2019年3月 No.106
 

去O豊に見る、プラスチックリサイクルの近況

中国廃プラ禁輸措置の影響、そして塩ビ管リサイクルの現状は?

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 中国の廃プラ等固形廃棄物受入れ停止などで、プラスチックのリサイクルをめぐる状況に大きな変化が起こりつつある中、リサイクルの現場にはどのような影響が出ているのか。東日本におけるプラスチックリサイクルの拠点であり、塩化ビニル管・継手協会が運営する塩ビ管・継手リサイクル事業の協力会社としても活動を続ける有限会社三豊(本郷辰豊社長、本社=茨城県神栖市)のリサイクルセンター(同県稲敷市)を訪れ、事業の近況を取材しました。

●月300トンの廃プラをリサイクル

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事業の現状を説明する本郷社長(左と)
石川郁夫リサイクルセンター長

 三豊は、本郷社長が平成6年に立ち上げた会社で、設立時の社名が「システム住設」だったことからも分かるとおり、もともとは給排水の敷設などをメインとする設備工事業者でした。
 リサイクルの分野に進出したのは平成17年のことで、施工現場から出る塩ビ管・継手の端材を何とか有効利用したいという思いから、中間処理業の許可を取得すると同時に、リサイクルセンターを新設して、塩化ビニル管・継手協会のリサイクル事業に参加。以後、各種廃プラスチックのリサイクルにも手を広げるなど、事業領域を拡大してきました。また、平成23年の東日本大震災発生時には、稲敷市、鹿島市、潮来市などの周辺自治体から発生した塩ビ管廃材の回収、リサイクルに従事するなど、地元の復興に大きく貢献しています。
 同社の廃プラスチック取扱量は現在およそ300トン/月。そのほぼ9割が塩ビ系廃棄物で、うち約100トンが塩ビ管・継手、残りの170トン程度が樹脂サッシや雨樋などの硬質系と、電線被覆材やシートなどの軟質系となっており、いずれも破砕〜粉砕処理を経て、リサイクル塩ビ管を初めとする各種塩ビ製品の再生原料として利用されているほか、韓国、台湾、インド、ケニアなどへの輸出も進められています。
 塩ビ以外のプラスチックは、ポリエチレンのフィルムやパレット、発泡スチロールトレー、架橋ポリエチレン管、ポリブテン管などが主で、これらの再生原料についても、国内のメーカーでの再利用と同時に、東南アジアなどへの輸出が行われています。

ポジティブリスト制度において管理する物質

ストックヤードに山積みされた使用済み塩ビ管 廃プラスチック破砕機 塩ビ管の再生原料。サイズは15o程度 フレコンパックされて出荷を待つ再生原料

●中国禁輸措置の影響は微少。塩ビ取り合いの動きも

 中国が環境問題への対応強化策として、プラスチック廃棄物の全面輸入禁止に踏み切ったのは2018年3月。それからほぼ1年を過ぎて、日本国内でも様々な動きが報じられる中、同社の事業にはどんな影響が出ているのか、本郷社長に聞きました。
 「中国はもともとPPやPETなどは受入れていたが、塩ビは殆ど入れていなかった。また、当社の場合、塩ビが9割と大半を占めている上、他の廃プラも中国には出してこなかったこともあって、直接的な影響は殆ど出ていない。ただ、全国的に見ると、PPやPETなどはやはり国内で溢れはじめていて、質のいいものならペレット加工してリサイクルできるが、質の悪いものは埋立処分か、せいぜいRPFの原料化といったケースが増えている。しかし、それにも限界がある。RPFは製紙会社やセメント会社も使い切れなくなっているし、埋立費用も軒並み3割、4割増しというのが現状だ」
 「直接的な影響は殆どない」と言う本郷社長ですが、こうした状況は同社の事業に間接的な影響を与えてもいます。「PPやPETなどが出せなくなった結果、技術的にリサイクルしやすい塩ビに他の業者がどんどん集まってきた。我々のライバルがすごく多くなって、塩ビの取り合いが始まっている。それが唯一困っている問題だ」
 その一方で、最近は中国の業者が日本に工場を作りPPやPETをペレット加工して、第三国経由で中国に輸出する動きが出ているともいいます。「中国も産業発展のためにはものがなくなっては困るわけだから、実は完全にストップしているわけではない。姿を変えて中国に入っている」
 プラスチックリサイクルの現場は、なかなか分雑な様相を呈しているようです。

●リサイクル企業としての責任

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塩ビ雨樋の再生原料

 では、塩ビ管のリサイクルはどうなっているのでしょうか。
 本郷社長は「当社は解体系か設備工事の端材が多いので、様々なグレードの塩ビ管廃材が入ってくる。このうち、汚れなどの少ないAクラス級のものは再生塩ビ管の原料として利用できるが、グレードの低いものはどうしても輸出が多くなる」とした上で、「そうした問題はあるものの、社会的責任を担ってリサイクルを進めている塩ビ管・継手リサイクル事業協会の姿勢には共感する。協会の看板を上げていることで当社の信頼度も上がり、宣伝効果も高まる。看板を見て廃材を持ち込んできてくれる業者も多い。協会には、再生品を使う会社のモチベーションが上がるような対策をさらに進めてほしい」と語っています。
 最後に、これまで廃プラスチックのリサイクルに取り組んできた感想を伺いました
 「塩ビを中心として仕事をしてきたので、PETのように価格の上がり下がりに翻弄されたり、景気不景気の波に飲み込まれたりすることはなかったが、正直リサイクルはやはり難しいという思いが強い。何より世の中の理解がなかったらできない仕事だ。中間処理施設を新たに作ろうと思っても、土地を探すのに試行錯誤しなければならない。地域住民の同意を得るときも『人のためになるいい仕事だと思うが、できれば他でやってくれ』と言われることも多い。行政の許可も、新規の施設の場合は最低3年は掛かるし、最近は人手を確保するのにも四苦八苦している。それでも、塩ビ管の端材を何とかしたいと思って始めた仕事だし、リサイクル企業としての責任があると思っている」