では、M&S社がトレーの素材としてPVCを採用した理由は何なのでしょう。同社の環境部長L.RANDALL氏は「包装材料の使用量の低減、顧客にとって魅力のある安全な営業がいかなる場合でも会社の方針である」と、環境問題に対する基本的な姿勢を明らかにした上で、「PVCは大変環境にFRIENDLYな物質だ」と述べています。既に「塩ビって何」の項でもご紹介したとおり、石油のみでは作られない唯一の硬質プラスチックであるPVCは、他のいかなる熱可塑性樹脂より地球環境への悪影響が少なく、かつ再生がたいへん容易であるという特長を持っています。M&S社がPVCへの統一を決定したのはこうした特性を評価したためで、加えて、英国の小売店協会も好ましい包装材としてPVCを支持していることも、今回の決定の重要な要因になったものと考えられます。
M&S社では既にチェーン内のリサイクル・システムを確立し、上記のリサイクル事業を開始していますが、トレーの用途も食品用ばかりでなくトイレタリー、ギフトおよびホームケアー商品などにまで広がりを見せ始めています。資源再利用の対応策の一環として環境先進地である欧州の企業がPVCを選択したことは、今後のリサイクル運動のあり方に大きな影響を与えそうです。