1998年6月 No.25
 

 ■質疑応答の概要

  

  講演終了後に行われた質疑応答の概要は次のとおりです(東京・大阪両会場から抜粋)。
 
 
【質問】化学物質のリスクを定量評価して管理していくという中西教授の考え方は非常に重要だと思うが、今後こうした視点を社会に普及させていくための対策を考えていますか。
 
【答え】私の研究については、ホームページ(web site;http://www.kan.ynu.ac.jp)でも情報提供しているが、今後はリスク管理の勉強ができる大学や社会人のための講座の開設などが必要だと思う。また、企業の関係者もリスク管理の認識を持ってほしい(中西教授)。
 
 
【質問】ヨーロッパにおける母乳のダイオキシン汚染の状況は?
 
【答え】母乳のダイオキシン汚染度は危険なレベルではない。これまで母乳で育った人、特に現在40〜50代の集団について明瞭な被害が出たという報告もないし、因果関係を証明できるデータはない(ラッペ教授)。
 
 
【質問】ダイオキシンの発生に関係すると疑われるものは使わないようにするべきではないか。
 
【答え】水俣病のように明らかな被害が出る前に手を打っておく必要はあるが、危なそうだという情報だけですべてを捨てるのは行き過ぎだ。ダイオキシンを全体として減らしていく必要は認めるが、発病や死亡が起きる確率は低く、それを踏まえた対策が必要である。(中西教授)。
 
 
【質問】焼却に関する国のダイオキシンの防止対策をどう考えるか。
 
【答え】焼却に関する日本の対応は遅れていたと思う。技術的には10年前にもできたことであり、実際自治体の中にはそういう動きもあった。問題は自治体が自分の意志で対策を考えても国の一律的な行政に従わなければならないという政策決定プロセスの在り方だ(平山教授)。
 
 
【質問】能勢町の住民だが、焼却場近辺の土壌から1,000ピコグラムものダイオキシンが検出されたことで農作物は売れず観光客も来なくなるなど状況は深刻だ。1,000ピコグラム以下でも汚染土壌は入れ替える必要があるという意見もあるが、これは本当か。
 
【答え】土壌汚染については環境庁でも研究が始まったところだが、対策が必要ということと、すぐに危険ということは別である。私は1,000ピコグラムでも今すぐ危険とは言えないと考えている。少なくとも、土壌を他所に持っていくという解決は考えないほうがよい。あくまで自区内処理を原則とすべきだと思う(中西教授)。