2003年3月 No.44
 
解体大手(株)クワバラ・パンぷキンに見る「分ければ資源」の実践例

徹底した分別解体で建設廃棄物を再資源化。塩ビ建材リサイクルにも強い意欲

 

 建設廃棄物の分別、再資源化を義務づける建設リサイクル法の施行で、解体工事の重要性が高まっています。昭和23年創業の建築解体大手(株)クワバラ・パンぷキン(埼玉県さいたま市本町西4−9−4/TEL. 048−852−7496)に、「分ければ資源」の実践例を取材しました。

 

■ 解体廃棄物は「戦後最大の忘れ物」

 
 本誌ではこれまで中間処理の分野を中心に建材リサイクルの現状を見てきましたが、リサイクルに関してしばしば用いられる「分ければ資源」という言葉どおり、解体現場での分別徹底こそ建設リサイクルを進めるための「要」の部分といえます。
 クワバラ・パンぷキンは、長年、こうした環境重視の建設廃棄物再資源化に率先して取り組んできた首都圏の代表的な解体業者です。
 同社の社長で(社)全国解体工事団体連合会(以下、全解工連)の専務理事を務める桑原一男氏によれば、「解体工事は元々、リユース、リサイクルのための技術だった」といいます。
 「かつては、“かじや”という道具を使って仕事をする専門の職人が、“古木屋”と呼ばれる旦那から坪いくらで解体を請け負っていた。古木屋は昭和50年代頃まで、梁、柱、垂木、板物、合掌、サッシなどの解体材を販売して、文字どおり“建材リユース”の役割を担っていたが、高度経済成長と共に古材の需要が低下し、住宅解体が飛躍的に増加してくると、機械だけで安く手軽にこわす機械解体が導入されて、不法投棄や野焼きの温床であるミンチ解体が主流になってしまった。解体廃棄物は日本人の戦後最大の忘れ物だ」
 戦後60年近くを経て、解体業はようやく「原点回帰」の時を迎えたと言えるのかも知れません。
 

■ 適切な解体・分別手順

 
 解体工事には、木造解体、コンクリート建築物のRC造解体や鉄骨造解体など多くの種類がありますが、クワバラ・パンぷキンの場合は、木造解体が事業の中心となっています。
 木造解体はさらに、大小のかじやを駆使して上屋をこわす【手こわし解体工法】と、フォーククラブのような小型機械と人力を併用した【手こわし併用機械分別解体】に2分されます。最近の首都圏では同社も含め、【手こわし併用機械分別解体】が主流になっているとのことで、現場では、細かな解体手順に沿って再資源化できる木くず、がれき類を重点的に分別しながら作業が進められます。
 建設リサイクル法では、建築物に係る解体工事手順として、設備・内装材等→屋根葺き材→外装材・上部構造材→基礎及び外構、という順序を定めていますが、クワバラ・パンぷキンが一般的に採用している手順は次のようなものです。
(1)事前調査(地盤、地形、設備調査など)→(2)仮設工事(足場、シート掛け)→(3)内部解体(設備機器・石膏ボード・断熱材撤去)→(4)外部解体(屋根材の撤去)→(5)木造解体→(6)分別収集→(7)基礎解体(コンクリートを再資源化施設に搬入)→(8)整地
 こうした解体・分別の手順については、全解工連でも業界の健全な発展を目的に、『ビデオで学ぶ木造分別解体』『マンガでわかる住宅の解体とリサイクル』などの教材を1,700社の会員に無料配布して周知徹底に取り組んでいます。
 

■ 塩ビ業界はリサイクルの受け皿作りを

 
 住宅1棟の解体から出る廃棄物の組成については、使用されている建材の違いや分析方法の基準の不統一などのため必ずしも一定していませんが、標準的な例としては、全解工連が平成12年3月に行った木造(軸組)住宅解体組成分析調査の実施データがあります(下図)。廃プラスチックは重量では0.47%に過ぎませんが、容積では約3%(約59m3)を占めています。
 一方、分別した建設副産物に関するクワバラ・パンぷキンの処理フローは図に示したとおり。木くずはチップ化されて100%リサイクルされるほか、石膏ボード、がれき類、金属くずなども、同社の中間処分場・パンぷキン・デポ(埼玉県北埼玉郡騎西町)に集められ、それぞれリサイクルに回されます。
 廃プラスチック類はほとんどが埋め立てか焼却処分で、管・継手をはじめとする塩ビ建材も、パンぷキン・デポで減容・圧縮処理(日量28トン)された後、栃木県黒磯市に同社が所有する安定型処分場に埋め立てられます。
 但し、同社にとってもプラスチックや塩ビ建材のリサイクルは緊急の課題となっており、桑原社長は、「いずれ解体業者にもリサイクル率の明示が求められてくるであろうことを考えれば、プラスチックや塩ビもぜひリサイクルする必要がある。塩ビは安価で加工も施工も楽な建材で、安易な塩ビ批判論に組みするつもりはないが、リサイクルの受け皿がない。塩ビ業界がそうしたシステムを作ってくれれば解体業界としても塩ビをリサイクルに回していく用意は十分にある」と意欲を示しています。

 

■ 施主は最前線のごみGメン

 
 建築の適正な解体・分別とリサイクルを進める上でもうひとつ重要な要素となるは、工事の発注者(施主)の意識の問題です。
 「環境に対する関心が高くなっているにも関わらず、解体費用となると適正な環境コストを支払いたがらない傾向があり、そのことが不法投棄を促す要因にもなっている。発注者は、混合廃棄物、石膏ボード、瓦、廃プラスチック類などがどんな処理ルートで処理されているか、マニフェスト伝票でその行き先を是非確認をしてほしい。その上で、適正な処理には適正な価格が伴うことを理解してもらいたい」
 正しく処理している解体業者が報われるような社会にするためにも、「施主こそ最前線にいるごみGメンだということを忘れないで」と、桑原社長は強調しています。