2018年3月 No.103
 

進化する塩ビファッション、今年も話題

衣服は消耗品じゃない!使い捨て時代への警鐘に塩ビもひと役
上田学園コレクション2018から

 学校法人上田学園 上田安子服飾専門学校(大阪市北区)が主催する「第140回 上田学園コレクション2018」が1月20日、「PROGRESS プログレス−ファッションの未来と進化−」をメインテーマに、グランフロント大阪のコングレコンベンションセンターで開催されました。注目のファッションショーでは、学生創作による約240点のコレクションの一部として、素材に軟質塩ビシートを使った作品が出品され、使い捨て時代への警鐘を込めた斬新なデザインが話題を集めました。

●ストロベリージェネレーションの反撃

 塩ビファッションを制作したのは、ファッションクリエイター学科トップクリエイターコース2年生のグループ。いずれの作品も「ストロベリージェネレーション〜甘ったれ世代の戦い方」という制作テーマに基づいて、若々しい創造性を存分に羽ばたかせたデザインとなっています。
塩ビ管の粉砕品
図柄をプリントした透明な塩ビシートに裏地を付け、中綿を入れて、ミシンでキルティングしている。手の込んだ仕上げだ。
 「ストロベリージェネレーションというのは台湾で使われている言葉で、日本語だと、ゆとり世代とか甘ったれ世代みたいな意味。私たちがその世代です。大量生産・大量消費時代の中で育った世代だけど、モノも衣服も消耗品として扱われ、模倣され、捨てられていく風潮には疑問を持っている。それは違うんじゃない?という私たちなりの思いを、ファッションを通じて訴えようと思いました」(制作者の一人、高橋伶奈さん)
 その思いを伝える素材として一役買ったのが塩ビシート。今回の作品は、古着屋から手に入れたトレンチコートなどの古着をきれいに修繕した後、一度解体していろいろなパーツを組み合わせるという方法で制作されていますが、その上に重ねられた塩ビシートには、倉庫に積み上げられた廃棄前の大量の服の写真を再加工した図柄がプリントされています。大量生産・大量消費への皮肉を込めたアイデアで、印刷性の高い塩ビならではのデザインといえます。

●PVCnextとのコラボレーション

 上田学園では2012年から、関西塩ビ加工メーカーの若手経営者グループ・PVCnextとのコラボレーションに取り組んでおり、今回もグループの会員会社が塩ビシートの提供や図柄の印刷などで協力を行っています。
 昨年も塩ビファッションの制作に参加した上田花菜さんによれば「8月にグループテーマを決めて、9月から制作を開始しましたが、PVCnextとの連携はとてもスムースでした。印刷の仕上がりも思った以上の出来映えで、色もすごくよく出ていて、びっくりしました」とのことです。

●ファッション素材としての塩ビの可能性

屋先生
屋先生
 PVCnextとのコラボで学生の指導に当たっている上田学園の屋但先生(産学官連携推進室次長)は、今回の成果について次のように総括しています。
 「毎年コラボレーションを繰り返すことで、学生たちのレベルが格段に上がってきている。その吸収力は素晴らしいと思います。塩ビという素材は、光沢感や透け感など今のファッションの方向性を表現するのに適した素材で、学生たちはそういう素材の特徴を敏感に捉えて、作品に生かしているようです。いまの若者は塩ビをオシャレなものとして受け止めています。ファッション素材としての塩ビの可能性は、ますます広がっていくと思います」

「もっとカッコよくなる」「制作意図にピッタリ」「新しい発見」
-塩ビファッションに挑戦した3人の声

上田 花菜さん

去年は、塩ビでレインコートを作りましたが、今回はポケットを付けたり、デザインのディテールが細かかったので大変でした。2年続けて塩ビを使ってみて、エンボス加工などを利用すれば、もっとカッコよくなる可能性がたくさんあると感じました。

寺田 悠馬さん

塩ビを使うのは初めてです。今回は立体的に見せたい部分に塩ビを使ったのですが、軟質といっても、布では出せない硬さがあるので、ぼくの制作意図にぴったりの素材でした。友だちからも「とても面白かった」と言ってもらえました。

高橋 伶奈さん

私も、塩ビは、初めてでしたが、貴重な体験でした。塩ビを使うと、ファッションにボリューム感が出ます。
最近は海外でも新しい素材との組合わせに挑戦しているブランドが増えていますが、私も今回のコラボで新しい発見ができたと思います。