2003年12月 No.47
 
JPEC講演会レポート/法政大学・岡部雅史教授

 プラスチック報道の変化から、
 今後のイメージづくりや製品開発のあり方を提言

  

    9月17日、東京・港区の虎ノ門パストラルでJPEC講演会が開催され、法政大学経済学部の岡部雅史教授が「バブル期以降の新聞各紙の報道にみる社会のプラスチックに対する意識の変化・環境問題と安全性を中心として」をテーマに講演を行いました。  

 

■ポジティブイメージ形成が必須の課題

  今回の岡部教授の講演は、新聞報道のキーワード調査から「プラスチックに関する社会の関心の変遷」を分析した上で、これからのプラスチックのイメージづくりと製品開発の方向などについて具体的な提言を示したもの。
 講演の中で岡部教授は、まず1985年〜2002年までの17年間に、朝日新聞・日本経済新聞両紙上に登場したプラスチック関連キーワードの出現回数調査結果について概要を紹介。
 「〈プラスチック〉という言葉はバブル期の右肩上がりでポジティブな時にはそれほどではないが、バブルが弾けた1996年頃から廃棄物問題やダイオキシン問題に関連して急増し、朝日新聞では容器包装リサイクル法が姿を見せ始める1997年以降、朝夕刊あわせて年間1,500回から1,900回(1日平均5〜6回)に達する」
 「〈廃プラスチック〉〈プラスチックのリサイクル〉〈塩ビ・ビニール〉などの言葉も同様の傾向だが、〈塩ビ・ビニール〉は特に1990年以降ダイオキシンや環境ホルモンとの絡みで増えてくる。最近ではダイオキシンや環境ホルモンの報道が減少して冷静さを取り戻しているにもかかわらず、一部には未だに塩ビを問題視する傾向が残っている」
 などと述べた上で、「新聞、特に一般紙ではネガティブなイメージの問題ほどプラスチック関連の記事が多くなり、それに伴ってプラスチックに対する社会の意識も変化する」として、「プラスチックのポジティブなイメージの形成」が業界にとって必須の課題であることを指摘しました。

 

■所有する喜びがある製品の開発

 次また岡部教授は、具体的な提言に話を進める前段として、皮革、木材、金属、プラスチックなど「人類の文明発達に寄与した各種素材」の競合と住み分けの問題に言及。
 「大量生産品で安っぽい物を示す言葉に〈プラスチッキー〉という和製英語があるように、プラスチックは質感、触感を大切にする分野には向かないと見られているが、新しい素材が出てきたときは必ず古い素材との淘汰、住み分けが行われることは歴史が示すところ。今はプラスチックとクラシカルな素材との競合、淘汰が進行している時期であり、プラスチックを使ったほうがよい分野とそうでない分野がこれからはっきりする」
 と述べて、得意分野の育成とポジティブイメージ形成のために「プラスチックが早急に取るべき方策」と「これからのプラスチックに要求される特性」について、次のような提言を行いました。

 プラスチックが早急に取るべき方策

  1. 消費者教育
    プラスチックの特性を理解したプラスチック・ファンの育成
  2. ネガティブイメージの払拭
    メディアを利用したPR、広告業などのイメージ産業との協力
  3. 誤った悪意ある報道に対する徹底した対応
    特に環境、健康関連のネガティブイメージ

 これからのプラスチックに要求される特性

  1. 精密感、質感、触感の向上による高級感の演出
    プラスチックにしかできない製品やデザインの開発
  2. 製品、素材にまつわるレジェンド(伝説)の形成
    ほかの素材では不可能な過酷な条件に耐えた製品、などの分かりやすい伝説
  3. 耐久消費材としての「100年使える」プラスチック製品の開発
    大量生産大量廃棄を克服するグリーンプロダクトの究極
  4. 消費者のプラスチック誤処理による風評被害の防止
    プラスチック製品へのICチップ埋め込みなどによる廃棄物段階までの管理

 講演の最後に岡部教授は、「これからのプラスチック製品開発の決め手は、所有する喜びを感じられる製品であること。所有する喜びがあれば、消費者は多少高価でも迷わずプラスチックを選ぶようになる」と述べて、業界の奮起を促しました。

 

 

[プロフィール]岡部雅史 (おかべ まさし)

法政大学経済学部環境生物科学研究室 教授。
1960年生。北海道大学大学院環境医学講座修士課程卒業。89年〜92年オランダ、ハンガリーに政府交換留学生として研究留学。翌年北海道大学大学院環境医学講座博士課程を卒業し、博士号(環境科学)を取得。98年東京慈恵会医科大学環境保健医学講座講師。2001年法政大学経済学部助教授。翌年同大学教授、現職。専門は、生化学、毒性学、重金属中毒学。趣味は、オーディオ、つり、オートバイ、モータースポーツ。