており、これまでに愛知県の『リサイクル資材評価認定制度(あいくる)』をはじめ、秋田、茨城、新潟、埼玉、神奈川などでグリーン調達認定制度の認定を受けている(上の表)。また、埼玉県都市整備部設備課の機械設備工事特記仕様書にも当社の製品が記載されている。これは【特段の理由がない限り率先利用すべき資材】ということで、今後県内の自治体にも広がれば、大きな力になると期待している」

 
 
さいたま市の本社・浦和工場   プロセス
  微粉砕品 ペレット 各種製品
さいたま市の本社・浦和工場   微粉砕品 ペレット 各種製品

●社会の意識と仕組の変革が不可欠

宮城県の復興住宅に施工された大水の再生管
宮城県の復興住宅に施工された大水の再生管

 一方で、高品質を追求するが故の課題にも直面しています。その第一が原料調達の問題。
 「当社に入ってくる使用済み塩ビ管は、産廃業者経由が約6割、2割強が土木・設備工事業者からの直接回収だが、土木・工事業者のものは異物混入や汚れがひどいものでも、原料確保のためには受け入れざるを得ない。産廃業者との取引は安定して量が確保できるが、そのため時に無理な条件での取引になる。また、受入量が不足すると、中間処理業者から粉砕品を購入して補充することになるが、通常出回っている粉砕品は主に輸出向けで、異物混入のないものを買おうとすると当然値段も高くなる」
 価格の問題は、販売面に関しても大きな影響を与えています。「使用済み塩ビ管を再利用して『環境にやさしい活動をしている』とはいえ、それだけではユーザーは採用してくれない。特記仕様書への記載などで役所も応援してくれるようになっているが、最後の決め手はやっぱり価格。一旦失ったお客様は戻ってくれないので、当社としても赤字覚悟で出していくしかない」
 佐藤社長は「これからも品質を高め環境貢献を訴えていくことに変わりはない」としながら、リサイクルを安定的に進めるためには「社会の意識と仕組の変革が不可欠だ」と強調します。「リサイクル品なら使ってやろうという社会にしない限り問題は解決しない。これはうち一社だでけでは無理なので、塩ビ工業・環境協会や塩化ビニル管・継手協会とも連携して関係方面に働き掛けていきたい」

●東日本大震災の被災管をリサイクル

『タイスイニュース』創刊号
『タイスイニュース』創刊号。製品PRだけでなく、施工された地元の伝統文化を紹介するなど、読みやすい内容。

 こうした課題を抱えながらも、同社は災害復興支援などにも力を入れています。そのひとつが、東日本大震災で被災した塩ビ下水道管のリサイクル。同社では、2012年4月から宮城、岩手、2県の各被災地にトラックを走らせ被災管の回収作業をスタートし、2017年2月末までにおよそ1700トンを回収。うち宮城県から排出された分については、宮城ブランドのリサイクル塩ビ管(宮城パイプ「Mグリーン」と「Myスーパー」)を製造し、地元にある販社と協力して販売。両製品とも2012年11月に宮城県グリーン製品に認定され、県内の復旧工事をはじめ、2015年暮れに開通した地下鉄東西線(仙台市)や復興住宅の建設などに利用されています。
 さらに、昨年の熊本地震に関しても、被災地支援のために協会が創設した「塩化ビニル管・継手リサイクル処理補助制度」に参加し、今年から被災管のリサイクルに取り組む予定となっています。
 広報活動にも積極的で、2014年4月に発刊した広報誌『タイスイニュース』は(最新の2017年1月号まで7回発行)、同社の活動やリサイクルの大切さなどを訴えるツールとして、地元の自治体からも注目されているとのこと。課題も少なくない中、リサイクル塩ビ管の普及へ様々な挑戦を続ける同社に、本誌も引き続き注視していきたいと思います。