塩ビ製品の回収の方法としては、消費者や食品業者からはボトル類、病院からは医療用の容器類、電子機器メーカーからは各種トレー等を回収するといったように、製品別の回収システムの構築化が自治体ごとに実施、検討されており、一部では、回収効果を上げるために1kg当たり10〜20セントの報奨金を支払っているところもあるようです。
法制化の面では、例えばカリフォルニア州のように、1.全プラスチックの25%をリサイクルするか、2.製品の25%にリサイクル品を使うか、3.同じ包装材料で10%軽量化するか、のいずれかをメーカーに要求する自治体もあり、オレゴン州でもほぼ同様の法律が制定されています。また、フロリダ州では昨年秋から廃棄物の処理費用負担がメーカーに義務づけられ、50%以上リサイクルできない材料からなる容器の場合、1ケ当たり1セントを州に支払うようになりました(来年には2セントに値上げされる予定)。
● 業界のリサイクル活動もスタート、自治体と共同で塩ビボトル回収
一方、塩ビのリサイクルへ向けた試みは業界の側でもスタートしています。リサイクルに関心のある企業への技術開発融資を始めた米国塩化ビニル協会(VI)や、ノースキャロライナ州で試験的に回収のプロジェクトを組み問題点の検討に着手した米国プラスチック協議会(APC)などのほか、企業と自治体が連携した取り組みも目立ってきました。例えば、サンジエゴ市では自治体と企業が共同で家庭から出る使用済み塩ビボトルを回収してパイプに再利用する取り組みが進められていますし、塩ビ被覆電線の回収を始めた企業・自治体も見られます。
● 開発進むプラスチックの自動分別技術、X線や赤外線を利用
ところで、塩ビのリサイクルを進める上では、回収した後の製品をプラスチックの種類別に正確かつ効率的に分別することが大きなポイントになりますが、本誌No.4(平成5年3月号)でもご紹介したように、米国ではこの面でもいくつか注目すべき技術が開発されています。特に塩ビボトルに関しては、X線判定装置や近赤外線、紫外線などを照射して自動的に分別する方法、ボトルを粉砕して溶融温度の差を利用して溶融分別する方法など、さまざまな技術が開発・検討されています。
塩ビボトルの場合、再生品の用途としては非食品用のボトルなどに再利用されることが多いようですが、こうしたマテリアル・リサイクルばかりではなく、日本で本命視されているサーマル・リサイクル(焼却や熱分解により熱エネルギーを回収して発電等に利用する方法)に取り組むところが出てきていることも注目されるところです。焼却時に発生する塩化水素についてもアルカリを用いて中和するなどの方法が検討されています。
以上、着実な進展を見せる「米国の塩ビリサイクル事情」をご紹介してきましたが、米国の場合、塩ビボトルが大量に使用されているため分別回収しやすいなど好条件が重なっていることもあって、日本の状況と単純に比較することはできません。しかし、ゴミの減量とプラスチックの再資源化を進めていく上では、日本もこうした海外の事例を大いに参考にする必要がありそうです。