1996年12月 No.19
 

 第5回「塩ビ世界会議」がブタペストで開催

  世界の塩ビ関係者が意見交換 −塩ビの有用性PRと環境対応の必要を確認

 

   世界の塩ビ製造者が一堂に会し、塩ビ廃棄物の処理問題など塩ビの環境問題について情報交換する第5回「塩ビ世界会議」(GVC ′96)が、去る9月24日〜26日まで、ハンガリーのブタペスト市で開催されました。今回の会議では、塩ビの有用性のPRと同時に、企業の自主責任に基づく環境問題への対応の必要が確認されるなど、国際協力の緊密化へ向け具体的な成果が得られました。3日間の会議の模様をレポートします。  

 

24カ国から130人が集合

 塩ビ業界では、日米欧の関係者が情報交換を行う場として1992年から「塩ビ三極会議」を開催してきましたが、今回の会議からは、可能な限り世界の塩ビ業界関係者が参加する形式とするためその名称を「塩ビ世界会議」(Global Vinyl Conference)に変更し、「国際社会における塩ビ産業の発展を真に反映する会議体」として新たなスタートを切ることとなりました。
 会議には、昨年のトロント会議の13カ国85人を大きく上回る24カ国130人が参加し、日本からも塩化ビニル工業協会の專田彬会長(塩化ビニルリサイクル推進協議会会長)以下全15名が参加して、講演や現状報告などを行いました(今回の参加国は次のとおりです/欧州=オーストリア、ベルギー、デンマーク、フランス、ドイツ、ノルウェー、オランダ、イタリア、スペイン、スイス、スウェーデン、イギリス、ハンガリー、北米=アメリカ、カナダ、南米=ブラジル、メキシコ、ベネズエラ、コロンビア、オースラリア、アジア=日本、中国、イスラエル、インド)。

 

当協議会の研究報告にも注目

 会議は「日米欧の会長挨拶」「各国の近況報告」「特別報告および講演」「パネルディスカッション」などのスケジュールで進められました。このうち、会長挨拶では專田会長が日本における塩ビ産業の動向と環境問題への取り組みの方向についてスピーチを述べ、特に「環境問題はレスポンシブルケアーの精神で対応することが必要である」ことを強調しました。
 各国の近況報告では、塩化ビニル工業協会の松井専務理事が、1.日本政府のダイオキシン、有害大気汚染物質等の対策、2.廃プラの油化技術、高炉還元材への応用技術等のトピックス、3.塩化ビニルリサイクル推進協議会の活動など、塩ビ廃プラ問題を含む環境問題の最近の動向について報告しました。特に無機塩からの塩化水素発生を確認した塩化ビニルリサイクル推進協議会の研究報告(本誌第18号)は各国から大きな注目を集めたようです。
 一方、アメリカからは97年初頭に出される予定となっているEPAのダイオキシン評価報告書について、「内容は十分把握していないが、焼却炉とダイオキシンの関連については塩ビ固有の問題としてでなく焼却方法の問題、即ち温度や滞留時間などの燃焼条件が重要問題として取り上げられるだろう」との見通しが示されました。
  また、欧州各国からの報告では、国によっては塩ビ忌避の動き沈静化していないなど、それぞれ異なる事情の中で対応の方法にも若干差がある様子がうかがわれました。
 

 

賛同集めた米「Vinyl2020」

 特別報告では、トロント市議会における上下水道用塩ビパイプの使用可否問題が、カナダの協会(VCC)の積極的な活動によって使用継続の可決という形で決着したこと、マテリアルリサイクルに重点を置いてきた欧州塩ビ製造協会(ECVM)が、その限界から更なるリサイクルの可能性を探るべく取り組み課題を見直し中であり、エネルギー回収も有効な手段であるとの考え方に傾いてきていることなとが報告されたほか、米国塩ビ工業協会(VI)からは「2020年における塩化ビニル;来る四半世紀における進歩、挑戦および予測」と題する報告(Vinyl2020)が示されました。
 この報告は、経済・技術両面から今後四半世紀における塩ビ業界の将来像を明らかにした上で、塩ビ業界として何をなすべきかを提言したもので、「塩ビ製品は良い性能を持っているので、塩ビ業界はそのベネフィット、利便性を訴えていく必要があるが、同時に塩ビ製品の製造・加工・消費・廃棄処分に至る段階まで、責任を持って対処するスチワードシップ、経営責任が大切である。このことについて、世界のすべての関係者がアイディアを出し合い、グローバルな活動として推進していく必要がある」とする提言が参加各国の賛同を集めました。

 

子供にも理解できるPRが必要

 最終日には、会議のフィナーレとして日米欧会長ら7名によるパネルディスカッションが開かれ、冒頭、塩ビ協の日野海外部会長が「日本における塩ビ忌避の状況とイメージアップ対策」と題して講演を行いました。
 日野部会長の講演は、塩ビに対する誤解の是正や、塩ビをスケープゴートにした企業PRへの対応事例を報告しつつ、塩ビ廃棄物の処理に前向きに対処していくことの重要性を訴えたもの。討論ではこの提言に基づき会場参加者も含めて塩ビ忌避に対するイメージ再構築のための最適な方法は何かについて意見が交わされ、結論として、「塩ビに関する正しい情報を広く社会に提供するとともに、塩ビのすばらしさを絶え間なくPRすることが大事だが、そのためには、誰にでも、例えば14才の子供にでも理解できるように、かみ砕いた内容で説明することが必要である」ことが確認されました。
 最後に「GVC ′96」の共同コミュニケ(別掲)を採択するとともに、次回の「GVC ′97」を来年10月上旬に日本で開催することを決定して、3日間にわたる会議に幕を下ろしました。

 

第5回塩ビ世界会議(GVC ′96)共同コミュニケ(抜粋)

  •  参加者は、21世紀の環境保全と持続可能な発展を実現しなければならないことを認識するとともに、塩ビ産業に関わる環境問題への積極的な取り組みが、塩ビを製造する企業の存在と活動の必須条件であることを確認し、自主的かつ責任ある行動をさらに進めることを誓い合った。
  •  参加者は、環境学的に誤った情報に基づいて塩ビ忌避の動きがある場合は、その対応について相互に諸提案することを合意した。参加者一同は、塩ビを使用する顧客が理性ある判断を行えるように、塩ビが環境に優しい素材であることを実証するとともに、正確な情報を提供し続けてゆくことを誓い合った。
  •  参加者は、昨年の会議において欧州ECVMから提案された、塩ビ業界専用の新しいオンライン情 報システム「世界情報処理センター」(Global Information Clearing House;略称GICH)の完成を歓迎した。
  •  参加者一同は、塩ビ製品の利便性について、広く社会一般に対して、あらゆる広報活動を継続的に推進していくことを誓い合った
      既に千葉県の袖ケ浦で1年間の試運転を終了しいるTIFG型溶融炉。来年6月からはいよいよ日量20トン規模の実証運転が藤沢市で開始される予定となっていまいす。