1996年3月 No.16
 
使用済み農ビの無公害熱分解処理装置、元田電子工業が新開発

24時間連続運転で2.4トンを全自動処理、コンパクトなサイズで地域の農ビ問題解消

 一昨年、医療系塩ビ廃棄物などを無公害処理する減圧熱分解処理装置の開発で注目を集めた元田電子工業(株)(元田謙郎社長:東京都杉並区上高井戸1−17−11、TEL.03・3304・2112)から、今度は使用済み農ビの処理を目的とした効率型連続熱分解装置「RP−2000」が発売されます。新製品の詳細を一足先に本誌が独自レポート。

 

■ 無酸素処理で公害防止

 
  元田電子工業はロボット工業の中核企業で、一連の塩ビ廃棄物処理装置の開発にもロボットで培われた自動制御技術が随所に生かされています。
  新発売のRP−2000は、東京都の補助金を受け5年の歳月をかけて開発されたもので、使用済み農ビを無酸素の減圧下で熱分解することにより、ダイオキシンの発生や排ガスの漏出を防ぎ、無臭・無煙の状態で3%程度の容積にまで炭化することができます。残渣の組成は殆どが農ビに付着した砂で、これは再び土壌に戻して利用することも可能。 また、排ガス中の塩化水素は炭酸カルシウムなどを使って湿式洗浄する仕組みで、これら一連の工程は複雑な温度調節を含めて全自動で処理されるシステムとなっています。
 

■ 農協、自治体の農ビ処理拠点に

 
  こうした無公害の構造は、基本的に既発の医療系廃棄物処理装置と同様ですが、RP−2000の最大の特徴は従来のバッチ式炉(8時間運転)に代えて回転式炉を用いたことにより24時間の連続運転を可能にしている点。
  このため、1日当たりの処理量は医療用装置の600kgから2.4トン(1時間100kg)にまでパワーアップしていますが、装置のサイズは幅2×高さ2.3×奥行き5.72と医療用(1.8×2×3)よりやや大型化した程度で、地域の使用済み農ビの処理には最も手頃な大きさと言えます。
  同社では、今後大量の農ビ処理に悩む農協や自治体を中心に販路を広げていく計画で、既に熊本市への納入が決まっているほか、葉山市からも関心が寄せられているとのこと。
  「再利用できる農ビは再利用すべきだが、どうしてもそのルートから漏れる部分を無公害処理するのがこの装置の目的。農ビ需要の大きい県でも数カ所の拠点に置けば大きな威力が期待できる」と元田社長。医療用、農業用と進んで、次は工業用塩ビ処理装置の開発が同社の目標となっています。