1999年3月 No.28
 
 

 材工(株)の電線リサイクル事業
   通信・電力系の廃電線を解体して銅、廃プラを再利用。塩ビの再生品開発も多彩

 

    塩ビ製品の中でも比較的再利用率の高い分野でありながら、意外に注目されることの少ない電線被覆材のリサイクル事業。各種電線の解体と資源の再利用に携わって28年の実績を誇る、材工株式会社(社長・森川一正 千葉県市原市八幡海岸通り6番地、TEL.0436−41−2584)の取り組みからその知られざる実態をレポートします。  

 

電線リサイクルのトップ企業

  現在、日本における電線の総生産量は、光ケーブルを除いておよそ年間96万トン。うち65%が銅線部分、35%が被覆材で、被覆材の素材には塩ビ(60%)を中心に、ポリエチレン(36%)、その他鉛、合成ゴムなどの素材(4%)が使われています(数字は電線工業会調べ)。
  また、塩ビの電線被覆については年間約12万トンが回収され、うち4万5,000トン(約37%)が既に再利用されています。
  塩ビが最も多く利用されているのは、絶縁性、耐久性に加え、耐候性にも優れている点が被覆材として高く評価されているからで、現代の文化生活にとって塩ビは欠かせない素材と言えます。
  今回ご紹介する材工?は、全国でおよそ220社程度あると推定される電線リサイクル会社の中でも最大手の企業で、電線ケーブルメーカー・古河電工(株)の100%出資により昭和46年に設立されました。同社の業務内容は、NTTや東京電力、その他電力各社から古河電工?が受け入れた通信・電力系の廃電線を受託解体する形を取っており、回収の窓口を親会社に一本化していることが、高いリサイクル率を支えるポイントとなっているようです。

 

■ 独自の連続式リサイクルシステム

  材工(株)が扱う電線のリサイクル量は、通信系と電力系を合わせて1ヵ月約3,000トンで、うち被覆材の廃プラは約520トン。組成は時によって異なりますが、平均して65%がポリエチレン、30%が塩ビ、残り5%がその他となっています。
  ちなみに、素材の割合が冒頭の数字と逆になっているのは、同社の扱う電線が通信ケーブルおよび電力ケーブルを主体としており、ワイヤハーネス、ビルハーネス等の一般電線が少ないためで、今村幸守プラスチック部長の話では、「電線は基本的にコアとなる銅線部分と被覆部分からできているが、被覆部分はさらにシースと呼ばれる外皮と、その下層で電線を保護する絶縁体の2層構造となっているのが一般的で、シースには塩ビ、絶縁体にはポリエチレンの使用が多い。特に通信ケーブルの絶縁層にはほとんどポリエチレンが使われている」とのことです。
  電線の処理工程は、シースを剥ぎ取り、絶縁体、コアと分別する一次解体と、次に絶縁体とコアを切断・粉砕して樹脂と銅を分離する二次解体に分かれますが(図参照)、ここで威力を発揮するのが古河電工(株)と材工(株)独自のノウハウから生まれた連続式ケーブルスクラップリサイクルシステムです。
  このシステムは、粉砕から分離までを高度に自動化したもので、環境への影響の少ない機械的で精度の高い分離能力を有しているため、高純度の銅が、高回収率、低コストで得られるほかに、かなりの部分廃プラの分別回収が可能です。

■ 再生不能の廃プラを生かす工夫も

 
  一連の作業工程を経て回収された銅は、用途に応じて小粒状の銅粒子、あるいは固形状のブリケット(8〜10kg)の形で古河電工(株)に出荷され、再び電線の素材としてリサイクルされることになります。
  一方、廃プラはペレット状に加工され、240トンが材工且ミ内で電線被覆材などに再利用されるほか、160トンが再生原料として加工メーカーに売却され、土木建築用のシート、遮音板、マット、車両用のシートなどに利用されています。
  また、廃プラのうちリサイクルに向かない低品質のもの120トンは産廃として埋立処分されますが、篠原総務部長によれば、「昨年、親会社である古河電工(株)千葉事業所と一緒にISO14001を取得したが、その過程で環境保全に対する企業の重要性を改めて痛感した。これからは、リサイクルの一層の促進と産廃量の削除に努めたい」とのことで、環境対策を求める社会的な要請はますます厳しさを加えています。
  こうした動きに対応して、再生不能の廃プラを少しでも再利用しようと開発されたのがエフライトと呼ばれる防護板です。これは長さ1m70cm、幅30cm、厚さ2cmの塩ビ製のシートで、電線や電線管などの上部30〜60cmの地中に敷設することにより、道路の掘り返し工事の際にツルハシなどの工具による破損から埋設管を守る働きをします。現在、1カ月10トン程度製造され、電力系の工事会社などで利用されています。

   

■ エコ電線の処理が課題に

 
  再生品の用途開発では、この他、塩ビの重さを利用して雑草の生育を防ぐ防草シートも実用化の段階に入っています。これは塩ビ被覆材に他のビニルを混ぜて硬度を調整したもので、最近の実用試験からもその効果が確認されています。
  このように、再生品の用途開発も含めて、材工(株)の電線リサイクル事業は順調な進展を見せていますが、一方では、今後必ず増加すると予想される光ケーブルの解体の問題など、新たな課題もいくつか出はじめています。
  最近話題となっているエコ電線の処理もそうした課題のひとつです。エコ電線とは、被覆材に塩ビを使わないことを謳ったエコロジーケーブルのことですが、反面、ポリエチレンなど素材の種類が多く、分別しにくいためリサイクルが難しくなるのではないかという問題を抱えています。「その意味では、塩ビのほうがはるかにリサイクルしやすい素材なのだが」という今村部長の指摘は、リサイクルの今後の"環境対策"に向けた、現場関係者ならではの疑問と言えるようです。