1994年3月 No.8
 

 卵パックのリサイクル、完成へまた一歩

  −茨城県・清田商店との協力で微粉砕機が本格稼働−

 

 

  前号では、塩ビ卵パックリサイクルワーキンググループ(以下、WG)が取り組む回収試験の近況をご紹介しましたが、今回は回収後の粉砕工程に目を向けてみました。ネックとなっていた異物の除去作業が微粉砕技術の開発で克服され、処理拠点の整備も、民間のリサイクル業者との協力で着々と進展 −。卵パックのリサイクルはモデルシステムの完成へ向けまた一歩飛躍しようとしています。

 

微粉砕機の開発で塩ビ卵パックリサイクルの「ネック」を解決

  塩ビ卵パックの回収試験は、現在、岡山市民生協(岡山市)、サニースーパーチェーン(長野市)、東金GPセンター(千葉県東金市)の3か所を中心に進められています。回収された卵パックは、粉砕処理を経てリサイクル製品に生まれ変わることになりますが、これまでは粉砕工場に搬入する前の段階で回収品に付着した糸くずやバーコードなどの異物を除去しなければならず、この繁雑な手作業が卵パックのリサイクルを進める上で大きなネックとなってきました。
  当協議会の会員会社である信越ポリマー株式会社では、こうした問題の解決をめざして技術研究に取り組んできた結果、異物を除去せずにそのまま微小な粒子に粉砕できる微粉砕機の開発に成功。昨年7月からは茨城県笠間市にある有限会社清田商店(高丸須恵社長)の協力を得て、同社の手により本格的な実用化設備も動き始めており、関東地区における塩ビ卵パックリサイクルの処理拠点として関係者の大きな期待と注目を集めています。

 

微粉砕技術の実用化に生かされる「塩ビリサイクル一筋」のノウハウ

  清田商店は、昭和30年代から塩ビ製品のスクラップを専門に扱ってきたリサイクル業者です。同社の岡嶋晋二取締役によれば、「焼却の問題を除けば、塩ビはリサイクルコストも安く最もリサイクルしやすいプラスチックだと言える。卵パックの場合、異物の除去が厄介な問題だが、微粉砕機を使えばその作業が無用となる上、ポリスチレンなど他の樹脂が混入していても粉砕して充填剤の代わりに取り込んでしまうことができる。また、微粉砕することで可塑剤を混合しやすくなるため、卵パックに使われている硬質塩ビのリサイクル用途が大きく広がるというメリットがある」との判断から今回の協力を決断したといいます。微粉砕技術の実用化には、塩ビのリサイクル一筋に取り組んできた同社のノウハウが大いに生かされているのです。
  清田商店の処理工場は、笠間市の市街から車でおよそ10分、6000坪の山地を切り開いて作られた広大な敷地の中にあり、その一角に卵パックWGの微粉砕機が設置されています。ちなみに、こうした広い敷地は、清田商店のようなリサイクル業者にとっては必須の条件であり、「不況の影響でバージンレジンの価格が下落しており、スクラップの動きが非常に悪い」(岡嶋取締役)という状況下では、在庫をストックできる十分な用地と資金力がますます不可欠となっています。
 

 

塩ビボトル粉砕処理の可能性も、関西地区でも処理拠点づくりへ

  清田商店の工場で処理される卵パックは、主にサニースーパーチェーンと東金GPセンターから搬入されたもので、その量は1カ月でほぼ150kg。これらの卵パックは、微粉砕機でグラニュー糖ほどの大きさに粉砕された後、成型加工メーカーのもとに送られて、マットや床材、あるいは同社が開発した通水性舗道材などの再生塩ビ製品の原料として利用されています。
  また、微粉砕機は既に同社の通常業務の戦力に組み込まれており、卵パック以外にもさまざまな塩ビ製品の処理が行われています。機械の処理能力は、最も負荷の小さいもので1時間当たり約500kgですが、通常は250kg程度の稼働状況となっており、将来的には当協議会の塩ビボトルリサイクルWGとの連携で、回収された使用済み塩ビボトルの粉砕処理を行う可能性も出てきました(近々、そのテスト粉砕が実施される予定です)。
  塩ビ卵パックリサイクルWGでは、今年の夏までに、関西地区の拠点として三菱樹脂(株)の子会社である(株)菱栄(滋賀県栗東)にも同型の微粉砕機を設置する予定で、東西両地区の処理拠点が整備されれば、塩ビ卵パックのリサイクルはモデルシステムの完成に向けて、さらに大きく飛躍することになります。