2010年9月 No.74
 

温暖化防止の切り札、塩ビサッシ用形材のJIS制定

性能・品質保証で普及加速に期待大。プラサッシ工業会にVECも協力

 塩ビサッシ用形材のJIS(日本工業規格)が制定されました(JIS A 5558 無可塑ポリ塩化ビニル製建具用形材/4月20日官報告示)。原案作成団体であるプラスチックサッシ工業会(塩ビサッシメーカーの団体)を中心に、塩ビ工業・環境協会(VEC)も協力して実現したもので、念願のJIS制定により、塩ビサッシの今後の普及に弾みがつくことが期待されます。

●原案提出から7ヶ月、異例の早期制定

高田技術委員長

 優れた断熱効果により、建築物・住宅の地球温暖化防止の切り札として期待を集める塩ビサッシ。今年からは「住宅エコポイント制度」の対象製品にも加えられ着実なニーズの高まりを見せる中、その性能、品質を保証するJISの制定は今後の普及促進にとって最大のポイント。
 プラスチックサッシ工業会では、(財)日本規格協会のJIS原案作成公募制度を利用して塩ビサッシ用形材のJIS化へ向け2009年1月にJIS原案作成委員会(委員長:清家剛東京大学大学院准教授)を立ち上げて作業に着手。3回の本委員会を経て、2009年7月に同協会に原案を提出しました。通常1年から1年半を要するJIS原案作成作業を7ヶ月で完了、概ね1年で制定にこぎつけたことは、「異例の早期制定」と業界の注目が集まっています。

●メーカーの利害関係を超え厳格な規格づくり

 JIS A 5558では、材料の性能、形材の寸法・外観・性能及びそれらの試験方法について規格化されています。さらに、工場端材及び建築廃材から得られる再生材料(リサイクル材料)を用いた形材について明記されていることが大きな特徴。本JISに適合する形材を用いることにより生産者は一定品質の塩ビサッシを安定的に供給でき、消費者、ユーザーも安心して良質な製品を採用できるメリットが期待されます。
 プラスチックサッシ工業会の高田和規技術委員長((株)エクセルシャノン開発技術本部主任)の話。
 「塩ビサッシにはもともと『JIS K 6785硬質ポリ塩化ビニル製窓枠用形材』というJISがあったが、2002年5月に廃止。以降塩ビサッシの普及について、JISがない為に国への働きかけが進まない状況となっていた。今回の新JIS制定によって、塩ビサッシの技術的な妥当性の向上と共に、認知度の向上が一層期待される。業界として、国土交通省の公共建築工事標準仕様書や公共建築改修工事標準仕様書への記載の要望提出など様々な取り組みを進めている。塩ビサッシ・内窓については、特記仕様書に記載されるなど波及効果も生まれている。
 原案作成に際しては、30年を超える塩ビサッシの日本市場における実績を踏まえて、カラー化等新技術への対応に加え、欧州規格(EN 12608)との差異も比較しつつ規格作成に取り組んだ。形材の反り率や耐候性能における変退色などは、廃止となったJIS K 6785より厳しい性能に見直した。原案作成委員会では、中立者、使用者、生産者の方々にご参画頂き、特に消費者の視点からの議論を活発に行うことができた。メーカー相互の利害関係を超えてより良いものを作ろうという業界の意志を反映することができたことで、ご参画頂いた方々や関係者の方々のご協力に大変感謝している。
 今回の制定で、省エネ改修(官庁、学校)のアイテムとしての内窓について特記仕様書が作成され、国交省・営繕管轄の発注工事の見積もり仕様となり、BL(ベターリビング)優良住宅部品認定基準の制定等塩ビサッシの普及促進の足かがりとなった」

●5年後の改訂に向け課題の検討を継続

 工業会では、継続課題である加熱伸縮性、耐候性能の評価方法などについて5年後の改訂時に向け検討中。また、「JIS A 4706サッシ及びJIS A 4702ドアセット(どちらも原案作成団体:(社)日本サッシ協会)に樹脂製建具用の主要材質のひとつとして追加引用掲載」の協力を依頼するなど、妥当性ある規格を提供していくため業界連携も視野に入れた活動強化も必要と考えられています。