2000年12月 No.35
 

 塩ビ床材のリサイクル、スタートへ

  関東・関西地区の新築工事端材から着手。(株)タイボーが中間処分場で協力

  これまで技術的に困難とされてきた塩ビ床材のリサイクルが、当協議会の賛助会員であるインテリアフロア工業会を中心にいよいよスタートします。このほど、同会の関係者から寄せられた報告(下記)では、まず関東・関西地区の新築工事で発生する端材・余材のマテリアルリサイクルから着手し、逐次対象地域を拡大していく計画。また、NKKの高炉原料化などを視野に入れた実験も既に実施段階に入っており、今後の進展が期待されます。  

塩ビ床材のリサイクル状況

インテリアフロア工業会技術委員長  
 海津 洋氏   

1.まえがき

  塩ビ製品が建築材料に使われるようになったのは、昭和35年(1960年)前後と思われる。当時、東大の星野昌一先生が、新建築材料として、塩ビ床材を推奨される講演会、研修会を頻繁に開かれ、各会とも盛況であったことを記憶している。
 あれから40年、塩ビ加工産業の製品がほぼ飽和点に達した今日この頃、産業界は環境問題に直面している。以前にも塩ビモノマー問題、可塑剤の食品への影響(ビニルハウスで栽培した野菜は食べられない)、ビニル床材は高層ビルには火災上危険(霞ヶ関ビル竣工時)、などと言われた時期が続いたが、これらは各業界で対応できたし、また対応してきた。
 しかし、ダイオキシンから始まる昨今の環境問題については、一加工業界で対応することは非常に難しいと言わざるを得ない。そこで、塩化ビニル環境対策協議会に参加して、他の加工団体と連絡・協議しながら、対応していきたい。

 

2.リサイクルへの取り組み

  ビニル床材業界は、現状ではリサイクルを実施していない。この第一の理由は、ビニル系床材に使用される建物の大半は、コンクリート下地に直接張り付けされる分野であることに起因する。即ち、コンクリートの分離技術の開発が第一優先となる。
 現在ある床材のコンクリートからの分離技術は、騒音、粉塵、剥離後の処理に難があるなどの問題があり、張り替え時にはむりやりこの技術を使うが、ほとんどは解体時にコンクリートとともに廃棄・埋立されている。
 建築廃棄物の埋立処分される中の0.01%はビニル系床材であって、9万トンに達するという調査資料もある。そこで我々塩ビ系床材メーカーの団体であるインテリアフロア工業会は、3年ほど前から、まず吉野石膏(株)や日東紡績(株)で実施している新築工事の端材・余材の回収・リサイクルについて研究をしてきた。

 

 

3.床材の裏打層にリサイクル

  新築工事での端材・余材の発生量は、投入量から推定すると年間1万1,000トンとみている。これを中間処分場の資格を有している所に運び、粉砕・選別してメーカーが引きとり、マテリアルリサイクルとして再利用することを計画している。
 幸い床材はほとんどのタイプが裏打層を有しているので、この層に再利用する。メーカーどうしの混合が生じても再利用が可能であることは確認済みである。
 中間処分場は、第1ステップとして岐阜県内で農業用ビニルのリサイクルに取り組んでいる(株)タイボーに協力を願い、ルートの確立とともに、関東・関西と拡げていく考えでいる。また、対象地域も関東から関西を中心にスタートし、逐次拡大する。廃掃法上では厚生省の認可が必要なので、この準備も平行して進めている。
 また、今後の展開(リニューアル工事など)を考えると、NKK方式(高炉原料化)・トクヤマ方式(セメント原燃料化)・新日鉄方式(ガス化)などの研究も忘れられないと考え、実験を実施している。