2008年9月 No.66
 

積水ハウス、大和ハウス工業の塩ビ管リサイクル事業

塩化ビニル管・継手協会のシステムを活用して「パイプtoパイプ」のリサイクル

 住宅メーカーによる使用済み塩ビ管のマテリアルリサイクル事業が動き出しています。塩化ビニル管・継手協会との連携で取り組みを進める積水ハウス(株)の関東工場資源循環センター(茨城県古河市北利根2/TEL 0280−92−8300)と、大和ハウス工業(株)の竜ヶ崎工場(茨城県龍ヶ崎市板橋町393−1/TEL 0297−60−1208)、さらに中間処理を担当する(有)三豊のリサイクルセンター(茨城県稲敷市下太田4445/TEL 0297−60−6221)を訪れ、現場の状況を取材しました。

●ゼロエミッョンに取り組む住宅業界

 地球温暖化の防止と循環型社会の実現へ向けて産業界の取り組みが加速する中、住宅業界でも、建物の省エネ性の向上、建設廃棄物のリサイクルなど、さまざまな対策が進められています。
 特に、産業廃棄物の約2割を占め、不法投棄の問題も指摘される建設廃棄物の有効利用は業界喫緊の課題。このため住宅メーカーの中には、建設リサイクル法に基づいてリサイクルが進められている特定建設廃棄物(木材、コンクリートなど)以外にも、塩ビ管、石膏ボードなどを含めた「100%リサイクル」によりゼロエミッョンを実現しようという動きがあいついでいます。
 一方、塩ビ管については塩化ビニル管・継手協会(以下、協会)を中核としたリサイクルシステムが既に平成10年から稼動しており、全国各地に整備されたリサイクル協力会社、中間受入場、中間処理会社のネットワークにより、パイプtoパイプのマテリアルリサイクルが順調に進行中。リサイクル率もこの10年で60%(平成19年度)に達しています。
 建設廃棄物の有効利用を進めたい住宅メーカーと、リサイクルシステムの拡充に取り組む協会。双方の思いが一致したことで、新たな塩ビ管リサイクルの試みがスタートすることとなりました。

●既に約40トンの塩ビ管が再生原料に

粉砕された使用済み塩ビ管
(有)三豊 成田隆二氏
 積水ハウスの関東工場資源循環センターと大和ハウス工業の竜ヶ崎工場は協会のシステムを利用して塩ビ管のリサイクルに取り組んでいる。作業の流れは、両社がそれぞれの施工現場から使用済み塩ビ管を分別、回収⇒協会の契約中間処理会社・三豊のリサイクルセンターで粉砕、原料化⇒これを協会の会員メーカーが引き取ってリサイクル塩ビ管に再生、というもので、取組がスタートした昨年秋から既に約20トンの塩ビ管がリサイクルされています。
 中間処理を担当する三豊は、もともとは給排水工事を中心とする設備業者で、施工現場から出る使用済み塩ビ管を何とか有効利用したいという思いから協会のリサイクル事業に共鳴、自ら中間処理業の許可を取得するとともに、リサイクルセンターを新設(処理能力100トン/月)して2005年から協会の事業に参加しています。
 同社の成田隆二マネージャーは、住宅メーカーとの取り組みについて、「本格的な集荷は今年(2008年)に入ってからだが、積水ハウス、大和ハウス工業ともに分別がきっちりできていて処理上の問題は殆どない。当社としても『廃棄物処理ではなく、原料、商品を作っているのだ』ということを徹底して社員に教育している。当センターは塩ビ管の再生原料を作るためにできたような施設であり、今後もお互いに協力しあって、より質のいい再生品を作っていきたい」と語っています。
 また、「リサイクルを進めるには自助努力が大切」との考えから、塩ビ管の粗粉砕にパワーショベルを利用したり、セメントミキサーを洗浄機に利用したりといったコスト低減の独創的工夫を取り入れていることも、同社の特長といえます。


 積水ハウス・関東工場 資源循環センターの取り組み

積水ハウス・関東工場
 2002年5月に全国6工場すべてでゼロエミッションを達成した積水ハウス。その後も、新築施工現場(2005年7月)、アフターサービス部門のカスタマーズセンター(2006年3月)と取り組みを進め、2007年10月には業界で初めてリフォーム工事現場のゼロエミッションも達成しています。
 各現場から集められた建設廃棄物は、全国7ヵ所に設置された資源循環センターを拠点にリサイクルが進められていますが、関東工場の資源循環センターは、全国7センターの中でも最大規模の施設で、担当エリアの1都6県(東京、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、山梨)から回収される廃棄物の量は1ヶ月平均約1500トン。あらかじめ現場26分別(+リフォームは解体物22分類)された廃棄物は、工場内でさらに60品目にまで細分されて、それぞれのリサイクルルートに乗せられます。
 塩ビ管については当初、セメント燃料化などによるサーマルリサイクルが行われていましたが、現場分別の精度が上がるのに伴いリサイクルの質の向上が課題として浮上。マテリアルリサイクルの検討をはじめたちょうどその時期に、「タイミングよく協会からの提案があった」(関東工場の鈴木茂雄工場長付部長)といいます。
 「マテリアルリサイクルを進める上では現場の施工業者の協力が不可欠。分別が正確に短時間でできることで生産性が上がる。協会との提携は去年(2007年)の7月からだが、現場の協力によりここ半年でようやく協会の受入規格に沿った分別がきちんとできるようになってきた」
 同センターに回収される使用済み塩ビ管はこの7月末までに計6回、三豊が回収し、リサイクルされています。また、センターには自前の粉砕機も備えられており、肉厚のVP管以外はセンターで粉砕処理した後、三豊に引き渡されることになっています。

