2011年9月 No.78
 

塩ビ管リサイクルの中間処理拠点(株)グローバルテクノス

川崎市管工事業協同組合との連携で着実な成果。バツグンの熱意と行動力

パレットに集められた塩ビ管(右上)と
回収用のコンテナ
 塩化ビニル管・継手協会が取り組む「使用済み塩ビ管・継手のリサイクル事業」に、中間処理拠点として参画した(株)グローバルテクノス(神奈川県横浜市旭区川井本町70-7/TEL:045-955-5835)が活発な動きを見せています。循環型社会の構築という社会の要請に応えるべく、バツグンの熱意と行動力で塩ビ管リサイクルに邁進する同社の最新動向を取材しました。

●神奈川県の契約中間処理会社

 塩化ビニル管・継手協会(以下、協会)の塩ビ管リサイクル事業は、全国各地に整備したリサイクル拠点のネットワークを基盤に、使用済み塩ビ管の回収〜リサイクル塩ビ管製造までの一貫したリサイクルを行うもの。拠点の種類はその役割ごとに、@リサイクル協力会社(受入れた塩ビ管から再生原料を製造する)、A中間受入場(排出者が自ら汚れや異物を取り除いたものを受入れ一時保管する)、B契約中間処理会社(排出者に代わって汚れ、異物の除去を行い再生原料を製造する)、の3つに分かれており、2011年8月現在の拠点数は、リサイクル協力会社16、中間受入場29、契約中間処理会社40の合計85拠点となっています。
 今回ご紹介するグローバルテクノスは神奈川県の契約中間処理会社で、同社が川崎市管工事業協同組合(川崎市川崎区宮本町)と連携して進める塩ビ管のリサイクルが2010年以降着実な実績を上げてきていることから、関東南部のリサイクル拠点としての役割に大きな期待が集っています。

●1年で7トン。予定を上回るリサイクル量

梅沢社長

 グローバルテクノスは2002年に設立された産業廃棄物の収集運搬・中間処理業者です。中間処理では各種廃プラスチックから金属くずなどのマテリアルリサイクルがメインで、塩ビ管を手がけるようになったのは2007年から。その理由を同社の梅沢隆之社長((社)神奈川県産業廃棄物協会理事)は「塩ビのことは殆ど知らなかったが、業界の中では処理困難物として敬遠されがちだった塩ビを、何とか再利用する道はないかと考えた」と説明しています。
 協会のリサイクル事業に参加したのは2009年のことで、「国内で出た廃棄物はできる限り国内で回したい」という考えから情報を捜したところ、協会のリサイクル事業の存在を知り契約中間処理会社として協力することにしました。

<拡大図>

 川崎市管工事業協同組合との連携は2010年6月にスタートしており、今年5月末までの1年で約7トンの使用済み塩ビ管が回収され、その全量がリサイクルされています。これは予定を大きく上回る数字で、両者の共同作業が順調に進んでいることを示す結果と言えます。
 作業の流れは、組合員(管工事業者)が工事現場から使用済み塩ビ管を回収⇒リサイクルに適しないものを分別したうえで専用のパレット(組合からの貸与)などに保管⇒溜まったらトラックで所定の場所(同組合の宮内出張所)に搬入し、グローバルテクノスが設置したコンテナ(容積8m3。1t〜1.2t詰め)に投入⇒組合はコンテナが一杯になった時点でグローバルテクノスに連絡して引き取ってもらう(空のコンテナと交換)という手順で、これまでに6回コンテナの回収が行なわれています。組合員には決められた搬入日はなく、各自の都合で常時搬入可というシンプルさも、負担軽減に役立っているようです。

●前処理も輸送コストも不要

長島所長(右)と小宮山氏
コンテナに溜まったグレー管と
HI管用のフレコンバッグ

 同組合は既に2002年から協会のリサイクルシステムを利用しており、当初は組合員が自ら前処理(汚れ落としや異物除去、長尺管のカットなど)して宮内出張所に搬入し、組合が厚木市の中間受入場に持ち込む方法を取っていましたが、2010年5月に協会を通じグローバルテクノスを紹介されたのを機会に、現在のシステムに移行しています。
 「以前は、中間受入場までの輸送費がネックになっていたが、今は輸送費も不要になったうえ、連絡すればすぐに取りに来てくれる。このシステムに変えてから利用する組合員が確実に増えてきた。コスト面の魅力に加えて、資源の有効利用に貢献している満足感もある」(宮内出張所・長島聡所長)
 また、グレー管(給水・排水用などに使われる一般的な塩ビ管)ばかりでなく、衝撃に強いHI管や耐熱性のHT管なども処理対象になっていることも組合員の利用が増えた要因のひとつといえます。同組合の小宮山俊哉氏によれば、「最初はグレー管だけだったが、途中からグローバルテクノスが破砕設備を強化してくれたお陰で硬度の大きいHI管やHT管も引き取ってもらえるようになった。こうした特殊な管はコンテナの中に置いた専用のフレコンバッグの中に分別してもらうよう組合員を指導している」とのことで、この1年の間だけでも、両者の熱心さにより少しずつシステムの改良が進んでいることがわかります。

●大手ゼネコンからのオファーも

 
完成したリサイクル原料   辻マネージャー

 組合から回収された使用済み塩ビ管は、グローバルテクノスのロジセンター(横浜市旭区矢指町)に運ばれ、汚れや土砂、異物の除去と長尺管のカットなどの後、破砕機で1cm角程度のリサイクル原料に加工されます。
 以上のように順調な動きを見せる同社の取り組みですが、同社では「次の段階に進む前に、再生品の更なる品質向上に取り組む」方針で、当面は「HI管などの分別徹底とその処理に対応した2軸破砕機の導入、土砂の除去精度の改良などに取り組み、足元を一歩ずつ固めながら先に進む計画」(同社の辻雅行営業マネージャー)としています。一方で大手ゼネコンなどの排出事業者から直かに仕事の依頼が届くといった新しい動きが出てきていることも見逃せません。

被災地に入ったグローバルテクノスのトラック

 「排出事業者を含む多くの関係者と連携しながら塩ビ管をリサイクルすることで、塩ビはきちんと循環できるという社会的理解を深めていきたい。2025年には地球の人口が90億人に達するという状況を考えれば、資源循環の意義はますます大きくなっている。我々の力に限りはあるが、協会にも引続きご指導をいただきながら頑張って活動していきたい」(梅沢社長)
 同社はカーボンオフセットの利用などでCO2排出ゼロ工場を実現しているほか、3月の東日本大震災に際してもいち早くボランティア活動に従事。宮城県女川町や岩手県陸前高田市などの被災地に、数回にわたって緊急支援物資の寄付(マスク20万枚など)と輸送協力を行っています。その広い社会的視野と行動力は、今後の塩ビ管リサイクルにとっても大きな力となりそうです。