2013年3月 No.84
 

塩ビ製水道管をめぐる最新情報
─塩化ビニル管・継手協会

より高い耐震性能を求めて、塩ビベンドの埋設実験、耐震金具の規格化など

RRロング管(下は離脱防止金具付き)
 東日本大震災は、ライフラインとしての水道の重要性を改めて痛感させる出来事でした。被災の現場では飲み水の安定確保こそ生存の生命線であり、より耐震性能の高い管路の構築は地震大国・日本にとって最優先のテーマといえます。こうした課題に応えるべく、塩化ビニル管・継手協会(以下、協会)では、RRロング受口管(地震動に伴って接合部のゴム輪受口〈RR〉が抜け差しできる余裕を持たせた塩ビ管)を中心とした耐震管路の普及に取り組んでいます。ここではその最新の動きをまとめました。

●レベル2地震動にも対応するRRロング受口管

東日本大震災における水道管路被害
調査結果の概要
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 RRロング受口管(以下、RRロング管)は、阪神淡路大震災、東日本大震災のような最大規模の地震(レベル2地震動)でも、地盤のひずみを十分吸収できるように設計された最先端の水道用塩ビ管です。液状化による地盤破壊についても、接合部に耐震金具を装着することで管路の離脱を防止することができ、厚生労働省の「管路の耐震化に関する検討会 報告書」(平成19年3月)でも、基幹管路が備えるべき耐震性能を有する管として採用が可能となっています。
 これまでRRロング管を埋設した地域が遭遇した巨大地震としては、平成19年の新潟中越沖地震と翌20年の岩手・宮城内陸地震、そして今回の東日本大震災が挙げられますが、協会が行った調査では、そのいずれにおいても管自体の被害は報告されていません。
 このうち東日本大震災に関しては、宮城、福島、茨城3県で震度6弱以上を記録した7地域を対象に調査を行っており(管路延長231.4km。(株)ライフライン工学研究所への委託調査)、一部、液状化等地盤変状の激しかった鹿島市で耐震金具の未使用による離脱被害が認められたものの、これはいずれも金具を使用していれば防止できた被害と想定されています(「平成23年東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)水道管路被害調査報告書」〈24年1月〉。下水道に関する調査報告書〈同年9月〉と併せて、詳細は協会のサイトに掲載。http://www.ppfa.gr.jp

●RRベンドの埋設実験で「十分な耐震性」を確認

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 こうした中、協会では、塩ビ管を使った耐震管路の信頼性をより明確にするため、RRベンド(管路の曲がり部に使用する塩ビ管で、ゴム輪受口タイプのもの)について、埋設(加振)実験を実施しました(平成24年12月3日〜12月14日、実験場所はクボタシーアイ(株)の堺工場)。
 地震では、管路の曲がり部に応力(ある荷重を受けたときに、材料内に生じる単位面積当たりの内力)が集中すると考えられますが、協会では平成23年度にRRベンドのコンピュータシミュレーション解析を行って、その耐震性について良好な結果を得ています。今回の実験には、その解析結果の検証という狙いも込められています。
 実験は、「RRロング管+RRベンド」で構成した管路(呼び径50mmと75mmの2タイプ。離脱防止金具を使用)を実際に地中(川砂)に埋設し、これにレベル2地震動並みの強振動を与えて、ベンド各部の歪みを測定したもので、その結果、@(社)日本水道協会の「水道施設耐震工法指針」で計算した理論値(直管部)及びシミュレーション解析値と同様、埋設実験でも口径が大きくなるほど発生応力は小さくなること、A発生応力はいずれの場合も口径50で最大となるが、曲がり部(RRベンド)の発生応力が、解析値、埋設実験ともに照査基準(発生応力がそれ以下であれば問題ないとされる許容値)の38メガパスカルを下回っていること、などが確認されました(下表参照)。
 この結果は、RRベンドを用いた曲がり部が、レベル2地震動に十分な耐震性を有することが確認されたことを示します。

●離脱防止金具のAS規格を制定

協会規格AS63

 一方、RRベンドの埋設実験と併行して、離脱防止金具の協会規格化(AS規格)も進められ、平成24年12月20日付けで、AS63「水道用ゴム輪型硬質ポリ塩化ビニル管用離脱防止金具(耐震管路用)」が新たに制定されました。
 これは、厚労省の報告書(東日本大震災水道施設被害状況調査報告書、平成24年9月)で、塩ビ管の離脱防止金具が離脱した例や、管の受口先端側に設置した離脱防止金具の食い込みにより受口を破損した例などが報告されていること、これまでも受ロゴム輪装着部の上に係止するタイプの金具で事故が散見されていること、などに対応したもので、硬質塩化ビニル管用離脱防止金具の正式な規格化は今回が初めてとなります。
性能規格の一部(内径)
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 規格のポイントは、@既に種々の離脱防止金具が市場に存在すること、及び今後の開発を阻害しないことなどに配慮して、細かい規定をしない性能規格としたこと、A離脱防止金具はスラスト防護用にも使用されることから、耐震管路用であることを明記したこと(スラスト防護用にも使用可能)、B塩ビ管受ロのゴム輪装着部に係止するのを防止するために受口金具の内径寸法を規定したこと、など。
 協会では一連の取り組みについて、「高性能の耐震管であるRRロング管とRRベンド、そして規格に適合した離脱防止金具をセットで使うことにより、塩ビ管がレベル2の地震でも耐震管路として問題なく使用できることが改めて明らかになった」と述べています。