2023年3月 No.118 

インフォメーション1

ウェルダー加工をはじめとする
高い技術力の株式会社モリシタ

塩ビ素材の扱いに精通し、
加工技術のバリエーションの多さで要望を叶える

写真:イメージ

 高周波ウェルダー加工は、電磁波を用いて素材同士を溶かし、加圧と冷却によって溶着する技術。塩ビ製のシートや合成皮革に代表される誘電性の熱可塑性樹脂(熱により変形する樹脂)に、高周波(電磁波の一種)を照射。分子運動によって発生する内部からの熱によって溶着部を溶かして繋ぎ合わせます。
 糸を使う縫製や表面加熱によるヒートシールとは異なり、樹脂を分子レベルで繋ぎ合わせるため、溶着強度が非常に高いのが特徴です。
 今回は、株式会社モリシタ 森下祐介取締役に高周波ウェルダー加工をはじめとする塩ビ加工についてお話を伺いました。

塩ビ素材の良さを活かす高周波ウェルダー加工

 塩ビ樹脂の加工しやすい特徴の一つに、ウェルダー加工性(熱溶着性)があります。
 高周波ウェルダー加工は、今から70年以上前に開発された技術。小型の設備で容易に塩ビシートや合成皮革を溶着できます。自由度の高い優れたウェルダー加工を活かして、これまで多くの日用品が製造されてきました。
 特に溶着部に強度と信頼性が重視される製品では、塩ビと高周波ウェルダー加工の組み合わせが用いられています。塩ビシートを高周波ウェルダーで溶着すると、製品自体の気密性を非常に高く保てるためです。

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「塩ビ素材は軽量で丈夫。そんな特徴が重宝されて日用品をお求めのお客様に選択されることが多い素材ですね。
 手帳カバーやゴルフのスコアケースなどの塩ビ製品では、溶断面を工夫したり縫製加工を施すことで、本革のような質感に近づけることも可能です。審美性を高めながらも、耐久性や耐水性といった塩ビ素材のメリットを活かした製品づくりを行っています」(森下氏)
 「塩ビは折れ曲がりのあとやシワが残らないのも大きな特徴。折れシワによる製造途中で生まれる不良品も少なく済むので、エコにつながっていると思いますね」(森下氏)
 ㈱モリシタでは、溶着加工機器の他にも、裁断機器、縫製用ミシン、印刷機、型抜き機など数々の加工設備を用意。顧客からの短納期での依頼に応える時には、一つの製品に対して、同時進行で複数の加工を施すこともあるそうです。
 ウェルダー加工は、加工時に専用の金型を使うことで、溶着と溶断を同時に行ったり、複数個の加工を同時に実行できたりするなど、効率的な運用も得意な技術です。

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製品づくりの幅を広げる、環境に配慮した塩ビ素材

 ㈱モリシタでは環境への配慮のための取り組みを進めています。「『端材は混ぜればゴミ、分ければ資源』と考え、製造工程ではゴミを出さない」という価値観を社内で共有。積極的に塩ビ素材のリサイクルを実施しているそうです。
 「一般の塩ビシートと発泡塩ビシート(発泡剤を混ぜて質感を変化させたもの)、他のプラスチック素材、紙素材と、工場内で使われる素材ごとにきっちり分別すれば、塩ビはリサイクル可能です。さらにモリシタでは塩ビ素材の中でも有色と無色を分別してリサイクルを実施。リサイクルを進めれば最終的な焼却処分量を減らすことができますし、回収された端材は再生材になり新しい製品づくりにも活かせます。リサイクルを徹底するというのは基本でありながらも、最も環境に配慮した運営方法でしょう」(森下氏)
 また近年の環境保護への意識の高まりは、お客様からの依頼にも表れているといいます。㈱モリシタでは、環境に配慮した製品を求められた場合は、再生材(リサイクル塩ビシート)や植物由来の成分が含まれる塩ビシートを提案。塩ビは材料を選ぶ際にも豊富なバリエーションから検討できるので、お客様の納得する製品づくりに繋がりやすいそうです。

