2017年3月 No.100
 

経済産業省 産業技術環境局リサイクル推進課長 高角 健志 氏に聞く循環経済の促進が世界のテーマに。産業界はビジネスチャンスに備えよ

 100号記念インタビューの2人目は、経済産業省の高角リサイクル推進課長の登場です。JPECのリサイクル活動がスタートして四半世紀、次の25年に備えるには何が求められるのか。循環型社会をめぐる世界の動向と日本の対応、そして産業界への期待などを伺いました。

―今後の持続型社会構築に向けて、世界ではどんなことが話し合われているのでしょうか。

 最近、資源循環政策に関する国際的な議論の中で、資源効率性とか循環経済といったことが盛んに言われるようになってきました。そういう議論は以前からあったのですが、ここ数年、特にヨーロッパで脚光を浴びてきていますし、一昨年のエルマウサミット(ドイツ)、さらに昨年の伊勢志摩サミットでも「資源効率性を向上していかなければならない」「ベストプラクティスを共有しながら資源効率性の向上を進めて行こう」ということがG7としての共通認識となっています。
 EUで言われる循環経済とは、ごく単純に言えば「原材料を使ってモノを作り、それを消費して使い捨てる」というこれまでのリニア(直線形)な経済から、「リサイクル、リユースという形で資源が循環する経済」に変えていこうということで、それ自体はわが国で言う3Rと同様の考え方です。ただ、それだけでなく、新たなビジネスモデルの構築とか域内製造業の競争力強化といったことが循環経済という中で議論されており(「Circular Economy Package」2015年12月)、やはり産業政策的な観点で問題が捉え直されてきているという印象を持っています。単なる環境保全にとどまらず、持続的な成長を達成していくための経済政策として、より少ない資源投入で、より高い経済成長を実現していくということが改めて注目されているわけです。

 

■ G7伊勢志摩サミット関係閣僚会合における資源効率関係の議論

● エネルギー大臣会合(福岡県北九州市、2016年5月1日〜2日)
  「我々は、エネルギー効率と資源効率の、強い相互関係性及び同時に改善することの重要性を強調する。」
● 環境大臣会合(富山県富山市、2016年5月15日〜16日)
  G7の取組についての進捗を確認すると共に、引き続き、資源効率性・3Rのために継続的に取り組むことで一致。また、UNEP国際資源パネル及びOECDからの報告を受け、環境のみならず、経済成長、技術革新、資源安全保障及び社会開発に多大な関連する便益をもたらすとの認識で一致すると共に、G7としての共通ビジョン、野心的な取組、フォローアップ等を含む「富山物質循環フレームワーク」を採択
● 首脳会合(三重県伊勢市、2016年5月26日〜27日)
  「資源の持続可能な管理及び効率的な利用の達成は、国連持続可能な開発のための2030アジェンダにおいて取り上げられており、また環境、気候及び惑星の保護のために不可欠である。」
  「イノベーション、競争力、経済成長及び雇用創出を促進することも目標として、資源効率性を改善するために企業及びその他のステークホルダーと共に取り組む。」

 

―その中で日本としてはどう対応していくお考えですか。また、産業界が注意すべきことは?

高角 健志 氏

 今ご説明したような国際的な議論の中から、どういう形で国際的ルールが構築されていくのかをしっかり見定めながら、その動きに応じて必要な対応をしていかなければならない、と考えています。
 行政はもちろんですけれど、モノづくりをしている製造業も、今後の海外展開を視野に入れていくのであれば、国際的なルールとの調和ということを常に念頭に置いて、機敏に対応していくことが求められてくると思います。
 そして、そうした変化をひとつのビジネスチャンスと捉えて、新しいビジネスモデルづくりに挑んでいくようなチャレンジングな企業がどんどん出てきてほしいと思います。
 こういう問題は、役所のほうからあれこれ口出しするのでなく、各企業がそれぞれの現場で取り組む中から新しい工夫が生まれてくればいいと思っています。

―資源効率性や循環経済を促進していく上で、リサイクルはどう位置づけられますか。

 リサイクルというのは、根本的には、もともと捨てられていたものから新しい価値を生み出すことであり、それによって新たな経済性を生み出すことだと思います。
 廃棄物として処理される場合は、処理料金を取って廃棄物を受けいれ、適正に処分して終わりということになりますが、リサイクルは、廃棄物から価値のある有用資源を低コストでいかに生み出せるかが肝心で、それによって、これまでは逆有償であったものが有償になるといった、新しい経済循環が生まれてくるのだと思います。
 日本のリサイクル産業は総体的に見て着実に成長伸びてきているといえますが、行政としても、引き続き、リサイクル促進のための技術開発などはお手伝いしていくつもりです。
 ここ数年は、日本で開発された省エネ型の資源循環システムや技術を国際的に展開していくための支援を行っていますし、平成29年度からは、いわゆる都市鉱山の有効利用を促進しようということで、小型家電や電子機器に使われている金属、レアメタルなどを効率的に取り出して精錬し、循環させていくための研究開発事業を新規にスタートする計画です(「高効率な資源循環システムを構築するためのリサイクル技術の研究開発事業」)。
 こういう技術も、いずれは国際展開して、日本の企業が海外に出て行って相手の国と協力して資源回収するとか、逆に電子基板などを海外から受け入れて日本で処理するといったことが進んでいけばいいなと考えています。

―塩ビ業界が取り組んできたリサイクル事業について、どのような感想をお持ちですか。

 塩ビにはいろいろな品目がありますが、塩ビ管・継手については、リサイクルシステム作りを含めたリサイクルの取り組みが続けられており、既に長い歴史を持っています。資源有効利用促進法(リサイクル法)で、塩ビ管・継手製造業が「特定再利用業種」に指定されているのも、そうした実績を踏まえたものといえるでしょう。
 塩ビ管のリサイクルシステムで注目すべきところは、法制度とか国の制度資金などの中で回っているのでなく、業界の自主的な取り組みとしてシステムを構築、運用していることで、産業界が主体となったリサイクル推進という点ではモデルになる取り組みだと認識しています。
 また、そういう取り組みが他の品目にも徐々に拡大しつつあるとのことですが、農業用ビニルハウスや床材、壁紙など、それぞれの特性に応じてリサイクル技術開発やリサイクルシステムの構築を進めていこうという姿勢は高く評価できると考えています。今後も、法律の枠に捉われない先進的な取り組みに挑戦していくことを期待します。我々も注目していきたいと思います。