2015年9月 No.94
 

進化系!(株)ミワックスの技術力

塩ビ製透明デスクマットのパイオニア。旺盛な探求心で次々に「世界初」の開発

デスクマット カッティングマット
ダイニングマット

ミワックスが誇る多彩な製品群の中から、デスクマット(左)、カッティングマット(右上)、ダイニングマット(右下)。

 メモや書類を挟んで散逸、破損を防ぐ、シートの上から書類が見えて作業効率が上がる―事務用品の歴史の中で、塩ビ製の透明デスクマットの登場は、文字通り画期的出来事だったといえます。そのオリジネーターが、(株)ミワックス(美馬隆士社長、本社=東大阪市玉串元町)。透明塩ビマット以外にも、次々と「世界初」を生み出し続ける技術力は、聞けば聞くほど、奥が深い。

●透明、軽量、割れない素材

美馬社長

美馬社長

 ミワックスが塩ビ製の透明デスクマットを発売したのは昭和40年。まだゴム製のマットが主流だった時代に、他社に先駆け塩ビ製マットの開発に至った経緯を美馬社長は次のように説明します。
 「うちも、もともとはゴム製の事務用デスクマットが主力だったんです。ゴムの統制解禁を機にその製造を始めたのが昭和25年。34年には創業者(美馬利吉氏、現会長)のアイデアから生まれたゴム製麻雀マットが大ヒットしていますが、その後、より新しい機能を求めてマットの改良に取り組む中で思いついたのが、透明なマットの開発でした。当時もガラス板やアクリル板の透明マットは使われていましたが、難点は割れやすく重いこと。そこで、ガラスに匹敵する透明度があり軽量で割れない素材として、軟質塩ビにたどり着いたわけです」
 昭和38年、ある塩ビメーカーの協力を得てデスクマット用シートの開発に着手した同社は、厚さ0.5mm〜0.7mmのシートを重ね合わせ、鉄製の鏡面板を持つプレス機で熱圧着して単板に成形する方法で完成。書類や印刷物が粘り付くという軟質塩ビ特有の問題も、アクリルコーティングを施すことにより解決し、昭和40年から文具問屋を中心に販売を開始します。
 「熱圧着したシートは数時間掛けて自然冷却しなければならないが、そのことで優れた透明性と平滑性が定着するのです。最初は相手にしてくれなかった問屋さんも、ガラスより扱いが楽だし、人の作業に丁度いい硬さでボールペンも滑らかに使える、ということで徐々に買ってくれるようになりました」

株式会社ミワックス

2006年に開設された物流センター
(大阪府八尾市)

 デスクマットのトップメーカー。昭和21年、美馬利吉氏が大阪市に設立した美馬製作所が前身(現社名への変更は平成4年)。
 創業以来、「ユニークな商品の創造」をモットーに、文具事務用品分野、家具・店舗用品分野、玩具ゲーム用品分野へと各種マット商品を提供してきた。透明ビニール製デスクマットをはじめ、カッティングマット、ゴム製麻雀マットなど、同社が初めて開発した商品は数多い。2004年には、画像データをメール送信するだけで簡単に様々な形のマットが作成できる「写で切〜る」を開発(本文参照)。その技術力は他社の追随を許さない。

●カッティングマットの開発も世界初

世界初のカッティングマット(上)と三層構造

 同社の事業を際立たせている最大の特徴は、旺盛な探求心に支えられた技術力の高さにあります。例えば、コピー機の印刷方式が湿式から乾式に切り替わった1980年代、トナーインクがシートに転写するという問題に対応して、同社はいち早く研究に着手。試行錯誤の末に、特殊な膜をラミネートすることで転写を防止する技術の開発に成功しています。「コピーのトナーというのは機種ごとにみんな違います。膜の種類を決定するために、我々はそのすべてを調べ尽くしました」
 また、現在の主力製品のひとつとなっているカッティングマット(カッターナイフ用のマット)も昭和55年に同社が世界で初めて開発したもの。硬質塩ビシートを軟質シートで挟んだ三層構造は、同社の技術の蓄積から生まれた独自のアイデアで、マットの反りを防ぎ刃先をしっかり受け止めます。これまでに米英独で国際特許を取得しており、現在では他社の製品にもすべてこの製法が用いられています。

●「NCカッティングシステム」と「写で切〜る」

注文オーダーの要・NCカッティングシステム

 1990年代以降、同社はOEM・特注オーダーへの対応を強化してきました。事務デスクなどと違って、リビングテーブルのようにデザインが一定しない製品に対応した取り組みで、平成2年には、その要となるNCカッティングシステムを導入。それまで手作業でカットしていた不定形マットがコンピュータ制御で自在にカットできるようになりました(平成12年にシステムを増強)。
 「不定形なマットを手でカットするには非常に高度な技術を要します。NCカッティングシステムは国内の機械メーカーが開発したシステムを当社用に調整したもので、丸でも楕円でも特殊な形でも、型紙どおり正確に美しくカットできるようプログラミングされています」
 この取り組みのさらなる発展形となるのが、平成16年に開発されたオーダーメイドカッティングシステム『写で切〜る』。スマホやデジカメで撮影した画像をメール送信するだけで様々な形の別注デスクマットを製作できるこのシステムは、「橋げたのコンクリートのひび割れ測定に使うソフトを展示会で見つけて応用したもの」で、時代の変化に即応する同社の技術力を如実に示すものといえます。

●デザイン的要素をブラッシュアップ

 抗菌剤をコーティングした高付加価値マットや、再生塩ビ・再生オレフィンを用いたリサイクルマット(グリーン購入認定製品)、さらにはコンピュータ時代に対応したマウスパッドなどまで、多彩に広がり続けるミワックスの商品群。今後の事業をどのように展開していくのか、同社取締役の美馬徹也氏に話を聞きました。
 「今、うちの製品に不足していると感じるのがデザイン的要素。日本の社会全体で見ても、工業的な技術は高いが最終製品としての面白さがお座なりになりがちです。うちの場合、事務用品中心なので仕方のない面もありますが、そこを自社商品でブラッシュアップしていければ、新しいパーソナルユースの道が開けるかもしれない。その試みは既に始まっています」ミワックスの技術力はまだ多くの可能性を秘めているようです。

 

美馬取締役が手にするのは新企画の透明カッターマット。下の写真は他にも新タイプのカッティングマットがいろいろ