1993年12月 No.7
 

 第2回「塩ビ三極会議」レポート

      日米欧の関係者が塩ビ廃棄物・リサイクル問題で3日間の集中討議

 

  去る10月25日〜27日にかけて、ベルギーの首都ブリュッセル郊外で第2回「塩ビ3極会議」が開催され、塩ビの廃棄物処理やリサイクル問題などをテーマに、連日熱心な議論が交わされました。日米欧の塩ビ業界関係者が一堂に会した3日間の模様をレポートします。

 

● 東欧からも9名が初参加、着実に進む「国境越えた協力体制づくり」

  「塩ビ3極会議」は、日本側の呼びかけに欧米の関係団体が賛同する形で昨年からスタートしたもの。今回の会議には、日本の塩化ビニル工業協会から児玉俊一郎会長(塩化ビニルリサイクル推進協議会会長、呉羽化学工業社長)以下13名、アメリカの塩化ビニル協会(VI)から9名、欧州塩化ビニル製造者協会(ECVM)から27名など計55名が参加しましたが、この中には、初参加として東欧の塩ビ関係者9名も含まれており、「国境を越えた塩ビ業 界の協力体制づくり」が着実に進みつつあることを印象づけました。

 

 

 

 

●  評価集めた日本のリサイクル活動、「マテリアル」「サーマル」の両面指向で

  会議は25日午後から予備会議と事務局会議、26、27日が本会議というスケジュールで進められ、26日の本会議冒頭には、主催者であるECVMのプレスカ会長、塩化ビニル工業協会の児玉会長、VIのペイシェント会長がそれぞれ各極代表としての挨拶を行って議事に入りました(次頁に児玉会長の挨拶要旨)。
  会議では、まず塩ビ廃棄物の処理やリサイクルの考え方について各国から発表があり、日本からは塩化ビニル工業協会の外山裕茂海外部会長(鐘淵化学工業常務取締役)が、プラスチックリサイクルの現状と塩化ビニルリサイクル推進協議会の活動状況および今年5月に通産省が発表した「廃棄プラスチック21世紀ビジョン」の内容などを説明。また、午後から行われた具体事例の報告では、塩化ビニルリサイクル推進協議会の鈴木正保委員(呉羽化学工業)が、高回収率を誇る農ビのリサイクルや、塩ビを含むプラスチック廃棄物油化の実証プラントの取り組み、そして熱・資源回収の研究開発状況などについて報告を行いましたが、マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルの双方を指向して着々と実行に移している日本のやり方に、各国から高い評価が寄せられました。


 

● ドイツのエコバランス研究結果にも注目 −来年の会議は日本開催

  翌27日の会議では、広報や情報交換などの問題について各国の発表があったほか、会議の締めくくりとして3極代表によるパネルディスカッションが行われました。このうち、情報交換の問題ではドイツからエコバランスの研究結果について報告があり、原料からレジンまでのエネルギー消費と環境負荷を各種プラスチックについて計算した結果、塩ビが最も省エネルギーであるとの結論が示されて参加者の注目を集めました。一方、パネルディスカッションでは、各極が発表した主張点に基づいて討議が行われましたが、児玉会長は、1.安全な焼却によるエネルギー回収、2.マテリアルリサイクルの推進、3.効率的な相互のコミュニケーションの3点をポイントに日本側の主張を展開しました。
  この後、次回開催地を日本とすることなどを決定して、3日間に及んだ第2回「塩ビ3極会議」は、成功の内に幕を降ろしました。
 
 
 第2回「塩ビ3極会議」における児玉会長の挨拶と、確認事項は次のとおり。

● 児玉会長の挨拶(要旨)

  増加し続ける廃棄物を如何に適切に処理するかは大きな課題だが、塩ビ廃棄物の適切な処理方法としてはマテリアルリサイクルと、安全かつ無公害な焼却 方法による資源・エネルギー回収の双方を指向することが重要だ。定期的な情 報交換は極めて有意義であり、今後ともこの会議が末長く続くことを期待する。

 

● 第2回「塩ビ3極会議」における確認事項(要約)

 (1)製品の環境影響はそのライフサイクルを通じて総合的に評価する必要があるが、化石エネルギーの中でも塩ビは省エネルギー樹脂であり、リサイクル技術とシステムの整備により更に効率的な環境負荷の低減が可能である。
 
 (2)リサイクルの推進に当たっては、技術的、経済的にリサイクル可能なものとそうでないものとを区別して計画的に実行することが重要である。
 
 (3)マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルがコストや用途の面で問題を抱えている現状では、無公害な方法で焼却しエネルギーを回収するサーマルリサイクルも、同様に有力な方法となる。
 
 (4)廃棄物処理問題の解決には産業界、行政、市民が互いに協力する社会システムが不可欠であり、リサイクルコストもその役割に応じて負担することが重要である。
 
 (5)塩ビ製品が社会の利益に貢献していることを広く世間に知ってもらうための努力を継続するとともに、塩ビ工業に携わる世界中の人々とコミュニケーションを図り、技術と情報を共有して環境問題に対処していく。