1994年3月 No.8
 

暮らしを支えて50年 −塩ビのヒット商品あれこれ

 

 

 
  塩ビ製品が私たちの生活の中に登場してからおよそ50年。この間、社会の基幹資材として定着した製品がある一方、生まれては消えていったヒット商品 も多種多様。半世紀に及ぶ開発史をざっとひもといてみれば −。
  1930年代から塩ビの本格生産が始まっていた欧米に比べて、当時の日本はまだ塩ビ工業の黎明期。レジンの国産化と応用研究は昭和12、3年頃からスタートしていたものの、飛躍的な進歩を遂げたのはやはり第二次大戦後のことでした。

   塩ビシートの国内生産が始まった昭和24年、塩ビ製品のトップを切って市場に出回ったのがベルトハンドバッグなどで、日本の塩ビ製品は言わば女性の装身具として産声を上げた恰好。しかし、一方で同年には早くも電線被覆の生産が開始されており、以後、昭和26年の塩ビ管、27年の農業用フィルムと、今なお暮らしの基盤を支え続ける「塩ビご三家」がこの時期に相次いで誕生しています。

  昭和27年には塩ビレザーの生産が本格化、ケミカルシューズ(ビニル靴)、自動車の内装、壁紙などに盛んに利用されていくことになります。29年のヘップバーンサンダルを懐かしく思い出される人も多いはず。また、30年からは書類ケースを皮切りに、筆箱、書道バッグなどの文具製品も続々登場。35年頃から出回り始めた塩ビ消しゴムは、ワープロ時代の現代でも欠くことのできない事務用品となっています。40年代に入ると卵パック(40年)、化粧品や醤油のボトル(40年代後半)などの生産も本格化しました。

  特殊な用途では医療器材としての塩ビにもぜひご注目を。昭和30年頃から血液バッグの製造使用が始まっており、その後輸液セットカテーテル、人工心肺の血液回路などとして塩ビは人々の健康を守る上で重要な役割を果たしています。

  玩具や趣味の分野でも、塩ビはいろいろに利用されました。35年のダッコちゃんブームは今や昭和の語り種。30年に発売されたLPレコードは、高音質で軽くて壊れにくいすぐれもの。ずいぶんお世話になりました。ちなみに、“音の雑誌”フォノシート(33年)も塩ビ製品。とまあ、ずいぶん多彩な製品が生み出されてきたものですが、省資源型ショッピングバッグなど新たな用途でも注目を集める昨今、人と塩ビのつきあいはまだまだ長く続きそうです。