1996年12月 No.19
 

塩ビ止水板ダムやトンネルの浸水・漏水を防ぐ半永久的な建設資材

 

  ダムやトンネルは私たちの暮らしを支える基盤設備のひとつ。その設備の目に見えないところで、人知れず重要な役目を担い続ける“縁の下の力持ち” −「塩ビ止水板」って何?
 

●  奥尻島の復旧にも活躍

 
  ダムやトンネルといったコンクリートの巨大建造物は、工法上どうしても継ぎ目ができる上、気温によって膨張伸縮する性質を持っているため、そのままでは漏水や浸水などのトラブルが避けられません。止水板とは、こうしたコンクリートの継ぎ目に埋め込んで浸水や漏水を防ぐベルト状の(最大で幅40cm、厚さ9mm)建設資材で、塩ビ製の止水板は、1954年アメリカで初めて開発され、日本でも2年後の昭和31年には市販されるようになりました。
  塩ビ止水板協会の北村敏彦事務局長によれば、「それ以前は銅やステンレス、ゴムなどが止水材として用いられていたが、現在では『止水板といえば塩ビ』といって過言ではない」とのことで、市場の90%以上が塩ビ製で占められています。主な用途は、前記のトンネル、ダムのほか、上水道や貯水槽、下水処理場、農業用水路、防波堤、地下駐車場など大半が土木用で、有名な黒部ダムや青函トンネルにももちろん塩ビ止水板が使用されています。また、平成6年の奥尻島沖地震では、防波堤用の止水材として塩ビ止水板も災害の復旧に大きな役割を果たしました。

 

●  酸、アルカリにもビクともしない耐久性

 
  塩ビ止水板が急速に普及した第1の理由は、その優れた耐久性にあります。空気中や水中の酸素、あるいはコンクリートの強アルカリ等にも侵されず耐薬品性の高い塩ビは、半永久的な使用に耐え、一度埋め込まれたら廃棄されることはまずありません。数年前、大阪の浄水場の改修工事に際して昭和35年に施工された塩ビ止水板の劣化率調査が行われましたが、原因はコンクリートのヒビ割れで、
 止水板には全く劣化が認められませんでした。これは昭和31年に市販されてから使用状況を調査した初めての事例で、関係者も驚くほどの耐久性を証明した調査結果と言えます。
  このほか、1.熱加工性が良くコンクリートになじむ、2.強い弾性がありコンクリートの伸縮に自在に対応できる、3.施工性がよく軽量で作業しやすい、などの点も塩ビ止水板の優れた特性として挙げられます。最近では、板の両端に水膨張性の機能を付加した製品も上市されており、止水板とコンクリート界面の水密性をさらに高めるなど、製品の改良も進んでいます。
  現在の需要は年間約2400トン(平成7年出荷量ベース)で、需要度の高いトンネル用が止水板を使わない新しい工法の開発によって減少の方向にあるものの、平成8年は上半期で1156トンとほぼ安定した需要が続いています。一般には殆ど知られることのない塩ビ止水板。しかし、これこそが「耐久資材として本領を発揮する」塩ビ本来の用途であることがお分かりいただけたでしょう。
  既に千葉県の袖ケ浦で1年間の試運転を終了しいるTIFG型溶融炉。来年6月からはいよいよ日量20トン規模の実証運転が藤沢市で開始される予定となっていまいす。