塩ビを含む廃プラも医療ゴミもみんなまとめて安全焼却
呉羽環境(株)の産廃処理事業
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都市ゴミ中の塩ビ廃棄物はほぼ1% でも、産業廃棄物となるとその量はさらに大きくなります。そんな廃棄物を安全に焼却して、同時に熱エネルギーのリサイクルにも取り組んでいる企業が今、産業界の注目を集めています。 |
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■ 産廃業界のトップ企業、廃プラ・重金属も安全・確実に処理
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今回レポートする「リサイクルの現場」は、福島県いわき市に本社を置く呉羽環境株式会社(荒川信郎社長)。昭和46年に設立された「呉羽梱包」を前身とする呉羽化学工業(株)の子会社で、産業廃棄物の処理業に進出したのは52年から。以後、収集運搬〜中間処理〜埋立までの一貫したトータル処理により関係者から高い評価を得ている業界のトップ企業です(現社名は昭和59年から)。
同社の最大の特徴は、一般の産業廃棄物だけでなく、医療機関から出る感染性廃棄物などの「特別管理産業廃棄物」をも一括して焼却処理している点にあります。特に感染性廃棄物の場合、塩ビをはじめとする廃プラスチック類や重金属類も多量に含まれることから、排ガス・排水対策が何よりも重要なポイントとなりますが、同社は後述する最新型焼却炉の導入によりそうした環境上の課題をクリア、消費社会の中で多様化し続ける産業廃棄物を安全・確実に処理してくれる日本でも数少ない施設となっています。 |
■ 塩ビ50%でも処理可能、プラスチックの無公害焼却に福音
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「感染性廃棄物の中に含まれるプラスチックの量は、おそらく30%前後と推定される。水銀化合物などの重金属類も相当量含まれるが、当社では、こうした廃棄物の性状に的確に対応した無公害システムの導入により、感染性廃棄物も他の産業廃棄物も混合して焼却処理できる技術を完成した。現在、ここで処理している感染性廃棄物の量は年間約4400トン。これだけの量を万全な排ガス・排水処理を行って焼却できるのは、日本でも当社以外にはない。また、廃棄物の性状を物理的、化学的に正確に分析できる環境計量証明事業所として登録しているのも、業界では当社ぐらいのもの」と胸を張るのは呉羽環境の荒川社長。
もちろん、プラスチック類のゴミは医療系以外の一般廃棄物の中にも含まれますが、荒川社長によれば「塩ビなど塩素系のプラスチックの場合、排ガスを中和するコスト分だけ処理費用は高くなるが、技術的には50%程度まで混入していても十分に処理可能」とのことで、塩ビの焼却という点だけを取っても、同社の焼却技術は産業界にとって大きな福音になったと言うことができます。 |
■ 技術の粋「8号炉」、徹底した排ガス・排水処理で環境対応
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産業廃棄物の処理は、昭和63年の法改正により特別管理産業廃棄物と一般の産業廃棄物に分けて厳しい条件が課せられるようになりました。こうした廃棄物行政の変化に伴い、呉羽環境では「産業廃棄物処理の再構築プロジェクト」を組んで処理体制の見直しに着手、1.適正処理、2.住民環境対策、3減量化、4.コスト低減、5.処理作業・作業環境の改善の5項目をテーマに検討を進めた結果、平成5年10月には、これまで蓄積した技術とノウハウの粋とも言える8号炉の建設が終了し、環境対応を踏まえた同社の処理技術は飛躍的に高まることとなりました。
8号炉はそれまで使っていた中小の炉を統合する形で建設されたもので、企画・設計は隣接地に社屋を構える同系列の呉羽エンジニアリング(株)が担当。年間約5万トンの処理能力は、産業廃棄物処理設備としては国内最大級の規模を誇ります。焼却フローは下図のとおりですが、回転式と固定式を組み合わせた2次にわたる焼却工程、2つのスクラバーとミストコットレルによる徹底した排ガス洗浄などに、環境対応型システムとしての大きな特徴を見ることができます。
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■ 熱エネルギーも有効利用、サーマルリサイクルのモデルケース
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呉羽環境では、もうひとつの7号炉も現在稼働中ですが、こちらは処理能力も年間約1万トンと5分の1の小型サイズ。システムは電気集塵機を備えていないことを除けば8号炉とほぼ同様ですが、8号炉が有害物を含む廃油や感染性廃棄物、廃プラスチックなどの処理を行うのに対して、7号炉は主に一般廃棄物の廃油、汚泥などを処理する目的で開発されたシステムです。
呉羽環境の焼却システムでは、現在、排出される熱エネルギーの一部をスチームとして回収するサーマルリサイクルが行われており、この点も関係者の注目を集める要素となっています。現在稼働している廃熱回収設備は7号炉の設備で、親会社の呉羽化学にスチームとして売却する形で再利用が進められています。8号炉については「現在はスチームの需要が少ないので見合わせているが、需要の目処がたてばぜひ再開したい」(荒川社長)方針。プラスチックが混入した廃棄物を安全に焼却しながら、熱エネルギーを有効利用する −これは、当協議会が開発をめざす塩ビ焼却技術にとっても貴重なモデルケースと言えます。 |
■ 運転はパネル操作で集中管理、安全への配慮に住民の理解
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8号炉を間近で目にすると、その予想外の巨きさに驚かされます。特に1次焼却を行うロータリーキルンは、内径4メートル、長さ10メートル、「陸上輸送できる最大の大きさ」というだけあって、巨大な円筒が横たわって回転している様は迫力満点の眺め。システムの運転は運転管理監視室にあるグラフィックパネル操作によって集中的に管理されており、モニター画面には炉内の燃焼状態が映し出されて常時係員の監視下に置かれています。炉内の状況に応じて感染性廃棄物や汚泥が自動的に追加投入され温度を調節する仕組みで、運転の安全性に細心の注意を払っていることが分かります。
「この仕事で何よりも大切なのは地域住民の理解。以前は『臭いが強い』という苦情も時々聞かれたが、対話を繰り返すなど努力を重ねた結果、8号炉の計画にも即座に同意してもらった。完成後苦情は全く出ていない」と荒川社長。その言葉どおり、巨大な焼却施設は田園地帯と静かな調和を保っている様子でした。 |
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