2008年6月 No.65
 

NPO「元気ネット」のメンバーが
塩ビ管リサイクルの現場を見学

環境省のリサイクル担当官も参加。
さいたま市・大水産業(株)の工場で

大水産業(株)本社
 さる3月26日、NPO法人「持続可能な社会をつくる元気ネット」(通称「元気ネット」、崎田裕子理事長)のメンバーと環境省のリサイクル担当官らが、埼玉県さいたま市の大水産業(株)を訪れ、塩ビ管リサイクルの状況を見学。使用済み塩ビ管が真新しいリサイクル管に生まれ変わるまでを熱心に見て回るなどして、塩ビ業界の取り組みに理解を深めました。

●リサイクル率60%の優等生

 塩化ビニル管・継手協会では、使用済み塩ビ管・継手の有効利用促進をめざして、平成10年度から“パイプからパイプへ”のマテリアルリサイクルに取り組んでいます。
  その概要は、各地の工事現場や建設現場から排出される使用済み塩ビ管・継手を、排出者が前処理を行ったのち全国各県にある最寄の受入拠点に持ち込み、リサイクル協力会社(今回の大水産業もそのひとつ)が再生原料に加工し、会員会社やリサイクル協力会社でリサイクル管(三層管、発泡三層管、REP管)を製造するというもので、平成15年度からは、排出者が前処理(汚れ落しや異物除去)する手間を省くために、中間処理拠点(契約中間処理会社)も新設。この結果、現在では年間22,000トン近くの使用済み塩ビ管が回収され、リサイクル率も平成11年度の40%から19年度には約60%にまで向上しました。
  また、こうしたリサイクル実績と製品そのものの性能のよさから、グリーン購入法(「国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律」)の特定調達品目指定、環境JIS規格の制定、エコマーク認定基準の制定など、国や公的機関による認定・採用があいついでおり、文字どおり「リサイクルの優等生」として、高い評価を集めています。

●回収面の問題などで質疑応答

  今回の見学会は、かねて塩ビ管のリサイクルに関心を示してきた「元気ネット」側から、実際の作業の様子を現場で確認したいという申し出を受けて実現したもので、当日は鬼沢良子事務局長と同会メンバーの中岡悦子(環境カウンセラー)、土屋晴子(ジャーナリスト)、舘野由利(環境カウンセラー・調理師)の4氏が参加したほか、環境省からも廃棄物・リサイクル対策部企画課および産業廃棄物課の担当官3名が参加。一方、塩ビ業界からは塩ビ工業・環境協会(VEC)の関成孝専務理事と塩化ビニル管・継手協会の石崎光一技術・環境部長らが同行して、案内に当たりました。

佐藤社長の説明を聞く見学者一行

  一行はまず、さいたま市岩槻区にある大水産業本社を訪れ、同社の佐藤志郎社長から事業の現状やリサイクル工程などについて概要の説明を受けた後、隣接した浦和工場で、使用済み塩ビ管の回収、分別の状況などを見学。
  大水産業のリサイクル管(Rスーパー)は、現在、埼玉、神奈川、山梨、新潟、岐阜各県のおよそ100市町村で公共下水道の本管および取り付け管などに採用されており、同社では年間5000トン処理(現在は約4000トン)を目標に回収量の増加などに力を注いでいますが、見学後の質疑応答でも回収面の問題に質問が集中。これに対して大水産業からは、「リサイクル事業は何より原料が集まることが第一。品質のいい使用済みパイプを集めるのは大変だが、状況は少しずつ改善されつつあり、関東近辺からの回収が増えてきている」「リサイクルの輪は一人だけでは作れない。情報を提供してくれる販売店や、製品を採用してくれる自治体の協力が不可欠」などの説明が示されました。


●時代のニーズにマッチした事業(参加者の感想)

 一行は続いて、茨城県石岡市の八郷工場に移動して、粉砕された原料が再び塩ビ管に生まれ変わるまでを見学。参加者はいずれも工場関係者の説明を聞きながら、真剣な表情で一連の工程に見入っていましたが、見学後、「元気ネット」のメンバーからは次のような感想が寄せられ、今回の体験が塩ビリサイクルの一端を理解する上で貴重な機会となったことをうかがわせました。
・リサイクル材が集まれば、5000トン/年まで可能ということなので、回収エリアの拡大をもっと広げて欲しい。
・公共事業をはじめ、行政の塩ビリサイクルへの取り組み強化を図る施策が必要だ。
・良質のリサイクル品を作るには汚れのない状態で分別をきちっと行うことが前提となることが再確認された。
・大水産業に持ち込まれた使用済み塩ビ管のうち99%がリサイクルされているということに、驚きもし尊敬もした。時代のニーズにマッチした事業展開をされていることがよく分かった。
・現場を見ることで感動と気付きがあった。もっとこのシステムが広がればいいと思う。

 
浦和工場で回収の状況などを見学
 
専用のカゴパレットに分別された使用済み塩ビ管
 
八郷工場で真新しいリサイクル管に生まれ変わる
 
あとは出荷を待つばかり

 

◆「持続可能な社会をつくる元気ネット」

 元富士常葉大学教授の松田美夜子さん(現原子力委員会委員)が1996年に立ち上げた「元気なごみ仲間の会」を前身とする特定非営利活動法人。設立は2003年7月。持続可能な社会実現への寄与を目的に、環境問題や廃棄物問題に取り組む市民・事業者・行政の連帯をめざして、リサイクルをはじめとする循環型地域づくりに携わる全国各地の取組みの情報提供とネットワークの構築、 環境セミナーの開催、元気大賞の選定など幅広い活動を展開している。事務局(本部)は〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-12-7-807
<http://www.genki-net.jp>