1998年3月 No.24
 

   硬質塩ビ板製品工業用塩ビ板

   ハイテク産業の根幹を支えるさまざまな製品群。耐薬品性、透明性など多彩な特性

 

 今回ご紹介する工業用塩ビ板は、前号で取り上げた高衝撃板と並ぶ硬質塩ビ板製品のひとつ。半導体装置をはじめとするハイテク産業分野での独壇場の活躍ぶりにご注目を。
 

● 半導体装置、液晶など“適材適所”

 
  硬質塩ビ板には、用途別に一般用と工業用の2種類があることは、前号のこの頁でご紹介したとおり。今回取り上げる工業用塩ビ板は、看板や広告塔などに使われる一般用とは異なり、現代ハイテク産業の中でさまざまな製品に姿を変えて、その根幹を支える素材として利用されています。
  工業用塩ビ板は加工性、自己消火性、透明性、機械強度、帯電防止機能、そして低コストなど、実に多彩な特徴を備えていますが、何といってもその筆頭に挙げなければならないのは優れた耐薬品性です。例えば、その代表製品である半導体装置。ミクロン単位の精密さを必要とする半導体の製造にはエッチング(食刻)工程、洗浄工程などで各種の薬品が使用されるため、その製造装置には高度の耐薬品性が求められます。この要求に応えられるのは、酸、アルカリ、塩類、油脂などに対して安定した性質を持つ工業用塩ビ板をおいて他にはありません。
  このほか液晶、ケミカルポンプ、写真現像設備、医療用機器、電子回路のプリント基盤製造設備など、耐食性を要求される分野での工業用塩ビ板の使用例は、まさに適材適所といった趣です。

 

● クリーンルームの制電プレートも

 
  また、SF映画などでもおなじみのクリーンルームにも、工業用塩ビ板の制電プレートが欠かせません。これは、透明性が高く外側から作業の安全を確認できる上、帯電防止機能によってクリーンな環境が最も嫌う微細なほこりをシャットアウトできるからです。
  このように、耐薬品性や透明性といった特性を兼ね備えているのは樹脂の中でも塩ビだけと言ってよく、競合する製品がほとんどないことから、工業用塩ビ板の需要は順調な伸びを見せています。硬質塩ビ板全体の中でも、塩ビの特徴をより生かした工業用のウエイトは年々高まってきており、1997年の統計では、一般用1万トンに対し工業用1万6,000トンと、かつての主流であった一般用を完全に追い抜いてしまいました。昭和29年の国内生産開始以来、技術改良と研究開発を重ね、独自の発達を遂げてきた工業用塩ビ板。その未来はまだまだ大きな可能性を秘めていると言えそうです。