2009年12月 No.71
 

中部地区の塩ビ管リサイクル拠点、
武田機工(株)の取り組み

「ハイレベルな品質管理体制」
「迅速な改善策の実施」などに高い評価

塩ビ管リサイクル専門の額田第3工場
 塩化ビニル管・継手協会が取り組む使用済み塩ビ管・継手のリサイクル事業は、全国に整備されたリサイクル拠点(リサイクル協力会社、中間受入場、契約中間処理会社)によって支えられています。今回ご紹介する武田機工(株)(武田一成社長/愛知県岡崎市欠町字金谷3番地1/TEL 0564-26-5130)は、使用済み塩ビ管の粉砕〜再生原料の製造までを担当する東海地区の契約中間処理会社のひとつ。今年5月には高度な品質管理体制が評価されて協会表彰(粉砕品販売優良会社表彰)を受けています。同社の額田第3工場(愛知県額田郡額田町)に事業の現状を取材しました。

●企業の責務としてリサイクルに着手

一貫処理設備

 武田機工は1952年の設立以降、配管・空調システムの設計施工や配管資材の加工・販売などをメインとしてきた「水と空気」のオールラウンドプレーヤー。堅実第一を社是として、環境への取り組みを経営の最重要課題と位置づける企業活動には、トヨタ自動車や地元の岡崎市、豊田市など得意先の有力企業、自治体からも厚い信頼が寄せられています。
 同社では、「長年塩ビ管の販売に携わってきた当社が、使用済み塩ビ管・継手のリサイクルに取り組み社会的な役割を果たすことは当然の責務」(武田社長)との考えで、10年以上も前からリサイクル事業の検討に着手。未経験分野への参入を危ぶむ周囲の声をよそに、新たに中間処理業の許可を取得する一方、住民説明会の開催などにより地域の理解を得た上で、リサイクル専門の額田第3工場を建設し、前処理から粉砕、洗浄・乾燥までを行う一貫処理設備 (処理能力4.6トン/日)を導入して、2006年4月から協会のリサイクル事業に参加しています。

●独自の一貫処理システム。問題に応じて設備増強も

協会表彰を受ける武田社長(5月29日)

 塩化ビニル管・継手協会の「粉砕品販売優良会社表彰」は、「品質管理体制の優れた企業を評価」し、今後のさらなる改善への励みとすることを目的としたもので、武田機工に対する表彰も「リサイクル材の受入から粉砕〜保管までの作業環境・設備・品質管理の体制がハイレベルであること」が第一の理由となっています。では、そのハイレベルな品質管理はどのうように行われているのでしょうか。
 処理工程の概要は、第1次洗浄 ⇒ 破砕 ⇒2次洗浄 ⇒ 篩(微粉の除去)⇒ 乾燥 ⇒ 金属除去 ⇒ 包装(500kg詰め)という流れで、粉砕原料は風力で自動的にライン内を移送される仕組み。原料の乾燥もこの風力を利用して行われます。
 このシステムは同社が自ら企画、設計して機械メーカーに製作を依頼したものですが、前処理の1次洗浄を行う装置は自動車の洗浄機をヒントに自社製作したもので、これまでの製造技術を生かした同社ならではのアイデア(下の写真参照)。また、金属除去に使われる探知機は、金属片の混入トラブルを起こした経験から後に追加された設備で、こうした迅速な改善策の実施も表彰の理由となってます。

加藤四郎専務

 加藤四郎専務によれば、「我々は問題に応じて設備を増強し様々な手を打ってきた。接合部分に使われているゴムなど機械で取りきれない異物についても、目視で徹底的に取り除く。これも以前にゴムの混入でユーザーに迷惑を掛けたことに対応したものだ」とのことで、同社が品質管理のためにいかに多くの手間をかけているかが分かります。同社のリサイクル原料は、品質に応じて、汚れが少ない1A、汚れや変色がある1Bなど6ランクに区分されていますが、ユーザーからは「1Bでも十分1Aで通用する」との高い評価が寄せられています。
 なお、使用済み塩ビ管の回収範囲は岡崎、豊田、安城3市を中心とする西三河地区(一部知多郡、田原市を含む)。水道工事店、土木業者からの入荷がメインで、回収に際しては同社が製作した回収用のパレットを貸与し、いっぱいになった時点で引き取りにいく方法が取られています。

●社員教育に努力。改善策の提案も増加

場内に掲示された受入基準

 武田機工では、使用済み管の受け入れ基準やリサイクルの作業手順などを工場内の見やすい場所に掲示して作業の誤りを防止するなど社員教育にも力を入れています。逆に、社員から事業全般について各種の提案が出されることもあります。最近は「自分たちがやって効果があったことを改善策として出してくることが増えてきている」とのことで、塩ビのリサイクルに関するものとしては、ゴムを除去するための切断方法などが提案され、設備の改善に役立てられています。こうした意見も提案書という形で場内に掲示され、社員の経営参画意識を高める要因となっているようです。

 今後の課題としては、現在の不況で原料の入荷が滞っていることへの対応などのほか、粉砕時に出る微粉のリサイクルも検討に上げられています。この微粉には微量の砂が混入しているため現在はリサイクルされていませんが、同社では「そのままパウダー状に加工するなど、分別の手間とコストを省いた技術を研究して自前の再生品開発に取り組みたい」としています。

     
カゴごと洗浄機に投入   1次洗浄   破砕工程   リサイクル原料の完成

◆ 手間が掛かっても正直にやることが大切 (武田社長のコメント)

 配管で塩ビ管はとても利用しやすくサビや腐食もしない低コストな商品だが、再利用が難しく、使用済み塩ビ管は長い間産業廃棄物として埋立処理されてきた。こうした状況を見るにつけ、私は常々、水流、空調を軸とする各種設備の関連業務に携わり、塩ビ管・継手の販売も行ってきた弊社にとって、使用済み塩ビ管のリサイクルは当然の責務だと考えてきた。周囲には「そう簡単にできるものではない」と忠告してくれる声もあったが、売りっぱなしにはできない、誰かがやらなければならないと考えて、あえて未経験の分野に足を踏み入れる決意をした。
 今回協会から表彰されたことはたいへん喜ばしく感じている。塩ビ管のリサイクルには多くのコストと手間暇がかかるが、正直にやることが何より大切だ。弊社は既にISO14000も取っているし、コンプライアンスも守らなければならない。大得意先のトヨタ自動車からもそういう指導を受けている。その結果が今回の表彰につながったのだと思う。販売店の責任というだけでなく、行政やユーザー企業とのつながりと信頼を深めるためにもリサイクルは大切な取り組みだ。