2017年3月 No.100
 

プラスチックに「廃棄物」という概念はもうない。そんな気構えでリサイクルに取り組んでください。上智大学大学院 地球環境学研究科教授  織 朱 實

●メーカー横断的なリサイクルシステムづくりを

 『PVCニュース』が創刊100号を迎えるとのこと、お祝い申し上げます。私も毎号拝見していて、塩ビってこういう効用があったのかとか、いま地域ではこんなリサイクルの取り組みをしているのかとか、ずいぶん勉強させてもらいました。有識者の連載インタビューも、毎回素晴らしい方々が、リサイクルや循環型社会などの問題にいろいろな角度から切り込んでいて、しかも根底では真剣に塩ビのことを考える姿勢が共通していて、とても興味深く読ませてもらっています。
 私は、塩ビというのはそれ自体はいい素材なので、使い方をきちっとして、使い終わった後の処理を適正にしていけば有益なものだと考えています。ですから、塩ビ管のように単一素材で限られた用途に使われている製品のリサイクルが進んでいることは評価していますし、結露防止効果などで需要が伸びてきている樹脂サッシなどについても、できるだけ早く、メーカー横断的な取り組みとしてリサイクルシステムづくりを進めていくべきだと思います。
 それと、市民参加、市民との連携ということも考えてほしい。例えば、2020年の東京オリンピックでも、仮設テントなどの塩ビ製品がいろいろ使われることになると思いますが、大事なのは環境レガシーとして何を残すのかということ。テントをリサイクルするなら、その技術やシステムが閉会後も使われ続けることが本当の意味のレガシーです。そういうモデルケースを、業界だけでなく、NGOと協力しながら提示してほしいと思います。

●廃棄物卒業認定という考え方

 もちろん、適正処理は塩ビだけの問題ではありません。これからの循環型社会ということを考えれば、塩ビを含むプラスチック全体を捉えて、循環型社会の中におけるプラスチックのリサイクルとはどういう位置づけになるのかを考えていかなければならないと思います。
 私たちの身の回りに、塩ビを含めてこれだけのプラスチック素材が増えてきていて、原料として石油が使われている。限られた資源を使っているのですから、当然リサイクルしていかなければならないということになるわけですが、これだけ多種多様な使われ方をされると、複合素材の製品が増えてきてリサイクルが難しくなる。そんな中でプラスチックのリサイクルにはどんなやり方があるのか。
 今は各リサイクラーがイノベイショナリーな考え方を持って、自分たちの技術で成型メーカーのニーズに合ったプラスチックリサイクルのあり方を模索している状況ですが、いずれにしても最早、プラスチックは使い終わったら捨てられるという素材ではなくなったのです。一旦は廃棄されても、付加価値をつけて資源性が高くなったら廃棄物の世界から卒業させていく。言わば廃棄物卒業認定とでもいうべき考え方が世界の潮流で、日本のプラスチック業界も、廃棄物という概念はもうない、捨てるものは一つもないんだというぐらいの気構えで、リサイクルに取り組んでほしいと思います。