2007年3月 No.60
 

塩ビ被覆電線を官庁施設向けの
建設資材として再評価

国交省が「建築設備設計基準」を改定。
認められた、塩ビ被覆電線の多彩な特長やエコ対応

 国土交通省の「建築設備設計基準」が、昨年(平成18年)9月、4年ぶりに改定されました。官庁施設の建築資材として塩ビ被覆電線(以下塩ビ電線)の再評価に つながる内容で、塩ビ電線の持つ多彩な特長や、リサイクル・エコ対応の取り組みなどが改めて認められた格好となっています。

●「非塩ビ電線」の原則使用義務を見直し

社会インフラを支える塩ビ電線
  「建築設備設計基準」は、官庁施設の建築設備における標準的な設計手法などを示したもので(監修=国土交通省大臣官房官庁営繕部設備・環境課)、昭和50年に制定されて以来、技術の進歩にあわせて4年ごとに改定されています。
 これまでの平成14年版「建築設備設計基準」では、電力設備、通信・情報設備、防災設備など7つの分野で、非塩ビ電線(被覆材に難燃性架橋ポリエチレンなどを用いた電線)の使用が原則として義務づけられていたため、結果として塩ビ電線の使用を制限する内容となっていました。これに対して、18年版の基準ではこうした記述が姿を消し、一部の分野で、基準ではなく「設計資料」として非塩ビ電線の記載が残されている程度に改められたのです。
 塩ビ電線は、加工しやすく耐候性、電気絶縁性、難燃性に優れるなど建設・建築材として多彩な特長を備えています。また、使用済み製品のリサイクルも進んでいる上、近年はEUのRoHS規制(電気・電子機器に対する特定有害物質の使用規制)に対応した非鉛化などのエコ対応も進められています。今回の「建築設備設計基準」の改定は、こうした塩ビ電線の特長や製品改良の取り組みが改めて認められた結果といえるものです。
 国土交通省(大臣官房官庁営繕部設備・環境課の岩崎明平電気基準係長)は、「公平に見て塩ビ電線に様々な優れた点があることは確かであり、官庁施設の設備として非塩ビ電線を使うか塩ビ電線を使うかは、その場その場で設計者の判断に委ねるのが望ましい」と改定の主旨を説明しています。

●広がる塩ビ再評価の動き
  建設・建築分野での塩ビに対する評価の高まりは塩ビ電線の例だけに止まりません。例えば、平成17年4月に改定された東京都の「グリーン購入ガイド」、また18年2月に公表された国土交通省「グリーン庁舎基準及び同解説?平成17年版」などでも塩ビの使用を制限する項目は影を潜めています。
  こうした見直しの背景には、(1)これまで塩ビと関連付けて論じられることの多かったダイオキシンや環境ホルモンなどの問題に関して科学的な知見の蓄積が進んだこと(「ダイオキシン問題は焼却物ではなく焼却条件の問題」「塩ビに使う可塑剤には環境ホルモン性はない」などが明らかになってきたこと)、(2)他のプラスチックに比べて省資源・省エネルギー性に優れ地球温暖化防止にも大きな効果を発揮すること、(3)LCA(ライフ・サイクル・アセスメント)の面でも高い環境性能を備えていること、などが影響しているもの考えられます。
  今回の「建築設備設計基準」改定を契機に、中央行政部門に止まらず、都道府県・市町村などの自治体部門や建築・建設関連企業サイドなどでも、塩ビ電線や塩ビ建材の利用が促進されることが期待されます。