2011年6月 No.77
 

福井市役所が庁舎1階に塩ビサッシ内窓を施工

断熱改修で省エネ対策を強化。市民の環境意識向上にもアピール

塩ビサッシが施工された
福井市役所市民ホール
 福井市役所が、地球温暖化防止へ向けた省エネ対策の一環として、本庁舎1階の市民ホールに塩ビサッシの内窓を施工。優れた断熱性能で冷暖房の省エネ効果を飛躍的に高める塩ビサッシですが、雪国・越前の冬に、早くもその効果を現わしはじめていると聞いて、さっそく現場へ直行。施工後の様子と今後の取り組みの計画などをうかがいました。

●市民が暖かさを実感できるように

平森主査 中津主査

 「市民ホールは西南北の3面がガラス張りで、中2階を含む吹き抜け構造。人の出入りも多いので、熱が抜けやすく冬はとにかく寒い。二重サッシを施工したのは、来庁する市民の皆さまが少しでも暖かさを実感して、窓断熱による省エネの大切さを知ってもらいたと考えたためだが、中で働く職員からも、コールドドラフト(暖かい空気が窓や壁際で冷やされ、重く冷たい空気となって足元に流れる現象)が和らいで『前よりも暖かくなった』という声が出ている」と説明するのは、福井市役所管財課の平森幸弘主査。
 塩ビサッシの内窓が施工されたのは、本庁舎ビルの1階と中2階の窓ガラス176枚のうち129枚分で(その他、内窓を使わずガラスだけ2重にした箇所を含めると計157枚を断熱化)、窓の種類としては「大型の窓なので安全性、耐震性を考慮して、メンテナンス性のよい引き違い窓タイプを採用」していますが、工事は昨年(2010年)11月の土日を使って計8日間という短期間で終了。「施工の難しい工事だったが、施工者および製品を納入したリフォジュール(株)(福井市に本社を置くフクビ化学工業(株)の子会社)と事前に何度も打ち合わせを重ねて、しっかりした工事をしてもらった」(平森主査)とのことです。
 今回の断熱改修については地元の民放テレビやケーブルテレビなどでも報道がなされ、「市が取り組んでいる省エネ対策」として注目を集めています。

●『グリーンニューディール基金』を活用して

環境基本計画

 施工までの経緯について市民生活部環境課の中津浩平主査に説明してもらいました。
 「福井市では2010年度に策定した環境基本計画(2011年度〜2015年度までの5ヵ年計画。2000年度の第1次計画の後を受けたもの)に基づいて、地域の環境創造や温暖化防止に向けた取り組みを進めている。
 一方、2009年に地球温暖化の主な原因物質である二酸化炭素の排出削減と、緊急経済対策を目的とする「地域グリーンニューディール基金事業」が開始されたことから、福井市でもこの基金を活用して公共施設の省エネ化など様々な取り組みを進めている。今回の窓断熱もその取り組みの一つで、内窓の設置だけでなく、南面と西面の一部には遮熱フィルムを貼って、夏場の暑さにも対応できるようにしている」

木質調の落ち着いた色合いも好評

 当初、断熱改修を実施する場所としては、学校や公民館なども候補に上がったようですが、「いろいろ市の施設がある中で、どの場所が最も効果的かを検討した結果、市民に環境意識や省エネ意識を広める上では、市民の来庁が最も多い市役所の1階がいちばんいいと判断した」といいます。
 なお、福井市では、今回の窓断熱と併せて館内照明のLED化とバイオマス燃料(ペレットストーブ)の導入なども実施しており、これらの省エネ改修全体により年間約110トンのCO2削減を目指す計画。「市役所自らが率先的に省エネに取り組んでいくことも重要だが、このような取り組みについてしっかりと啓発を図ることで、二重サッシも含めた様々な省エネ製品の普及促進につながればと思う」(中津主査)と期待を高めています。

●館内の保温効果が向上

中2階に施工された塩ビサッシ

 断熱改修による省エネ効果など詳しいデータ分析はまだ行われていませんが、平森主査は「改修後に間違いなく変化したのは、館内の保温効果がすごく良くなったことだ」と言います。
 「市役所の暖房は上限20℃の設定で9時〜17時の8時間稼動だが、寒い時期の土日明けの月曜日は例年終業時間までに20℃を超えることは殆どなく、大抵は17℃〜18℃で業務終了、週末になってやっと設定温度に達するかどうかという具合だった。それが、内窓を付けてからは火曜日には設定温度に到達する。つまり、17時に暖房を止めた後の保温性がかなり上がったためで、この変化は非常に強く実感している」
 市環境課では今後、窓際の温度比較なども行い、二重サッシによる断熱効果がどれほどあるのか調べていきたいとのことです。

市の省エネ対策を
知らせる電子掲示板

 「東日本大震災による福島第一原発事故をきっかけに省エネがより大切なテーマになってきている。同じく原発を抱える福井県でも、市民の意識が変わって省エネの方向に大きく走りだすかもしれない。そういうことを考えると、市としても、より身近な節電・節水を訴えるとともに、今回のような断熱改修の事例もPRしていかなければならないと考える」(中津主査)
 近年は福井市でも、住宅版エコポイントの効果などから塩ビサッシを施行する家庭が増えつつあるとのことですが(住宅版エコポイントは今年7月末で終了)、市では「省エネだけでなく防音効果や結露防止効果も高いことから、エコポイントなどの制度を活用して多くの住宅に入っていって欲しいと思う」としています。