1995年12月 No.15
 
アースイングの塩ビ分離・再生技術

―三井物産との連携で塩ビリサイクルの拠点づくり―

 

 

■ バージン並みの品質、溶剤も再利用

 
  電線や自動車部材などの塩ビ複合材から塩ビだけを分離・再生する新技術が、いま塩ビ関係者の期待を集めています。
  株式会社アースイング(阿部政和社長、本社=岐阜県各務原市西町6−272)が開発したこの技術は、特殊な溶剤で塩ビ複合材を溶解して不純物を取り除き、真空乾燥によってバージン並みの塩ビに再生するもので、低温処理のため再生塩ビの物性が殆ど変化・劣化しない、分離後の電線や自動車のステンレスなども再利用できる、ランニングコストが少なく経済的、など多くの優れた特長を備えています。
  また、下の図でも分かるように、クローズドシステムの中でほぼ完全に溶剤を回収・再利用できて(回収率98.6%)コストメリットが大きいこともポイントのひとつ。この溶剤は非フロン系、非芳香族のものを使用しているため2次公害の心配もありません。

 

■ 商品名『カミノレアル・システム』

 
  アースイングの阿部社長は、昭和40年代に廃プラの油化に取り組んだ経験から塩ビ複合材の分離技術の必要性に着目、「塩ビがあるために廃プラの処理が困難という『塩ビ悪者論』をなんとか正したい」という強い思いがようやく今回の分離・再生技術に結実し、平成4年には同社の設立に漕ぎ着けました。
  その後、平成6年には通産大臣による特定新規事業の認定を取得、さらに理研など大手ユーザーがいち早くこの再生塩ビを取り上げ品質を保証してくれたこと が事業展開の追い風になったと言います。
  同社では現在、三井物産との業務提携により300トン/月規模のセミコマーシャルプラントを建設して実証運転を行う一方、カミノレアル・システムという名称でプラントの販売を進めていますが、
 販売を担当する三井物産では「プラントを全国販売して各地に塩ビリサイクルの拠点を整備したい。アースイングはその第1歩という位置づけ」と説明しています。
  また、再生された塩ビは元の会社に戻して再利用してもらうのが基本ですが、アースイング独自の用途開発にも意欲的で、その成果の一部は既に床材、建築材などとして販売されています。