1993年3月 No.4
 
  プラスチックボトルの自動分別技術

  米APCが機械メーカーと共同開発、ボトル分別を手作業から解放

  今回の「海外事例紹介」は、米国におけるプラスチックリサイクルの取り組みの中から、最近の技術的な進歩の現状についてご紹介します。米国では、州ごとに法律が違うため、プラスチックのリサイクルの取り組みも多様ですが、リサイクルに先進的な州では、ボトルを中心に家庭からの回収、分別、再生が既に開始されています。このほど、そうしたリサイクル活動をバックアップする注目の技術が開発されました。その画期的な新技術とは……。

 

 

● 2種類のシステム開発に成功、実用規模での運転もスタート

  リサイクルに熱心なアメリカの州では、各家庭から使用済みのプラスチックボトルが資源ごみとして回収されます。その際、ボトルを材質別(プラスチックの種類別)に仕分ける作業(分別作業)は通常、回収業者の作業場で多くの人手によって行われており、典型的な3K作業となっています。この分別作業を自動的に行うことができれば、スピードも上がり精度も向上することが期待できます。
  こうしたプラスチック自動分別システムの開発に力を注いできたのが、米国の主要プラスチックメーカーで構成するAPC(the American Plastics Council=全米プラスチック協議会)です。APCは、日本のプラスチック処理促進協会に相当する組織で、プラスチックのリサイクル促進や有用性のPRなどを目的に、盛んな活動を続けています。自動分別システムについても、機械メーカーへの資金援助などにより積極的に開発を進めてきましたが、このほど2種類のシステムの開発に成功し、既に実用規模での運転がスタートしました。
 
 (1) 1時間当たり約2.5トンの分別能力 −ボトルソートシステム
  そのうちのひとつ、MSS社(Magnetic Separation Sstems Inc.)の“ボトルソートシステム”は、ボトルに使用されるプラスチックとしては最も一般的な4種類(PET、PVC、HDPE、PP)を仕分けるだけでなく、色による分別機能も備え、4系列で1時間当たり5000ホンド(約2.5t)の混合プラスチックを分別できる能力を持っています。
  システムの流れは、まずベール状(直方体)に固まった状態で入荷するボトルの混合物をほぐし、シンギュレーターと呼ばれる装置でベルトコンベアー上にボトルを1本ずつ供給します。第1の検出器がこのボトルの流れを、非着色のHDPEとPPの混合物、PETとPVCの混合物、および着色混合ボトルの3種類に分別しますが、これらの3つの流れに追加の検出器(X線による検出器など)と分離装置を取り付けることで、更に細かく分別することが可能です。
 
 (2)2つの検知器で色・種類を同時識別−ポリソートフィーディングシステム
  もうひとつのシステムは、APCが資金を出しAIC(Aut-omation Industrial Control)社が開発した“ポリソートフィーディングシステム”と呼ばれるもので、1カ所に2種類の検知器を設置し、片方でプラスチックの種類を、もう片方で色を同時に識別します。動くボトルに近赤外線を透過して、その吸収特性からプラスチックの種類を特定し、同時に小さなカラーカメラとストロボライトにより色を検出するものです。
  このシステムの特徴は、分別すべきボトルの吸収特性をあらかじめ機械に登録しておき、これと同じ吸収特性を示すものだけを選び出すポジティブなボトル認知システムを採用しているところにあります。

@●  極めて高い分別精度、用途展開も更に広がる可能性

  MSS社のシステムは、1時間当たり5000ポンドのシステムで75万ドルAIC社のシステムは、1時間当たり3000ポンド(約1.4t)のシステムで 45万ドル(ベール解体機は含まず)と高価ですが、分別精度が極めて高いため、回収されるプラスチックの純度が高く、今後はその用途を更に広げていくことも期待できます。