1996年6月 No.17
 
 

 富山県「南砺リサイクルセンター」の固形燃料化事業
   全国初の自治体運営施設、塩ビも含めすべての可燃ごみを無公害処理

 

    今回訪れたのは、自治体が直接運営する全国初のRDF製造施設として注目を集める砺波広域圏事業組合の「南砺リサイクルセンター」(富山県福光町立野原966、TEL0763−52−4710)。
  《有職者に聞く》に続いて、都市ごみ固形燃料化の現状に焦点を当てます。
 

『煙突のないごみ資源化処理センター』

  福光町、城端町、井口村の3町村、約3万3,400人分のごみ処理施設として昨年3月に南砺リサイクルセンターが竣工してから1年余(本格稼動は6月から)、各界の注目の中でスタートした固形燃料化事業はここにきて極めて順調な動きを見せています。
  もともと同地区では、センターの竣工直前まで昭和50年に完成した焼却施設によりごみ処理が行われており、当初の計画では老朽化したこの施設を更新する方向で作業が進められていました。その計画が途中でRDFプラントの建設に変更された理由について、同センターの西村潔所長は次のように説明しています。
  「焼却施設の更新を検討していた過程で、奈良県榛原町の商業化プラントなどで行われている固形燃料化の情報が入ってきたのです。実際に視察してみると、焼却の必要がないので何よりも環境に優しい施設であること、焼却灰も少なく最終処分場の延命に貢献できること、建設コストも焼却施設の7割程度と安く熱エネルギーが利用できることなど、いくつも優れた特長のあることがわかってきた。
  この時点で私たちの頭の中に『焼却施設に戻る』という考えはなくなってしまった」
  中には、「計画をなぜ変更するのか」「生ごみの手で選別するような汚い作業を誰がやるのか」といった批判もあったようですが、平成5年2月には厚生省の国庫補助第1号固形燃料化施設となることも決定。西村所長ら関係者の熱意は、(株)日本リサイクルマネジメントの技術協力により、2年がかりで『煙突のないごみ資源化処理センター』として結実することとなりました。

 

■ 消石灰の添加で塩化水素を抑制

   センターのごみ処理能力は、1日7時間運転で28トン(水分50%)で、固形燃料ベースでは半分の14トン。連続運転でフル稼動すれば1日100トンのごみ処理も可能とのことですが、現在の稼動状態は1日20トン程度で、この中から約10トンの固形燃料が製造されています。
  製造工程は次頁の図に示したとおりで、磁力選別→1次破砕→乾燥→風力選別→2次破砕といった工程を経て、2〜3pまで廃棄物を細かくする一方、ガラス、陶器類などの不燃物や異物が徹底的に除去され、水分も6%程度まで乾燥されます。成型された燃料は直径1.5p、長さ3〜4pのクレヨン状で、全工程に要する時間は約30分。
  製造工程はコンピュータ制御で完全に自動化されており、破袋兼異物分別機で大きな異物を自動選別するシステムを取り入れなど、手選別は全く行われません。この「手選別ゼロ」への挑戦も南砺リサイクルセンターの注目すべき特長のひとつと言えます。
  また、固形燃料焼却時の塩化水素ガスの発生を抑えるために最終段階で消石灰が添加されますが、その量は処理するごみのおよそ1%で、うち0.2%は実際の焼却時に調整用としてボイラーに使われます。ごみの中には、塩ビも含め約2割のプラスチックが含まれますが、「現在の比率であれば、塩ビなどの廃プラが含まれていても問題は全くない。塩化水素の測定値はボイラーの出口で2ppm未満と基準値の430ppmに比べて圧倒的に少なく、熱量も5,000〜5,300キロカロリーと、予想以上の高カロリーが得られる」と、西村所長は説明しています。

■ 利用計画も万全、公共施設の冷暖房など

 
  出来上がった固形燃料は、3町村内の公共施設等の冷暖房、給油、融雪用などに利用されますが、センターでは現在、年間2,200トンの燃料が生産されており、そのうち、1,300トンを福光町、600トンを城端町、100トンを井口村が利用する計画が進められています。
  福光町では、町内の特別養護老人ホーム「やすらぎ荘」が昨年9月にRDF専用のボイラーを設置しており、ここでは約1,000トンを冷暖房と給油に利用する計画。同町の中学校でもボイラーの建設工事が進んでいます。その他、町営温水プール(福光町)や東海北陸自動車道のサービスエリアの冷暖房(城端町)などにも利用の計画があり、これに現在センター自身が消費している200トンを合わせると、燃料の需要はほぼ確保される勘定となります。
  「同じ灰にするのなら焼却と固形燃料化のどちらが環境にいいのかということが事業の原点。建設コストの安さや熱利用はあくまで副次的なものと考えるべきだが、そういうことも総合して、RDF化はどんな自治体にもできる最善のごみ処理方法だと思う」(西村所長)
 最近では三重県が進めるRDF発電の実験用に試料の提供を求められるなど、他の自治体からの注目も高まる南砺リサイクルセンターの固形燃料化事業。見学者の数は、この3月末で既に561団体8,485名に達しています。