1992年12月 No.3
 
  硬質塩化ビニール板協会の欧州調査団レポートから

  欧州4カ国のリサイクル事情などを視察

  多くの教訓得た英・マークス&スペンサー社、仏・GECOMの取組

  当協議会の構成メンバーである硬質塩化ビニール板協会のフィルムシート部会は、去る9月7日〜17日の日程で欧州に調査団を派遣し、同地におけるPVCの環境問題の取組状況、業界の広報活動などについて精力的な調査を行いました。訪問国は英仏独およびベルギーの4カ国で、調査団の一行は、パーマーケット、シートメーカー、成形加工メーカー、PVC業界と関係団体さらにはリサイクル会社など幅広く現場の状況を視察して、数多くの話題を持ち帰って来ました。今回の「海外事例紹介」は、帰国後まとめられた報告書の中から、欧州におけるPVCリサイクルの現状を伝えるトピックスを2件ほどご紹介してみたいと思います。

 

 

● ストレート・オン・トレーのM&S社訪問、リサイクルへの積極姿勢に感銘

  調査団に参加したのは立部智士(住友ベークライト)、森道雄(信越ポリマー)、露口邦義(チッソ)、斎藤節(三菱樹脂)の4氏。一行は最初の訪問地ロンドンで、英国の大手スーパー・マークス&スペンサーの本社とカーディフ店を訪れ、その環境対策の現状を視察しました。
  同社におけるPVC製ストレート・オン・トレー(商品を入れたまま店の棚に置くトレーで、補充作業を容易にする)のリサイクルの試みについては、既にPVCニュース第1号でも詳しくご紹介しましたが、今回の訪問では、同社の包装資材に対する考え方を、責任者である環境問題技術部長L.M.Randall氏から直接伺うことができました。また、カーディフ店では、PVC製品がストレート・オン・トレーだけでなく、果物トレーやサンドイッチパックなどの食品包装、トイレタリーのボトルなどに予想以上に幅広く使用され、店頭を飾っている有様を直接目で見て確認することができました。
  Randall氏によれば、包装資材に関する同社の方針は極めて明快で、さまざまな包装資材の良い点と悪い点を把握し、もちろん環境に対する影響度も考慮に入れて素材を選定しているということです。プラスチック包装については、「食品衛生と輸送面を考慮すると必要不可欠であり、お客様の立場からもプラスチックなしではやっていけないと確信している」と、氏は語っています。
  その中で、PVCは他の樹脂と比較すると、1.原料として原油だけでなく食塩を用いるため省資源型であること、2.リサイクルしやすいという優位性を持っていることなどが評価のポイントとなっており、このため、同社では包装材の素材をなるべくPVCに統一すべく納入業者を指導しているとのことでした。話題のPVC製ストレート・オン・トレーのリサイクルについては、包装材の素材が統一される1993年早々にも本格的にスタートする方針とのことで、こうしたリサイクルに対する同社の積極的な姿勢に、調査団の一行も大いに感銘を受けたようです。

●  フランスGECOMに見るプラスチックボトルのリサイクルの取組

  9月10日には、フランスのGECOM(本部パリ)で、リサイクルに関する同国の法規制の現状、関係企業の取組の状況などについて話を聞きました。
  GECOMは、PVC、PE、PET等の原料メーカー、ミネラルウォーター会社、洗剤メーカーなどプラスチック包装に携わる企業の団体で、広報活動を主な目的とする組織です(1993年にはVALOR PLASTに名称変更の予定)。ミネラルウォーターのボトルとしてPVCを大量に使用しているフランスで、そのリサイクルがどこまで進んでいるのかを知ることは、今回の調査の中でも大きな目的のひとつでした。
  フランスでは92年4月に、ガラス、紙、鉄、錫およびプラスチック包装材の75%を10年以内にリサイクルする(焼却を含む)ことなどを定めたリサイクル法案が国会に提出されていますが、一方では、ECの法案に即した排ガス処理なども必要となっています。
  こうした状況に対応するため、GECOMではプラスチック包装材のリサイクル対象を、1.ショッピングバッグ等フィルム類、2.ボックス・容器類、3.ボトルの3つに大別し、当面の目標として3.のボトルを中心とした取組が、PVC、PE、PETそれぞれのワーキンググループによって現在進められています(1.については薄物フィルムで取扱が難しいため焼却することとし、2.は将来リサイクルの対象とするが現状では検討中との位置づけ)。
  フランスにおけるプラスチックボトルは、プラスチック包装材全体の38%を占めますが、業界では10年以内にその35%をリサイクルする目標で、当面96年までに計4万トン(PVC1万8000トン、PE4000トン、PET3000トン、ミックス品他1万5000トン)のリサイクル達成という計画を立てています。
  リサイクルの方法は自治体が責任者となり、業界が回収品の処理に当たる(GECOMは自治体に対して回収方法の指導協力等を行う)というものですが、既に91年の実績で4000トン、また92年見込みでは8000トン(ボトルとして2億本)まで取組が進んでいます。また、この回収作業のために現在約3000個のコンテナが設置されており(93年には5000個に拡大する計画)、回収システムに携わる関係者は約600万人、フランスの全人口の10分の1に達するということです。


●  塩ビ再生品の開発も順調 −靴底、アスファルト充填剤などに利用

  一方、回収品の加工についてはGECOMと契約した企業により製品開発が進められていますが、PVCの場合リサイクルが容易という特性もあって、靴底、アスファルトの充填剤、パイプ、床材のバッキング材など二次用途の種類が多く、特に問題はないとのことでした。また、リサイクルに要する費用は、包装材メーカーおよび実需者のすべての対象企業が拠出した基金により賄われていますが、最終的には消費者が負担する仕組みになっています。現在はボトルの回収のみに基金を使用しているため、資金面でも今のところは問題なく対応しているようです。なお、GECOMでは92年からの10年間に必要な資金を24億フラン(約600億円)、うちプラスチック関係で12億万フランと試算しています。
  以上のほかにも、PVC産業界が常に環境保護団体と共同で問題解決に臨んできたことなど、フランスのリサイクル事情には、我が国でも今後参考とすべき要素が数多く含まれており、調査団にとっては非常に収穫の多い訪問となりました。