1995年3月 No.12
 
 

 豊田ケミカルエンジニアリングの産廃処理事業
   万全の排ガス対策で塩ビ含有廃プラを安全焼却

    今回モデル事例に取り上げたのは、中京地区最大手の産廃処理業者・豊田ケミカルエンジニアリング株式会社(愛知県半田市日東町1−30)電話0569−22−5028)。塩ビを含む廃プラスチックを無公害に焼却処理する一方、「廃棄物は資源」という理念からリサイクル活動にも意欲を見せる同社の、取り組みの一端をご紹介します。  

月間1万2千トンの処理能力

  豊田ケミカルエンジニアリングは、月間1万2千トンの処理能力を有する日本有数の産廃処理業者のひとつです。昭和48年、当時の公害問題の高まりに対応するため豊田通商の子会社として設立された同社は、当初、工業用潤滑油剤の製造から廃油の再生加工および焼却までを一貫して処理する豊田グループ内の一部門として事業をスタートしました。
  その後、トヨタ自動車をはじめとするグループ企業の工場から出るさまざまな廃棄物についても、その処理を望む声が高まったことと経済成長に伴い、順調に発展を続け、現在では処理品目も廃油や廃アルカリ、廃プラ、ゴム・金属くずなどから感染性医療廃棄物等の特別管理産業廃棄物まで多岐にわたっており、産廃処理が売上の80%を占めるに至っています。

 

■ 最新式の炉で廃プラを無公害処理

  知多半島のほぼ中央部、三河湾に流れ込む阿久比川沿いの三角州の突端に位置する約8万uの敷地内に、豊田ケミカルエンジニアリングの焼却施設は建っています。
 焼却炉は第1号〜第3号まで3基を備えていますが、このうち現在稼動しているのは2号炉と3号炉の2基で、処理量(月間)は2号炉の4千トンに対して、3号炉は倍の8千トン。
  これらのシステムは、いずれその規模に応じて各種の環境保全機能が装備されていますが、「塩ビを含む廃プラスチックを無公害に焼却処理できる」という同社の特徴を語る上では、何といっても平成4年に竣工した最新式の3号炉の役割を見逃すわけにはいきません。

■ 2段構えの徹底した排ガス対策

 
  3号炉の処理システムは下のフローシートに示したとおりですが、この中で特に注目したいことは、この炉が電気集塵機とイオンスクラバー(湿式電気集塵機)の2段構えで、徹底した排ガス対策が可能となるよう設計されている点にあります。
  3号炉では、固形物とカロリーの高いものはメインのロータリーキルンと2次焼却炉により800〜900℃の高温で完全焼却されるほか(2号炉ではロータリーキルン方式の汚泥焼却炉と大型の廃棄物用として固定床炉を設置)、廃液や廃油類は別系統の高温焼却炉で処理される仕組みになっており、これらの工程から発生する排ガスは、電気集塵機に集められて煤塵を除去された後、さらにイオンスクラバーを用いて完全に無害な水蒸気として大気中に放出されます。
  塩化水素ガスの中和もこの最終段階で行われますが、アルカリ洗浄などに用いられる大量の排水は、一滴も外に漏らされることなく処理されるクロースドシステムになっており、この点もシステムの大きな特徴となっています。

   

■ 廃プラは多種類の複合材中心

 
  豊田ケミカルエンジニアリングの場合、廃プラスチックの処理量は年間でも約6千トン程度(約14万トン強の5%以下)と、これまでのシリーズで見てきた事例に比べるとむしろ少ないほうに入ります。
  これは、中京地区の埋め立て地にまだ余裕があるため埋め立て処理を行う企業が多いこと、また、種類別にプラスチックを選別できる場合は、各企業の工場内でリサイクルしているケースが少なくないことなどの事情によるものです。それだけに廃棄物として集まってくるプラスチックの内容は、大抵の場合、選別しにくい複合材が中心となっており、塩ビについてもパイプや樋などの単一製品より、自動車部品のように他の素材などと複合した製品が圧倒的に多いのが現状です。

 

■ 豊田グループの責任と信頼にかけて

 
  こうした混合廃プラスチックを安全に処理する上で、説明したような細心の排ガス対策がいかに重要な役割を果たしているかは言うまでもありません。
  「豊田グループの責任と信頼にかけても、お客さまからいただいた産廃は適正に処理するのが当社の方針。排ガス対策は絶対であり、それが県や市の信頼と期待につながっている」と言い切れるのも、技術的な裏付けあってこその自信と言えるでしょう。

 

■ 熱回収や残渣のリサイクルが課題に

 
  しかし、環境面からの排出規制が進むのに伴って、豊田ケミカルエンジニアリングの産廃処理事業も新たな局面を迎えつつあるようです。
 産廃処理事業の将来について同社では、「企業の間にできるだけ産廃を出さないという動きが強まっており、このままでは事業の縮小にもつながりかねない」と捉えており、今後はリサイクル、再資源化を事業の重要な柱に位置づけていこうという姿勢を見せています。
  同社はこれまでも通産省の外郭団体クリーンジャパンセンターと協力して乾留熱分解によるプラスチックの油化や有機汚泥等のコンポスト化の実証試験に取り組むなど、リサイクルには積極的な対応を続けてきました。
  また現在でも、廃熱ボイラーで熱回収をおこなったり(高圧スチームを燃焼ガスを誘引するファンの動力源として利用しているほか、低圧スチームは潤滑油製造や工場内各施設の熱源として有効活用)、廃液用ドラム缶のリサイクルなどに取り組んでいますが、今後は熱エネルギーの新たな利用方法や廃車、廃家電製品のシュレッダーダストを熱源として有効利用するサーマルリサイクルなどが主な課題として考えられているようです。
  「廃棄物とは原材料のひとつ」という同社の理念が、今さらに大きな意味を持とうとしているのです。