1993年6月 No.5
 

 レポート「PVC93 − The Future」

  3年に1度の国際会議、世界の塩ビ業界関係者がリサイクルの現状などを報告

  去る4月27日〜29日の3日間、英国南端の都市ブライトンにおいて、塩ビ業界の国際会議「PVC93 −The Future」が開催されました。この会議は世界各国の塩ビ関係者(原料・加工メーカー)が一堂に会し、塩ビのリサイクル問題や環境問題などについて話し合ったもので、日本からは当協議会の会員団体である硬質塩化ビニール板協会の木下清隆シート環境委員長(信越ポリマー株式会社)が参加、我が国の廃棄物処理の現状や協議会の活動状況などを報告しました。今回の「海外事例紹介」は、3日間にわたる会議の中から、初日に開かれた全体会の模様を中心にレポートします。

 

 

● 各国から530名が参加、「塩ビと環境」テーマに全体会議も

  「The Future」は、英国のプラスチック業界が組織する団体「インティステュート・オブ・マテリアル」(The Institute Of Materials)のPVCグループが3年に1度開催しているもので、6回目となる今年は、地元英国を中心に欧米およびアジアなどの各国からおよそ530名が参加して、ブライトン市のメトロポールホテルを会場に熱のこもった討議を繰り広げました。
  会議は、初日の27日が「塩ビと環境問題(リサイクル)」をテーマとする全体会、28日〜29日が分科会(テーマは28日が塩ビの加工技術、29日が添加物)という日程で進められましたが、各国の塩ビリサイクルの現状などが報告された全体会には、特に参加者の注目が集まりました。


 

 

 

 

●  日本のごみ処理システム、参加者に強い印象(木下委員長講演)

  全体会では、木下委員長が「PVCー日本における廃棄物処理とリサイクル」と題して講演を行ったほか、英国およびドイツの代表が自国における塩ビリサイクルの現状を報告、また、環境団体グリーンピース英国支部の関係者も参加してPVC問題の総括を行いました。木下委員長の講演は、塩ビの生産と需要動向、ごみ処理行政、焼却をはじめとするリサイクル技術、塩化ビニルリサイクル推進協議会の活動内容など、塩ビをめぐる我が国の現状を様々な角度から説明したもので、特に、焼却を中心として高度に整備された日本のごみ処理システムは各国の参加者に強い印象を与えた様子でした。

 

●  企業の回収コスト負担の問題を浮き彫りにした英・独報告

  一方、英独両国の報告は、リサイクルコスト、とりわけ回収コストの負担をどう克服するかという問題を改めて浮き彫りにするものとなりました。両国では現在、企業が中心になってプラスチック都市ごみの回収を行っていますが、英国からは「都市ごみはあくまでも廃棄物であって、そのリサイクルには行政が一定のコスト負担をすべきだ」という意見も出され、状況の厳しさをのぞかせました。また、ドイツではDSD(デュアル・システム・ドイツ)と呼ばれる組織(包装関連業界が設立したパッケージ類の回収組織)が都市ごみとして出されるプラスチックパッケージの回収を行っており、その経費はDSD参加企業の拠出金により賄われていますが、これも次第に大きな負担になりつつあるとのことでした。

● 「焼却」が不可避のテーマに −転換期迎える欧州のリサイクル事情

  また、取り組みが進むにつれてリサイクル全体に要するコストや再生品の用途開発なども大きな問題になってきているといいます。
  「ヨーロッパにおけるリサイクル技術の検討は、各企業ベースで積極的に進められているが、リサイクルが本格化したときにそのコストと回収スクラップの用途をどうするのかという問題が浮上してきている。これは、日本では既にプラスチック処理促進協会が15、6年前に結論を出した問題であり、この点で日本の対応はヨーロッパより遥かに進んでいると言える。これ以降、日本ではごみ焼却が積極的に進められることになったわけだが、焼却には消極的だったヨーロッパでも、今後、この問題は避けて通れないテーマとなるだろう。本音として焼却の必要性を認める意見も幾つか聞くことができた」(木下委員長)。
  ヨーロッパのプラスチックリサイクルは大きな転換期を迎えているようです。