1993年6月 No.5
 
進む廃プラスチック油化の試み、
中小企業事業団が実験プラントを一般公開

 

 前号でご紹介したとおり、工業技術院の北海道工業開発試験所による廃プラスチック再資源化の研究が、プラスチックごみの油化に道を開く試みとして各方面の注目を集めています。現在、中小企業事業団によりこの研究成果の実証実験が進められていますが、同事業団は3月10日から自治体関係者やマスコミ関係者を対象に、実験に用いられているパイロット・プラントの一般公開を実施。塩化ビニルリサイクル推進協議会も3月12日、現地(埼玉県桶川市)に出向いて実験の現状を視察してきました。

  はじめに実験のシステムを簡単に説明すると、まず集められたごみの中からゴムや金属などを手作業で除去した後、洗浄・粉砕をて、油化に適さないプラスチック類(PETやPVCなど)を比重分離します。次に、これを乾燥した後、前処理で除去しきれなかった3〜5%のPVCを含むプラスチックを熱分解し、塩化水素を除去して油を生成するという流れになっています。


  プラントの処理能力は1時間あたり50キログラム(年間400トン)で、1キログラムのプラスチックから約1リットルの油が生成されます。生成された油はガソリン、灯油などの留分からなる高品質のもので、事業団関係者によれば、現在は油化装置を動かすためのエネルギーとして自家消費のみに利用されていますが、将来は商業ベースでの用途開発が課題になるだろうとのことでした。


  プラスチックの油化技術は、兵庫県相生市にあるフジリサイクルの商業規模のプラントにも用いられていますが、ここではまだ塩ビ混入廃プラの油化は行われていません。従って、塩ビの混入したプラスチックごみを用いてより実際の処理作業に近い実験が進められているという点に、桶川市のプラントの大きな特徴があると言えるでしょう。また、このプラントは塩ビの混入率が15%程度でも処理できるよう設計されていますが、塩化水素の中和の問題などがあるため現在は前処理段階で混入率を落とす作業が行われています。当協議会が、こうした作業なしでも安全に低コストで処理できるよう、効率的な塩化水素回収法などの焼却技術開発に取り組んでいることは<トップ・ニュース>でお伝えしたとおりです。