2007年3月 No.60
 

PVCニュース発刊60号を記念して

−塩化ビニル業界へさらに期待すること−

内閣府原子力委員会委員(前富士常葉大学教授)
NPO法人「持続可能な元気ネット」顧問
松田 美夜子

 創刊から15年、60号を迎えた「PVCニュース」。循環型社会を築くという同じ気持ちで、共に歩いて来たNPOの私たちは今、心からお祝い申し上げます。
  前号からカラー印刷になり、さらに見やすくなった。上品な色使いで、目に優しい仕上がりである。紙質は再生紙100%、インクは環境に配慮した大豆インク。編集スタッフは環境マインドに優れた人たちだな、と共感を覚える。私たち一般の読者は冊子の装丁の印象から、この情報誌の「信頼性」を受け止める。センスの良い色合いも広報としてとても大切な要素である。
  私は発刊以来の読者である。大学にいた7年間はよく授業の中でPVCニュースの「有識者インタビュー」
を教材に使っていた。プラスチックという化学素材を、暮らしの中でどのように活用していけばいいのか、基本となる考え方を、第一線で活躍する有識者のインタビューを通して、学生に身に付けさせていく上で、非常に役に立つ教材なのである。親しみやすい記事内容は、毎回新鮮で、塩ビ業界の製品開発の技術はここま
で進歩しているのか、と目を開かされる。
  「PVCニュース」創刊からの15年を振り返ると、感慨深いものがある。最も大変な時期は、1998年のマスコミによる「塩ビ・バッシング」であろう。清掃工場のダイオキシン事件の発生と共に、その原因のひとつに塩ビが槍玉に上げられた。その頃、環境ホルモンという物質の存在も明らかにされ、化学物質と人との関係についても、多くの議論が交わされた。その中心になったのも塩ビである。塩ビは極端な誤解を受け、苦境に立った。そのような極端な塩ビ・バッシングの中で、塩ビ業界の方々は、「PVCニュース」を中心に、社会との間で丁寧な対応を続け、公平な情報を率直に提供していくことで、塩ビへの信頼性を取り戻したのである。
 私は、この1月から、原子力施設等から出てくる廃棄物処分に関わる政策の推進役を任じられた。これらの廃棄物は原子力施設等から出てくるというだけで、これまでの塩ビよりさらに厳しいバッシングを受けてきた。塩ビ業界が、社会ときちんと付き合ってきた姿勢に励まされながら、原子力施設等から出てくる廃棄
物の施策に携わって行きたいと思っている。
 今、塩ビ業界は、社会の行き過ぎたバッシングの経験を基軸に、太い幹を持つ立派な樹木に成長したよう
に見える。見事によみがえった塩ビ業界であるが、一つお願いがある。塩ビのリサイクル製品の「グリーン購入」の実績を上げて頂きたい。グリーン購入法に基づいて公共工事に塩ビのリサイクル製品を活用する「グリーン購入」の運動を私たちNPOはさらに推進していきたいと思っている。リサイクル製品を作っても売れない状況にある現在、リサイクル製品を率先して使用していく社会にするには、まず自治体がお手本を示すことが大切だと思うからである。そのために業界もさらに力をつくしていただきたい。
 循環型社会の構築は、小さいが確実な一歩から始まる。私たちの一歩が、次の塩ビ業界の発展の一歩となるよう、共に力を合わせていきたいと、心から願っている。