2015年6月 No.93
 

お花見の風景を変えた「花びらピクニックシート」

塩ビデザイン・アワード入賞作品を商品化。被災地支援にもひと役

花びらピクニックシートのプロトタイプになったPVC Design Award 2013入賞作品「hana-saka」

 ブルーシートだらけのお花見風景が、明るくなった!PVC Design Award 2013の入賞作品を商品化した「花びらピクニックシート」が話題を集めています。被災地を元気づけようと取り組んだプロジェクトも成功し、ネット通販アマゾンでの販売もスタートしました。

●シンプルなデザイン、斬新な発想

開発者の鈴木淳史さんは
草月流華道師範としても活躍

 「ブルーシートを無造作に広げたお花見の風景が好きになれなくて、何か新しいデザイン商品がないかと前から考えてたんです。それで思いついたのが、塩ビ素材の桜の花びら型シート。これならお花見をする人も楽しめるし、風景も明るくなると確信しました」
 そう語るのは、花びらピクニックシートを開発したフラワーデザイナーの鈴木淳史さん。現在は、東京都調布市でアトリエ型の花屋「Plant’s Orchestra」を営む鈴木さんですが、当時はまだ生花会社務めのサラリーマン。「商品化を会社に提案してみたものの、予算の問題などもあって実現しませんでした。それでも諦めきれずにいたとき、デザイナーの友人から『塩ビ業界が毎年デザインアワードを開催している。試作品作りも手伝ってもらえるらしい』と聞いて、個人で挑戦すること決めたわけです。2013年の春のことでした」
 PVC Design Award 2013に出品された鈴木さんのデザインは、合成樹脂加工商社の(株)三洋(東京都中央区)、の協力を得て試作品化され(作品名「hana-saka」冒頭の写真参照)、みごと入賞を果たします。
  「シンプルなデザインで、有りそうでなかった斬新な発想」が評価された結果でした。さらに量産時にはグラビア印刷のトップ企業の明和グラビア(株)(大阪府東大阪市)に印刷加工の協力を得ました。

お花見がもっと楽しくなりました。福島県南相馬市「夜の森公園」で(右の写真も)

シートのサイズは90cm×65cm

●「花びらシートで被災地に笑顔を!」プロジェクト

宮城県石巻市の商業施設「橋通りcommon」のオープニングを彩った花びらシート(4月25日)

 受賞後、意匠権を取得するなど商品化へ向けて準備を進めていた鈴木さんが、知り合いの観光プランナーから「震災の影響で観光客が減少している東北地方に届けたら喜んでもらえるのでは」とアドバイスを受けたのは、2014年の秋のこと。
 「そういう考え方もあったのかと思いました。被災地で使ってもらえたら地元の人たちを元気づけられるだけじゃなく、商品化にも弾みがつくかもしれない」
 こうしてスタートしたのが「花びらシートで被災地に笑顔を!」プロジェクト。一般から募った資金で東北地方などの被災地に計1000枚のシートを贈り、お花見などに役立ててもらおうという取り組みで、課題の資金集めにはクラウドファウンディング(科学研究や製品開発など特定の目的を実現するため、ネットを通じて不特定多数の人から資金を募る方法)を活用。フェイスブックにファンドのサイトを立ち上げる一方、前出の観光プランナーの協力で被災自治体や市民団体などへの呼びかけも進み、寄贈先が決まっていきました。

●アマゾンでネット販売中(www.amazon.co.jp)

長野県白馬村の下川村長に花びらシートを寄贈する鈴木さん(中日新聞長野版、3月31日)

 クラウドファウンディングによる資金集めは2014年12月24日に始まり、翌年2月14日までの50日間で、目標金額の119万7千円を上回る124万円を達成。
 「初めての挑戦だったし、不安もありました。目標をクリアできたのは、被災地支援というだけでなく、シートそのものの面白さが支持されたんだと思います。友人や身内も含め、多くの人の支援で計15の自治体・団体にシートを贈ることができました」
 寄贈は、長野北部地震(2011年3月)で被災した白馬村と小谷村に100枚贈ったのが最初で、そのときの模様は地元紙やケーブルテレビで紹介され注目を集めました。このほか、福島県南相馬市の夜の森公園、福島県天栄村の温浴施設、青森県むつ市の観光センターや宮城県石巻市の商業施設などでお花見やイベント装飾用に利用され、各地から「楽しい」「こういうの、いいよね」「さっそく敷いてみました」といったコメントが寄せられています。
 4月からアマゾンでの販売も始まった「花びらピクニックシート」(税込み1枚1080円、5枚4590円)。地道な努力を重ねて商品化に漕ぎつけた、鈴木さんのチャレンジ精神に拍手。