2011年3月 No.76
 

断熱改修・施主の声から−快適・安全・健康・エコ一体の満足感

日本海の寒風をシャットアウト。塩ビサッシ・塩ビサイディングもひと役

改修後の鈴木さん宅。後に日本海が広がる
 エコ住宅促進の流れを受けて家屋の断熱改修が広がっています。が、そこで声あり。「断熱改修ってホントに快適なの?」今回はそんな疑問にお答えします。昨年11月に断熱改修を完了した山形県鶴岡市鼠ヶ関の鈴木良正さんのお宅を訪ねて、改修後の住み心地をヒヤリング。厳しい東北の冬の寒さをシャットアウトして、快適・安全・健康・エコの四位一体を実現した高断熱高気密住宅には、塩ビサッシと塩ビサイディングも大切な役割を担っていました。

●住んで見ないと分からない快適さ

「ビックリです」と
鈴木さん

 「いつもは4月に咲く君子蘭が、今年は1月に咲いてしまいました。春だと思ってるんですね。ほんとにビックリです」と微笑むのは鈴木さんの妻・寿子さん。
“常春”の暖かさを謳歌しているのは、観葉植物だけではありません。「私は毎朝4時半に起きるんですが、起き抜けでも寒いという感じが全然しないんです。夜寝るときも毛布を2枚掛けるだけ。以前は居間も台所も風呂場もそれぞれ温風ヒーターを置いていたんですが、今はオール電化で24時間適温を維持しているので、部屋毎の仕切りが取れてどの部屋に行っても暖かい。風呂上りも苦になりません。洗濯モノも朝室内に干すと翌朝には完全に乾いています」

真冬に咲いた君子蘭

 日本海に面する鼠ヶ関は、冬の気温が零下10℃まで冷える日も多い厳寒の地。海から吹きつける西北の強風に晒されて家屋全体が芯から冷え込むといいます。
 ご主人の鈴木良正さんの話。「前の家は築33年の木造モルタル。とにかく冬の寒さがひどくて、早く何とかしたいとずっと思っていました。一時は鼠ヶ関を出ようとまで考えましたが、知らない土地に行くよりはと、家内と相談して改修を決めたのが昨年の3月。ただ、仕事柄(東北電力鶴岡営業所に勤務)、エコ断熱の知識はあったものの、実際どの程度の効果があるのかは半信半疑だったんです。もちろん、今では妻ともども快適さを実感しています。この快適さは住んで見ないと分からない」

   
塩ビサッシ・サイディングで高断熱   広々とした居間も穏やかな暖かさ   温水の輻射熱で温めるパネルヒーター

●技術の粋を尽くした高断熱・高気密住宅

 鈴木さん宅は建坪約60坪2階建て。工事は建物の基礎と柱、屋根を残したほかは床、天井、外壁などすべてを取り替える大掛かりなもので、NEDOの補助金(住宅・建築物高効率エネルギーシステム導入促進補助事業)を利用して昨年6月に解体後、7月に着工、11月に完成を見ています。
 では、その断熱改修の概要を見てみましょう。まず注目したいのが最新式の温水暖房システム。ヒートポンプで約40度に温めた温水を、各部屋のパネルヒーターと床下、玄関のたたき下まで密閉式で24時間循環させ、その輻射熱で家中をまんべんなく一定に暖める仕組みで、電力を無駄にしないよう設定温度より下がった分だけ暖め直すなど、随所に省エネの知恵が生かされています。
 一方、壁の断熱はグラスウールとフェノールフォーム、防水シートを重ねた外側を塩ビサイディングですっぽり覆う構造。肝心の開口部は3層ガラスの塩ビサッシ(一部複層ガラス)でがっちりガードした上、不織布製の断熱スクリーンを使って補強しており、こうした最新の断熱技術の粋が一体となって、部屋の暖かさを逃がさない高断熱高気密仕様を実現しているのです。

日本海の強風もシャットアウト

 「ヒーター表面は穏やかな暖かさなので、遊びにきた孫がうっかり触れても安心です。冬は普通のサッシのガラスが歪むほどだった強風も、塩ビサッシのお陰で気にならなくなりました。風の音も聞こえないし、結露もなくなりました」(鈴木寿子さん)
 また、塩ビサイディングは沿岸地域特有の塩害への備えという点でも効果を発揮しています。「このへんは新築でもたった1年で外壁面に潮風の筋跡が残るくらい塩害のひどい地域ですが、板壁とかタイルの壁を使用するのが普通で、私も塩ビサイディングを見たのは初めてでした。驚いたのは、薄いのに風や塩害を防げるということ。鮮やかな緑色も気に入っています」

●大切なのは「数字に表せない満足度」

五十嵐社長(左)と大滝取締役

 鈴木さん宅のリフォーム設計・建築を担当したのは、鶴岡市の(有)親和創建。エコ住宅の建設と断熱改修では県内の最先端に位置する工務店です。同社の五十嵐透社長の話。「住む人の身体に負担がなく、温度差を感じずにオールシーズンまるごと使える家を、できる限り小さなエネルギーで実現するのが当社のモットー。鈴木さん宅の温水暖房システムも本来40坪向けのものですが、家の断熱性能が高いので全館十分間に合います。空気を温めるエアコンと違って、輻射熱で建物全体を暖めるので、同じ室温20℃でも快適さの度合いがまるで違う」
 同社取締役の大滝典子さんによれば、「風呂やキッチンの給湯は値段の安い夜間電力を利用するエコキュートシステムを使っており、12月〜1月まで約1ヵ月間の電気代を調査した結果では温水暖房システムなどを含めても合計3万4000円。灯油の使用が殆ど電気にシフトしているので燃料代は大幅に減少している」とのことですが、大滝さんは「断熱改修のメリットはコストパフォーマンスだけではなく健康性や快適さも重要」と力説します。
 「鶴岡市と酒田市では不慮の事故による家庭内死亡原因の7〜8割が浴室での温度差によるヒートショック。断熱性能をきちんとすることでそれを防止できます。しかも、間仕切りが殆どなく、24時間家の暖かさが一定しているなど、断熱改修によって住む人の快適度と満足度は大きくアップします。電気代よりも実はそういう数字に表せない効果のほうが大切なんです」
 親和創建では、現在もエコ住宅の新築工事1件、断熱改修1件が進行中ですが、昨年12月に開催した鈴木さん宅の「断熱・オール電化リフォーム完成体感会」には、3日間で約120組もの見学者が訪れ、「こんなに広々しているのに、入ったとたんに暖かい。うちもやってみたい」と驚く声が多かったといいます。鶴岡市の今後の動きが楽しみです。

 
親和創建が手がけたエコ住宅   現在進行中の断熱改修現場