1993年6月 No.5
 

 エネルギー・資源回収ワーキンググループの最終報告 

  安全、低コストで有用資源の回収へ

    塩ビごみ無公害焼却モデルプラントの可能性を裏付ける重要なデータ

    当協議会のエネルギー・資源回収ワーキンググループが社団法人・化学工学会に委託して進めてきた、「無公害焼却モデルプラントの研究」に関する最終報告書がまとまりました。報告は先に提出された中間報告の内容(本紙1992年12月号<No.3>参照)を最終的に確認したもので、モデル処理システムの妥当性の評価やそのコスト計算など、塩ビ混入廃プラの無公害焼却システム完成をめざす上で重要なデータが盛り込まれています。  

 

1年間のテスト結果を総括 −コスト計算や妥当性の評価など

  無公害焼却モデルプラントの研究は、塩ビ製品を含むプラスチック廃棄物を焼却する際に出る有用な資源やエネルギーを、安全な方法により回収して、発電や蒸気などに利用しようとするものです。研究では、可能性の高い多様な処理システムの中から「最も効率的でコスト的にも実現性のあるシステム」を探り出すためのシミュレーションテストが1年間にわたって繰り返されてきました。
  今回の調査報告書(タイトル=「塩化ビニル樹脂系廃プラスチック処理システムのためのモデル計算法の確立」)は、シミュレーションテストの対象となったそれぞれの処理システムについて試行計算の結果と妥当性などを総括したもので、
 「焼却技術の調査」、「焼却システムのモデル計算」など全7章から構成されていますが、ここではその核心部分を簡単に整理してみました。まず、テストの対象となった処理システムの概要を以下に示します。

 

主要な2つのプログラム −<焼却タイプ>と<ガス化タイプ>

  図の中で、1.の<焼却タイプ>は廃棄物の前処理(粉砕、プラスチックの選別等)を行った後、プラスチックを直接焼却して、熱エネルギー回収と塩化水素の回収・中和(食塩にもどす)を行う方式。2.の<ガス化タイプ>は、前処理後、プラスチックを熱分解(350℃で蒸し焼き)して塩化水素の回収・中和を行った後、焼却して熱エネルギーを回収する方式です。
  また、<ガス化タイプ>は、熱分解時の温度の違いによって、A.固形燃料化プロセス、B.油化プロセス、C.ガス化プロセスという3つの処理法が可能です。しかし、今回の研究では比較的低温で処理できるa.固形燃料化プロセスの実現性の検討が中心テーマであり、残る2つの処理法については限られた範囲で基礎実験を行う程度に止どめました。
 
では、研究成果の概要をご説明します。

研究成果の概要 −コスト面では<ガス化タイプ>が有利

 ・PVCを含有した廃プラを焼却する場合、焼却の前に熱分解して脱塩化水素処 理を行う<ガス化タイプ>(2)が、プラントの建設コストとランニングコストをともに有利にできることが確認されました。PVCを直接焼却してしまう<燃焼タイプ>(1)では、焼却後塩化水素を回収するプロセスが必要となり、
  回収塔をはじめ腐食対策のために設備費が高くなります。この点については、先の中間報告でもおおよその目安が試算されていますが、今回の最終報告では <焼却タイプ>のコストは<ガス化タイプ>のほぼ1.5倍となることが確認されました。

  

油化プロセス、ガス化プロセスにも低コストの可能性

 ・廃棄物組成中のプラスチックが多くなると、焼却時の発熱量が多くなり、エネルギーの回収量は増えるものの、焼却炉や廃熱ボイラ等の設備費は高くなります。
 
 ・廃棄物中のPVCが多くなると、熱分解するプロセスでは脱塩化水素が必要となるため設備費が高くなりますが、熱分解プロセスのない場合(1)にはユーティリティコストが特に大きくなることが分かりました。
 
 ・なお、<ガス化タイプ>のうち油化プロセス(b)とガス化プロセス(c)に ついては、先に述べたように、現状では技術情報は限られています。しかし、少ないデータを基にした今回の計算でも、プラントコストが<焼却タイプ>と比較して安価になる可能性が示唆されており、熱量や他の諸問題が今後の検討課題となっています。

 

研究成果の総括 −<ガス化タイプ>の好適性を最終確認

  以上のように、PVCを含むプラスチック廃棄物の処理方法として、熱分解による脱塩化水素および塩化水素回収 →焼却処理というプログラム(ガス化タイプ)が、現時点では最も好適であると確認されたことは、今回の研究の最大のポイントと言えます。
  また、<ガス化タイプ>については、炭素化プロセスのほか、オイル化、ガス化の各プロセスがいずれも実用化の可能性が高く、特にガス化プロセスの試行計算結果からは、廃棄物組成中や生成ガスの定常的用途などの条件が整えば、<焼却タイプ>と比べて低コストが期待できるところです。オイル化プロセスについては、各地で進められている実証プラントの成果(10頁「インフォメーション」の項参照)に大きな期待がかかっています。

 

無公害焼却プラントの完成へ研究継続 −塩化水素の有効利用などテーマに

  エネルギー・資源回収ワーキンググループでは今後も、熱分解プロセスにおける効率的塩化水素回収の研究、回収した塩化水素の有効利用の研究、塩ビ廃棄物を燃やせない既設プラントへの応用メニューの作成などを進め、無公害焼却プラントの完成をめざすこととしています。そられの成果については、本紙上においてこれからも逐次ご報告していく予定です。