2011年6月 No.77
 

塩害から家屋を守る塩ビサイディング

1年間の曝露試験で高い遮塩性能を確認。日本建築学会九州大会で成果報告

曝露試験の様子

 樹脂サイディング普及促進委員会と塩ビ工業・環境協会(VEC)では、「長期間安心して使える塩ビサイディング」をめざして、大学等への委託研究を通じ塩ビサイディングに係る定量的なデータの把握に努めています。今回は、日本建築学会九州支部大会(3月6日、鹿児島大学)で発表された「塩ビサイディングの塩害抑制試験」の成果について、その一端をご紹介します。

● 沖縄県、北海道で曝露試験

 凍害を受けにくいことから、寒冷地や戸建て住宅への採用が進む塩ビサイディング。近年は塩害からのコンクリート保護効果に対する期待から、沿岸部や中低層のRC(コンクリート)建物への採用も増えてきています。樹脂サイディング普及促進委員会とVECは、こうした遮塩効果を検証するため、琉球大学の山田義智教授、日本大学の湯浅昇教授に研究を委託し、2009年7月から沖縄県(辺野喜)と北海道(泊)において曝露試験を開始しました。
 試験体は鉄筋入りコンクリート(縦横30cm、厚さ15cm)に塩ビサイディングを貼ったものと、貼っていないものの2種類で、試験対象とならない4面はアクリル系防水塗膜で被覆し、その面からの塩分の浸透を遮断しています。試験では、東西南北から飛来する塩分を捕集器で捕集し総飛来量を測定するとともに、飛来した塩分がどの程度コンクリート試験体に浸透したかについては、試験体から直径10cmのコアを抜いて塩化物イオンの測定を行い、総塩分飛来量との相関関係を確認しています。

● 塩分飛来量との相関は「ごくわずか」

 曝露1年経過後の測定結果はグラフで示す通り。塩ビサイディングの被覆がない試験体には塩分飛来量に相関してコンクリート中に塩分が浸透しているのに対し、塩ビサイディングで被覆した試験体は、若干の浸透は見受けられたものの、塩分飛来量との相関はごくわずかという結果になっています。

飛来塩分量と浸透塩分量の関係

 塩ビサイディングで被覆した試験体に塩分が浸透した要因としては、施工した塩ビサイディングとコンクリート間のごくわずかな隙間に付着した塩分が雨水等によって侵入したことが考えられますが、実際の建物への施工では、この隙間部分は軒下もしくはコーナーカバーなどで覆われる部分となるため雨水等が入り込むことはありません。既に曝露1年経過した時点でこの隙間は埋められており、今後の測定では今回以上の塩分浸透は無いものと考えられます。
 以上が1年経過後の試験結果の概要ですが、塩ビサイディングはプラスチックであるが故に材料収縮があることから、シーリングせず、収縮の遊びしろを設けて(隙間を設けて)施工します。このため一見、雨水や塩分が入り込みやすい外装材と思われるかもしれませんが、今回の試験結果は、実は非常に高い遮塩効果を有することを確認したものといえます。