1994年3月 No.8
 
電線被覆材の油化システム、開発進行中

電線総合技術センターが取組むプラスチック・ゴム系材料のケミカルリサイクル

 

  (社)電線総合技術センター(静岡県浜松市;川上哲郎会長)は、電線・ケーブルの環境問題に関する研究開発などを目的に、大手メーカー71社で構成する業界共同の研究機関。同センターでは今電線被覆のリサイクル・再資源化をめざして技術開発の取り組みが着々と進められています。

■ 70数%の高率で油を回収、実用化の可能性も十分

 
  電線被覆は塩ビにとっても主要な用途のひとつ。塩ビ電線の場合、既に独自のルートでリサイクルが進められており、リサイクル率も約16%にまで達していますが、電線総合技術センターの研究で注目されるのは、マテリアル(物)リサイクル中心の塩ビと違って、あくまで熱分解〜油化(オイル化)というケミカルリサイクルの実現をめざしていること。
  研究のテーマは、1.電線用架橋ポリエチレンの油化システムの開発、2.電線用ゴム系材料の油化システムの開発の2つで、このうち1.については、パイロットスケールを用いて、独自の研究施設を有する同センターならではの実証試験が進められています。現在までのところ、電線を450℃で熱分解・ガス化した後、触媒層を通して油化することにより、70数%の高率でオイルを回収できることが判明しており、細かいコスト計算など今後の課題は残されているものの、技術的には十分実用化の可能性が見込まれるところまでこぎつけてきました。
 

■ 塩ビの油化にも応用可能 −ゴム系材料の油化システム

 
  一方、塩ビ業界としてそれ以上に注目したいのがゴム系材料の油化実験。ゴムには塩素系の物質が含まれるため、その油化技術は当協議会のエネルギー・資源回収ワーキンググループが取り組んでいる塩ビ廃棄物の油化の研究に直接関係する部分が大きいからです。これまでの実験では油化率52%(目標は60%)となっており、塩化水素対策としてガス処理技術もしっかりやっているので、システムを塩ビの油化に応用することも可能ということです。今後の研究の成果が期待されます。
  電線総合技術センターの研究は、以上のようにポリエチレンとゴム系の電線被覆を対象にスタートしたものですが、最近では同センターもリサイクルしやすい塩ビの良さに注目しはじめているとのこと。現在、今後は塩ビのリサイクルについてもお互いの技術交流を深めていくことが話し合われています。