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高い技術力と管理力で、業務用製品分野へも参入を目指す

 これまで多くのノベルティグッズの製造を担ってきた㈱モリシタですが、コロナ禍を経てフェイスシールドなどの業務用製品の需要の高まりを実感。これからもノベルティグッズの製造ニーズに応えつつも、新たに包装材などの業務用製品分野での展開を進めていく方針です。

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 「これまで関わってきたノベルティグッズの分野は、将来的にはアプリのポイントなどに置き換わっていくのではないかと考えています。
 そこでモリシタでは、安定的に需要がある業務用製品の分野でのシェアを増やしていきたいと思っています。
 また、自社工場に関しては『品質=人質』という意識を持って運営しています。工場内で徹底しているのは、スタッフの業務プロセスをなるべく単純化し、業務内容を明確に把握できるようにすること。こういった地道な努力を積み重ね、熟練したスタッフを育てると共に、万が一製品に不具合があった場合でも対象製品を迅速に回収できるという確実なリスク管理を続けていきます。
 ものづくりに対する誇りを大事に、これからは新たに工場などで使用される工業資材などの製品づくりに挑戦し、成長していきたいです」(森下氏)

高周波誘電加熱の原理

 物体を加熱する方法には、外部加熱と内部加熱があります。外部加熱は対象に外から熱を加える方法で、身近な加熱のほとんどが該当します。一方、内部加熱は電子レンジのように電気や磁気を利用して対象の内側から加熱する方法で、高周波誘電加熱は内部加熱になります。
 塩ビなどの電気を通さない「誘電体」に高電圧をかけた場合、対象内の分子は一斉に同じ方向を向き、プラスとマイナスの方向が揃います(誘電分極)。この電極のプラス/マイナスを高速で切り替えることで、分子同士が衝突や摩擦し、熱を発生させています。これが高周波誘電による内部加熱の原理になります。

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イラストは精電舎電子工業㈱ホームページより引用

高周波誘電加熱によって熱可塑性樹脂の加工を行う装置

 「高周波ウェルダー」とは、塩ビなどの「誘電体」(誘電特性を持つ熱可塑性樹脂)を高周波誘電加熱によって溶着する装置のことです。手帳カバーや免許入れ、バック、ソファーなど、身の回りの日用品、医療・工業用品など、幅広い用途に使用されています。
 身近なところでは、浮き輪やゴム手袋、ターポリンなどの塩ビシートを溶着する際に使用されています。医療機器では輸血バッグにも利用されています。
 高周波ウェルダーは、「発振器」で高周波電力を供給し、「制御ボックス」で溶着時間の設定や電流値を確認することができます。「プレス」に取り付けた「金型」で溶着部に圧力をかけながら高周波電界を加える事でシートの溶着を行います。
 高周波ウェルダーは、外部加熱方式(ヒートシール)に比べて、溶着強度や外観の仕上がりに優れています。ヒートシールでは、ヒーターで加熱した熱板をシートに押し当てる事で溶着します。熱板からシート表面に熱が伝達するため、シート表面は必要以上に高い温度に加熱することになります。高い熱にさらされたシート表面は変色したり、糸引きやバリなどが発生して外観を損ねます。
 一方で、高周波ウェルダーは内部加熱なので、シート全体の温度が高くなり、過剰な熱をかけないために変色などのトラブルは起きにくくなり、強度と外観を保つことができます。

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イラストは精電舎電子工業㈱ホームページより引用

 以上、高周波ウェルダーを簡単に説明しました。

株式会社モリシタ

 1954年に創業し、プラスチック加工技術を活かして手帳・ノートの表紙カバーを製造。その後、ノベルティーグッズなどを含む幅広い分野での製品づくりを展開しています。
 日本全国に営業所3ヶ所、工場3ヶ所を設け、企画から製造まで自社でワンストップ生産。熟練したスタッフのもとでの高い品質と短納期での仕上げが評価され、取引先から厚い信頼を獲得しています。