2004年9月 No.50
 

 神戸製鋼所、日本製鋼所・VEC共同開発の脱塩素技術を採用

  加古川製鉄所の廃プラ高炉原料化システムに。塩ビ含有プラの高炉利用に大きなインパクト

    (株)神戸製鋼所は、(株)日本製鋼所と塩ビ工業・環境協会(VEC)が共同開発した廃プラスチック脱塩素技術を同社の高炉原料化システムに採用、今年4月から加古川製鉄所(兵庫県加古川市)において本格稼働に入りました。塩ビなどの廃プラから塩素を取り除きコークスに替わる高炉還元剤として再利用する資源循環の取り組みが、この新技術で大きな進展を見せようとしています。  

 

再商品化率75%以上を実現

  採用された脱塩素技術は、日本製鋼所とVECが2002年度の事業として共同開発したもので、塩ビなどの塩素含有廃プラスチックを加熱、溶融して効率的に塩素を取り除くことができるため、プラスチックのリサイクルを促進する上で強力な起爆剤となることが期待されています。
 一方、神戸製鋼所では、同社が重点経営項目とする環境保全への取り組みの一環として、2000年4月から、容器包装リサイクル法(容リ法)にもとづき自治体により回収されたペットボトル以外の「その他プラスチック」の高炉原料化に着手。加古川製鉄所において年間およそ 1万トンの処理を行っていますが、高炉投入前に比重選別された塩化ビニルなどの塩素含有廃プラスチックは、利用されないまま処分されていました。
 このため、同社の廃プラスチック再商品化率(リサイクル率)は60%程度にとどまっていましたが、今年度から「高炉利用については再商品化率75%以上」とする容リ法のガイドラインが改定されたこともあって、未利用廃プラスチックのリサイクルが再商品化率向上への課題となっていました。
 神戸製鋼所の今回の取り組みは、日本製鋼所・VECが共同開発した脱塩素技術を導入することにより、同社が受け入れる廃プラスチックのほぼ全量を高炉還元剤としてリサイクルしようというもので、投資金額は約10億円。本年4月の本格稼働以降、同社の再商品化率は75%以上が見込まれる状況になっています。

 

二軸スクリュー押出方式で効率的に脱塩素

  神戸製鋼所の廃プラスチック再生処理のプロセスは次のとおり。
  1. まず原料となる廃プラスチックを破砕、粒度調整した後、比重選別装置でポリエチレン、ポリプロピレンなどの軽いプラスチック(比重1.0未満)と、塩ビ、塩化ビニリデンなどの重いプラスチック(比重1.0以上)に分離します。重いプラスチックの中にはペット製のタマゴパック等包装材も含まれています。塩ビ比率は重量比で10%程度。
  2. 軽いプラスチックはそのまま溶融・造粒して高炉利用されますが、塩ビを含む重いプラスチックは、新たに導入された脱塩素設備により、加熱・溶融→脱塩素処理→造粒という順序で高炉還元剤に再商品化されます(別掲フロー図参照)。
  3. 脱塩素設備の能力は最大800?/h。一般的なシステムと異なり、溶融装置と脱塩素装置を分離しているのが大きな特徴で、いずれの装置にも日本製鋼所が開発した二軸スクリュー押出方式という技術を応用することにより効率的な処理を可能にしています。
      特に、脱塩素装置では大きなスクリューで原料を練り混ぜ、プラスチックの表面を常に更新することで、高性能な脱塩素処理が行われます。
  4. 脱塩素されたプラスチックは、ペレットにカットされた後、最後に規定の粒度に調整されて、高炉還元剤に生まれ変わります。

 

 

回収塩酸の再利用でVECと共同研究

  一方、脱塩素設備から発生した排ガスは、1,200℃の高温で完全燃焼した後、ダイオキシンの再合成を防ぐため90℃まで急冷し、吸収除害塔で濃度18%の塩酸として精製・回収されます。
 回収塩酸は製鉄所内の鋼板酸洗ラインで再利用する計画で、現在、神戸製鋼所とVECの間で塩酸の精製・利用技術に関する共同研究が進められています(2005年3月終了予定)。
 この技術が完成すれば、同社が鋼板酸洗に補給する塩酸の約半分を賄うことが可能となり、今は容リ法上の再商品化率にはカウントされないものの、廃プラスチックのほぼ全量有効利用が達成されることとなります。
 「今回の脱塩素設備導入により塩ビなどの有効利用が可能になったことで、当社の廃プラスチックリサイクルは大幅に促進された。また、鉄鋼製造におけるコスト削減のほか、二酸化炭素の排出抑制にも一層の効果が期待できる。回収塩酸については、一度酸洗用に利用した後、再々利用することも可能で、この点についてはVECとの共同研究の結果を待ちたい。当社としては、今後も環境調和型企業として環境保全への取り組みを強化し、地域社会への貢献を行っていく方針だ」(加古川製鉄所環境エネルギー部・山本晃リサイクル推進室長の話)
 現在同社が処理している廃プラスチックは兵庫県内を中心に集められたものですが、大阪府など近隣府県のものを含め近い将来は年間3万5,000トンまで処理量を引き上げる計画。
 VECでは、「我々が開発した脱塩素技術が高炉原料化システムの中核技術として採用されたことは初めての成果と言える。この技術がこういう形で世の中に役立ち、広がっていけば、塩ビのリサイクル、引いては循環型社会の進展に大きなインパクトを与えることになる」として、神戸製鋼所の今後の事業展開に期待を寄せています。