1997年12月 No.23
 

 第6回塩ビ世界会議(大阪)から

  「塩ビ廃棄物のリサイクルや処理など、活発な意見交換」

 

    世界の塩ビ製造者が、塩ビ廃棄物の処理対策など各国に共通する塩ビの環境問題について情報を交換を行う「第6回塩ビ世界会議」(GVC '97)が、去る10月6日〜8日の3日間、大阪市のホテルニューオータニ大阪で開催され、ダイオキシン問題について「廃棄物中の塩素含有量とダイオキシンの発生量に相関関係はないが、塩ビ業界も引き続き発生の抑制や処理の技術の向上に寄与すべきこと」を確認するなど、多くの成果を収めて閉幕しました。会議の概要をレポートします。  

 

專田会長が環境問題への決意表明

  日本における塩ビ世界会議の開催は、1994年の東京会議(当時は「塩ビ3極会議」)に続いて2回目。今回は日米欧そしてアジアの15カ国から、計131名の関係者が参加するなど(参加国=欧州:ベルギー、フランス、ドイツ、ノルウエー、オランダ、イギリス/北米:アメリカ、カナダ/豪州:オーストラリア/アジア:中国、台湾、韓国、マレーシア、タイ、日本。うち海外からの参加者51名)、参加国・参加者数いずれも3年前の東京会議(12カ国90名)を大きく上回り、塩ビ関係者の世界的な連帯の動きが会を重ねるごとに広がっていること実感させました。
  会議では、まずホスト国日本を代表して歓迎の挨拶に立った專田彬塩化ビニル工業協会会長(塩化ビニル環境対策協議会会長、東亞合成株式会社社長)が、日本における塩ビ産業の近況報告とともに業界として積極的に塩ビの環境問題に取り組んでいく決意を表明、続いて米欧各極の塩ビ協会会長が挨拶を行った後、実質的な協議に入りました。

 

ダイオキシン問題について踏み込んだ議論

  協議は、(1)各地域からの最近の状況報告、(2)特別報告、(3)佐伯康治塩化ビニル工業協会副会長(新第一塩ビ株式会社社長)による特別公演、(4)共同声明の採択などの順で進められましたが、今回の会議で最大の特徴となったのは、(2)の特別報告の中で、塩ビとダイオキシンの問題についてこれまで以上に踏み込んだ議論が交わされたことです。
  特別報告は、◎塩ビ忌避の動向とコミュニケーション、◎塩ビとダイオキシンの関係、塩ビ廃棄物のリサイクルと処理などをテーマに意見交換したもので、このうち塩ビとダイオキシンの関係については、「ダイオキシンは物の製造や焼却など熱化学反応工程により非意図的に微量生成する物質で、その発生源は多数あること」「主たる発生源として廃棄物の焼却過程でダイオキシシは生成するが、廃棄物中の塩素含有量とは相関がなく、その発生量の度合いは焼却条件が関与していること」「焼却過程で塩ビを除去してもダイオキシンの発生低減にはならず、焼却条件の改善、即ち高温度による完全燃焼が重要であること」などを科学的に証明された事実として再確認する一方、業界としても引き続き「ダイオキシン発生の抑制や処理の技術の向上に寄与する必要がある」との認識で一致。こうした見解を共同声明の中に盛り込んで社会にアピールしていくこととなりました。
 

 

日本の製鉄用高炉原料化に注目

  このほか、塩ビ忌避の動向とコミュニケーション問題については、一部の塩ビ忌避の動きに対して懸命に反論の努力が続けられていることが各国から報告され、特に塩ビの有用性や社会的な貢献度について「客観的なデータの裏付けにより、それを分かりやすい形で社会に広報することが肝心」との指摘がなされました。
  また、塩ビ廃棄物のリサイクルと処理に関しては、各国の塩ビ廃棄物処理の実例や今後のリサイクルスキーム作りについて情報交換が行われ、農業資材、バイプ、床材、建材などそれぞれの製品別にでき得る限りマテリアルリサイクルを推進することの必要が確認されたほか、更なるリサイクルの手段として製鉄用高炉原料化や脱塩酸後の塩化水素の有効利用など、クローズド化システムの研究・開発に取り組む日本の活動報告も参加者の注目を集めました。

 

人類に役立つプラスチックとして −

  一方、会議の冒頭に行われた各地域からの近状報告では、まず米国が、前回のブダペスト会議で発表した「Viny12020」(2020年までの塩ビ業界の将来像を予測したもの)について、その行動計画(環境問題への対応など)が実施段階に入ったことを報告。欧州各国からは、マテリアルリサイクル中心のドイツ、環境問題で苦慮するオランダなど国々で事情が異なり、対応方法にも差があることが報告されたほか、日本からも、最近の環境問題の動向、特にダイオキシン問題に関連した規制強化の動向とこれに対する業界の対応策(焼却技術等の研究、広報活動等)が示されました。
  なお、佐伯副会長の特別講演は、「PVC工業のアジアにおける展開と21世紀の課題」と題してアジアにおける今後の塩ビの需要予測などを示したもので、「廃棄物の削減など環境問題を克服することで、塩ビは今後も人類の役に立つプラスチックとして生き残っていくことができる」という主張に参加者の共感が寄せられました(次項目に講演要旨)。
  会議の最後にはGVU ′97の総まとめとして共同声明が採択され、次回の会議(GVU ′98)を来年10月中旬にメキシコで開催することを決定して、3日間の協議に幕を降ろしました。

 

■塩ビ世界会議(GVC ′97)共同声明の概要■

  1.参加者は、塩ビ製品が過去半世紀にわたって社会のあらゆる分野で使用され、人々の生活と社会の向上、発展に貢献してきたことを誇りとするとともに、今後も環境保護と社会の持続的発展に引き続き寄与できることで意見の一致をみた。

 2.参加者は自らの責任として、塩ビ製品の製造、使用、リサイクリングおよび処理に関して、環境影響を最小化するための技術開発とシステム作りに取り組み、廃棄量の減少とリサイクル量の増加を積極的に推進することを再確認した。

 3.参加者は、広く社会に対して塩ビ製品の利便性と省資源・省エネルギ−性について積極的な広報活動を展開し、塩ビが合理的に評価されるよう努めることで合意した。

 4.参加者は、一部の活動家の科学的合理性を欠いた主張に基づく塩ビ忌避に対しては、全ての人々が理性ある判断を下すことができるよう、塩ビが環境に優しい材料であることの正しい情報や資料を操供することに合意した。

 5.参加者は、塩ビの製造と使用に係わる全ての発表が正確で正直なものでなければならないこと、更にはマスメディアが塩ビ業界に関わる報道について収集し伝達する情報が正確であることの重要性を認識してもらうよう、働きかけていくことを誓い合った。

6.参加者は、塩ビとダイオキシンとのかかわり合いに関して、科学的に以下のことが証明されていることを確認した。

  (a)ダイオキシンは、ものの製造や焼却など熱化学反応工程で非意図的に微量生成する物質で、その発生源は多数ある。
  (b)廃棄物の焼却処理において、ダイオキシン生成量は廃棄物中の塩素含有量と相関関係がなく、焼却条件が支配的な要因であることが研究の結果証明されている。
  (c)したがって、塩ビを除去してもダイオキシンの発生量は低減しない。ダイオキシン発生量の低減は、焼却条件の改善(高温、完全燃焼)によって達成される。

 7.参加者は、ダイオキシン発生の抑制や処理の技術の向上に引き続き寄与すべきであることを再認識した。