●安心で使いやすい協会のリサイクルシステム

センター内での分別作業
削減のための調査を実施
 

協会との連携について同センターでは、「塩ビ管は基本的に汚れがひどくない限りリサイクルしやすい建材。選別が重要になるが、協会のシステムを利用すれば、三豊での中間処理を経てリサイクル塩ビ管に再生されるまで、システムができているので安心して任せることができる。トレーサビリティーもしっかりしており、リスクの低減という点でも大きな意味がある。我々にとっては安心で使いやすいシステムだと思っている」と評価しています(同センター施設管理部の田中晋主任)。
 近年の原油価格高騰で廃プラスチックの有価での取引が増えていることも、塩ビ管リサイクルに取り組むメリットのひとつ。また、積水ハウスでは2007年から中古住宅再生流通事業「エバーループ」を本格展開しており、この事業が拡大すれば、リフォーム部門のリサイクルが塩ビ管も含めてさらに拡大することになります。
 このほか、同センターでは塩ビ雨どいのリサイクルや塩ビ壁紙の猫砂への再利用にも取り組んでおり、「こうした対策を総合的に進めることでさらに社会への貢献を果たす」としています。

積水ハウスの関係者の皆さん

 大和ハウス工業・竜ヶ崎工場の取り組み

竜ヶ崎工場の建設廃棄物回収棟
 大和ハウス工業は、2002年から着実にゼロエミッション活動を推進している。2003年1月に13工場すべてで、また2006年3月には全国90事業所が管轄する新築施工現場でのゼロエミッョンを達成し、各現場から排出された建設廃棄物のリサイクルを積極的に推進しています。
 その拠点となるのが全国13の工場。その仕組みは、地域の新築現場で分別した廃棄物を各工場に回収し、選別・圧縮処理などを行った後、それぞれが培ってきたルートを活用して100%リサイクルするというもので、同社ではこのリサイクルシステムを「建設副産物工場デポ化」と名づけています。また、リフォーム系の廃棄物についても90事業所がそれぞれの状況に合わせて独自にリサイクルを進めており、大和ハウス工業のリサイクル活動は、地域の自主性に委ねる要素が多い点に特徴があると言えそうです。
 竜ヶ崎工場の回収エリアは関東地区の1都4県(東京、茨城、千葉、神奈川、山梨)で、回収量は1カ月平均約500トン。現場分別の品目数は各工場で異なりますが、同工場の場合、基本的には19分別で、工場内でさらに56品目にまで分別されます。塩ビ管は「固形(硬質)プラスチック廃棄物」として塩ビ雨どいなどと一緒に分別されていますが、最近では現場の理解も進み、塩ビ管だけでまとめられるケースが多くなってきたとのことです。

●廃プラスチックは「宝の山」

 
塩ビ系廃棄物をまとめた回収袋
 
分別された使用済み塩ビ管
 竜ヶ崎工場でも、当初は塩ビ管を他の廃プラスチックと一緒にしてセメント燃料などのサーマルリサイクルに回していましたが、その後、リサイクルの質の向上を追及する中で、パイプtoパイプのマテリアルリサイクルにたどりつくこととなりました。この間の経緯について同工場安全管理課の安達典明課長は、「当社では2003年ごろから各工場で試験的に塩ビ管のリサイクルについて検討を行ってきたが、ここ1、2年ほどの間に現場分別が定着して塩ビ管だけ分けて出てくるようになった。これはルートを見つければマテリアルリサイクルの道が開けるかもしれないと判断して、情報収集を進めるうちに協会のリサイクル事業と出会うことができた」と説明しています。
 協会との契約は去年(2007年)の11月。実際に出荷が始まったのは今年3月からで、この7月末までに計4回、使用済み塩ビ管がリサイクルされています。三豊との協力関係も順調です。
 「処理費を払ってリサイクルしていた当時に比べて、いくらかでも有価で三豊に引き取ってもらえることでコスト的にも改善した。廃プラスチックは宝の山であり、手を加えるほど宝を見つけられるが、どれだけ手を加えるかコストとのバランスが問題になる。その点、塩ビ管はすぐに見分けることができるため、現場にもアピールしやすいという利点がある。この取り組みを始めてよかったと思う」(工場環境推進部 太田日出廣部長)。
 同工場では今後、使用済みの雨どいなど他の塩ビ建材についても、三豊と協力してリサイクルを進めていきたいとしています。

竜ヶ崎工場の関係者の皆さん