1993年12月 No.7
 

 塩ビ卵パック回収モデル事業の1年

  岡山市民生協東川原店と連携、ボランティアグループの支援で取り組み順調

 

  岡山市民生協東川原店のご協力により、塩ビ卵パックの回収テストがスタ ートしてから1年余(本紙No.3;平成4年12月号参照)。塩ビ業界初の試みに関係者の注目が集まる中、取り組みは今新たな広がりを見せようとしています。事業の要であるボランティアの方々の声も交えながら、ここでは取り組みの近況についてご報告します。

 

意識向上で急増する回収量、圧縮減容機「パックマン」も新登場

  岡山市民生協東川原店(岡山市東川原、榊誠司店長)が、当協議会の塩ビ卵パックリサイクルワ−キンググル−プ(以下、WG)の呼びかけに応じて、初の卵パック回収テストに着手したのは昨年10月のこと。その後、ボランティアの方々の献身的な活動に支えられて取り組みは順調な進展を見せており、この9月からは回収作業の効率化を目的に開発された圧縮減容機「パックマン」も登場して、関係者の期待を集めています。
  去る10月28日の午後、ボランティアの方々へのお礼とパックマンの稼働状況の視察を兼ね、WGのメンバーが東川原店を訪問、今後の取り組みの進め方や問題点について関係者と意見交換を行いました。

 

卵パックリサイクルWG −回収協力店を倍増、回収量も月300?に拡大

  回収事業、店頭設置型減容機の開発、微粉砕設備の設置が今年度の3本柱です。
  1.岡山生協東川原店と長野市のサニースーパーチェーンの協力で実施している卵パック回収実験の輪を、両地域を核として更に拡大する(回収店舗は現在の15店から30店に、回収量は月100sから300sに)。
  2.回収作業上最大のネックである回収品の詰替え梱包作業を簡略化するため、店頭設置型の減容機の開発を進めるほか、運賃のコスト低減も検討する。
  3.回収品に混入した異物(ホチキスの針等)の選別行程を省くため、回収品を丸ごと微粉砕できる設備を設置しコマーシャルベースでの検討を進める。
 

 

10人のボランティアグループ、その名も「リカバリー」

  東川原店の卵パック回収事業に携わるボランティアグループのメンバーは現在10名。殆どが家庭の主婦で、グループにはアメリカの宇宙船から取った「リカバリー」という名前も付けられており、メンバーの一体感を高めるのに役立っているようです。グループの代表を務める鈴木和子さんによれば、1年間の普及活動の結果、組合員や一般消費者の意識は着実に高まりつつあるとのこと。これに伴って、回収量も目に見えて増えてきており、「月1回だった回収品の梱包作業をこの夏からは週1回に増やさなければならなかったほど」だといいます。
  回収作業は、1.店頭の回収ボックスに集められた卵パックを生協の担当職員が1日分ずつポリ袋に詰めて敷地内の保管倉庫に搬入、2.ボランティアの人たちが週に一度、都合のよい日に集まってホッチキスの針や糸屑、バ−コ−ドラベルなどを除去、3.その場で段ボ−ルに詰めて滋賀県の三菱樹脂長浜工場に発送、という流れになっており、この後は工場の粉砕機でフレーク化して再生メーカーへ回すという仕組みです。
  ちなみに、ボランティアグループの活動は3班に分けて行われており、1週ごとに各班が交代で作業を担当するというローテーションが取られていますが、月に1度だけは皆で集まって親睦を深める機会に利用しているとのことでした。

 

梱包作業を効率化する「パックマン」、技術開発で異物除去工程も省略

  一方、「段ボール詰めの作業が大変」という声を受けてWGが企画開発したのが注目の圧縮減容機「パックマン」です。卵パック10枚を約1cmの厚さに圧縮して梱包作業の効率を高めようという新兵器で、既に9月から保管倉庫前に設置されて、リカバリーのメンバーによりランニングテストが行われてきました。今回の訪問では、このパックマンの使い勝手などについて意見を聞くことも、大きな目的となっていましたが、メンバーからは「もう少し早く作動するようにしてほしい」「減容化はいいが、段ボールが重くなって女性の力では扱えない」「段ボールの大きさを統一すべきだ」「中腰の姿勢が続くので作業がきつい」など、機械の改良を進める上で様々な示唆に富んだ参考意見を聞くことができました。
  また、回収の中で最も繁雑な作業であるホッチキス針やバーコード等の異物除去工程については、異物が混入しても作業に支障をきたさない微粉砕機の開発が現在WGで進められており、これがほぼ完成の見込みとなったことから、工程そのものを省略できる態勢が整いつつあります。今回の話し合いでは、WGの側からそうした点についての情報も提供されましたが、これれを聞いたリカバリーのメンバーは、「そうなれば作業がはるかに楽になる」と、いずれも今後の技術開発に大きく期待をふくらませている様子でした。

 

地元のテレビ局も回収テストに注目 −活動は生協全店舗に拡大の動き

  ボランティア活動に支えられた東川原店の卵パック回収事業は、地元山陽放送のニュース番組でも取り上げられるなど、地域の中で徐々に大きな話題となっているようです。こうした反響を受けて、岡山市民生協では既に東川原店以外の直営店(5店舗)にも取り組みを拡大する方針を固めており、榊店長も「この仕事はボランティアの方々の協力なしではやっていけない。東川原店はボランティア組織との連携が非常にうまくいっており、今後のモデルケースとして十分に参考になると思う」と、取り組み拡大への自信をのぞかせています。
  また、新たに卵パック回収を始めようとする人々へのアドバイスとして、鈴木さんは、1.しっかりした組織作りをすること、2.ボランティアという意識だけでなく、お互いの懇親を深める楽しみの場として活用すること、3.店の人とボランティアの気持ちが一体化していることの3点を指摘してくれましたが、確かに、それぞれの子供たちも交えて談笑しながら作業に励んでいる様子は、一生懸命の中にもどこかしらのどかな懇親の雰囲気を感じさせる風景だったと言えます。
  なお、塩ビ卵パックの回収テストは、現在、岡山市民生協のほか長野県のサニースーパーチェーンでも展開されており、また、新たに他県の生協関係者とも提携の話し合いが進められています。これらの取り組みについては、後日、機会を改めてご報告することとします。