2002年6月 No.41
 
特集/建設廃棄物リサイクルの現状(2)  

 (社)プラスチック処理促進協会が建築系廃プラの排出実態調査

 樹脂別・用途別・形状別に排出実態究明へ、日本初の調査継続中

  

 

 建設廃棄物リサイクルの動きが新たな進展を見せる中、建築系廃プラスチックの排出実態に関する重要な調査が(社)プラスチック処理促進協会によって進められています。建材とその周辺資材(梱包材や副資材)を含むすべての廃プラスチックの排出量を、新築工事と解体工事の双方について樹脂別、用途別、形状別に明らかにしようという我が国初の試み。建築系廃プラスチックのリサイクルを進めるための基礎データとなるもので、既に新築工事での調査は昨年で終了。現在解体工事について調査が続けられています。

 

■調査の背景と目的

 建設廃棄物中のプラスチック類の排出実態については、建設省による5年に1回の調査結果(特集1参照)など、これまでにもいくつかの調査データが存在しますが、いずれもプラスチックの排出量を総体的に把握したもので、樹脂別の実測データは全く見られないのが現状です。
 建設リサイクル法における特定建設資材として、プラスチック建材の指定が先送りとなっているのも、こうした基礎データの少なさが一因と考えられます。
 プラスチック処理促進協会による今回の調査(建築系混合廃棄物中の廃プラスチック再資源化のための基礎調査)は、こうした状況に対応して、プラスチック業界が自らの責任において再資源化のための基礎データを把握しようというもので、前章(特集1)で指摘された「混合廃棄物のリサイクル促進」という課題に取り組む上でも極めて重要な意味を持つ調査活動と言えます。

 

 

■マンション1棟、戸建住宅8棟の廃プラを調査

 その第一段階として、平成12年度に実施されたのが、新築工事における廃プラスチック類の排出実態の調査です。
 調査では、マンション1棟(延床面積6,330平方メートル、73室)および戸建住宅8棟(平均延床面積134平方メートル)を対象に、それぞれの建築工事から排出した廃プラスチックを樹脂別(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル軟質・硬質など19種類)、用途別(梱包・輸送資材、工事端材、工事副資材)、形状別(フィルム・シート、クロス類、床材、電線など11形状)に分類し、それぞれについて重量と容量を計測しています。このうち、マンション系の廃プラスチックは、従来から建設廃棄物に関して熱心な取り組みを続けている戸田建設鰍フ協力で集められたもの。また戸建住宅については、埼玉県と県下の住宅メーカー・中間処理業者で構成される「彩の国豊かな住まいづくり推進協議会」に協力をお願いして行われました。

 

■調査結果―形状により限定される樹脂の種類

 塩ビに関する部分を中心に調査結果の要点を整理してみます(表1参照)。
・新築工事に伴って発生する廃プラスチックの量は、非コンクリート造りの戸建住宅で建物の延床面積当たり平均1.0kg/平方メートル。これに対して、コンクリート造りのマンションでは、倍以上の2.2kg/平方メートルでした。
・樹脂別では、塩ビはポリエチレンとともに発生量が最も多い樹脂です。ポリエチレンはマンションで49%、戸建住宅で28%と、養生シートやセメント袋の発生が多い分、マンションでの割合が高くなっています。一方、塩ビの発生割合はマンション36%、戸建住宅38%であり、廃プラスチック発生量の3分の1を占める結果になりました。
・形状別では、クロス類(壁紙)、床材、電線のすべてと、成型品のほぼ半分が塩ビでした。
・用途別では、塩ビの発生は工事端材に集中しており、マンションからの工事端材の86%、戸建住宅からの工事端材の68%が塩ビでした
・形状によって、使われている樹脂の種類がかなり限られることが分かりました。例えば、フィルム・シートや紐・バンドはポリオレフィン系、クロス類、床材、電線は塩ビ、発泡品はポリスチレンなど、全体の50〜60%は工事現場でも形状によって樹脂の種類が容易に判別できます。

 

■塩ビ廃材の3割程度がリサイクル可能

 調査を担当したプラスチック処理促進協会調査部の浅野精一部長は、以上の調査結果について次のように考察しています。
 「現場で樹脂の種類を判別できるということは重要な事実だ。しかも、これらのプラスチックは、新築工事であることから全体に汚れの少ない、マテリアルリサイクルも十分に可能な品質のものであり、我々が行った解析結果では、マンションで53%、戸建住宅で60%の廃プラスチックが、マテリアルリサイクル可能と考えられる」(表2参照)
 「塩ビについてはクロス類、床材、電線被覆をまとめるとマンションで29%(塩ビ発生量の81%)、戸建住宅で32%(同84%)がマテリアルリサイクル可能だ。今回の調査では塩ビ管・継手は『成型品』に分類し、単独の形状区分を設けなかったため、マテリアルリサイクル可能な廃材として集計していない。つまり、塩ビのマテリアルリサイクルの可能性はさらに高くなると予測できる」
 「塩ビの発生が工事端材に集中しているということも注目に値する。新築時の工事端材の樹脂割合は解体時の樹脂割合にも対応すると考えられるため、解体時の廃プラ分別の中心が塩ビになることを示唆する結果と言える。今後の建設廃棄物の問題は塩ビを離れて論じることはできない」

 

■解体系の調査を継続。塩ビの量は予想以上

 同協会では現在、第2段階として解体工事の廃プラスチック類について同様の調査を行っています。解体工事については、建物の築年数によってプラスチックの使用量などが異なると予想され、築40年〜10年未満まで、調査対象を10年毎に4区分して、それぞれ2棟ずつ計8棟の戸建住宅について時系列的な動きを調査する計画。
 このうち、既に終了している築20年の住宅の調査結果からは、壁紙、床材、雨樋などのほか、電気のスイッチボックスなど表に出ていない部分にも予想以上に塩ビ製品が多く使われていることが分かっており、正確なデータ整理が終了すれば、全体の8〜9割近くが塩ビ廃材になるのではないかと予想されています。
 今年度の調査について浅野部長は、「単に樹脂量を把握するだけでなく、マテリアルリサイクルする上でどんな課題があるのか、現場から吸い上げられるようにしたい。また、10年後、20年後の排出動向を最新のソフトを使ってシミュレーションすることも考えている。そうしたデータを業界にフィードバックして、サッシ、壁紙、床材など製品ごとのリサイクル・システム構築を促進するための材料に利用したい」と語っています。調査結果の報告が待たれます。