2017年7月 No.101
 

発想はモノから生まれる!(株)ナカダイのリユース事業

イマジネーションと想像力で廃棄物を見つめ直し、新たな用途を生み出す

ソーラーパネルを天板に利用したテーブル   樹脂サッシの窓枠を加工したブローチ
ソーラーパネルを天板に利用したテーブル。   樹脂サッシの窓枠を加工したブローチ。断面のフォルムの美しさ・面白さを引き出した驚きの造形。

 太陽光パネルがモダンなテーブルに、樹脂窓枠がおしゃれなブローチに−なるほど、こういう手があったのかと思わず唸る創造性。単なるリユースでもなく、いわゆるアップサイクルともひと味違う。捨てられたモノを見つめ直して新たな用途を生み出す(株)ナカダイ(本社 東京都品川区、中台正四社長)のチャレンジに注目。

●廃棄物の価値の見直し

事業への思いを語る中台常務
事業への思いを語る中台常務

 来年で創業80周年を迎えるナカダイは、産業廃棄物の中間処理業として長い実績を有する会社で、都内に本社機能を置き、群馬県前橋市のリサイクルセンターを拠点として関東一円の廃棄物処理に携わってきました。平成5年には、そうした活動が評価されて群馬県における廃棄物再生事業者第一号に登録されています。
 しかし、今回本誌が注目するのは、同社のもうひとつの柱であるリユース事業のほう。企業や個人から不要になったモノを引き取り中古品として流通させるMRC(マテリアル・リバース・センター)、分別解体した廃棄物を新たな素材、商品として再生させるモノ:ファクトリー、の2つを軸にした同社の取り組みは、廃棄物の削減、さらには廃棄物の価値の見直しという点で、きわめて独創的な試みといえます。
 それにしても、本来、廃棄物の減少は経営のマイナス要因となるはずの中間処理業が、何故リユースなのか。同社の中台澄之常務にその思いと取り組みの経緯を伺いました。
 「まだ十分使えるものを潰してリサイクルすればOKという考え方がずっと疑問だった。きっかけは平成15年の六本木ヒルズのオープン。その数年前から周辺のオフィスの移転に伴って大量の事務用品・機器が廃棄されるようになり、総合事務用品メーカーから当社に処理の依頼がきた。そのとき当社が提案したのは、潰さずにリユースすべきだということ。リユースという言葉自体耳新しかった頃だが、メーカーも賛同してくれたため、平成13年にMRCを開設すると同時に一般廃棄物処分業の認可も取ってリユース市場を立ち上げた」
 MRCでは現在、企業、一般個人からオフィス家具や一般家具、電子機器、衣服・食器に至るまで様々な不要品を買い取り、メンテナンス終了後、週一回専門業者を対象にした競り市を開催しています。

●モノ:ファクトリーの多彩な活動

多種多様な素材が展示されているモノ:ファクトリーのギャラリー
多種多様な素材が展示されている
モノ:ファクトリーのギャラリー

 一方のモノ:ファクトリーは、本業の中間処理業を土台として生み出された事業です。
 「当社の中間処理のリサイクル率は95%を優に超えるが、分別が上手く出来ているのでモノの状態が非常にいい。これをリサイクル以外に使う方法はないかと考え抜いた末に到達したのが、廃棄物から新たな素材を生産するということ。これができたら中間処理業でも量に頼らない商売ができるのではないかという思いで、平成23年にモノ:ファクトリーを立ち上げた」
 モノ:ファクトリーの活動は、@解体・分別された素材や、その素材を使った新しい作品・商品の紹介、A廃棄物の面白さを体験してもらうワークショップの開催、B親子や学生、企業のための工場見学などを組み合わせた内容で、中でも新たな用途に生まれ変わった作品・商品の多彩さは写真に見られるとおり。同社では、こうした商品開発のために様々なクリエイターとコラボしています。また、ワークショップは前橋支店だけでなく都内の大手デパートや小中学校、さらには東京芸術大学などの美術系大学でも行われており、「美大生にいろいろな素材を見せて、その形状と機能から全然別な使い方を探ってもらうと、新しい魅力が発見できて非常に参考になる」といいます。

●廃棄物という概念がなくなる社会

 モノ:ファクトリーは、リマーケティングビジネスのモデルとして2013年度グッドデザイン賞の未来づくりデザイン賞を受賞していますが、中台常務は「我々は何も特別なことをやっているわけではない」と言います。「毎日何十トンもの廃棄物を見続けたら誰でも何かしたい気持ちになる。将来は世の中から廃棄物という概念がなくなって、中古品も新品も同じように使われるような社会になってほしい。そういうことを実現したいために、当社はいろいろなビジネスにチャレンジしているのです」

新たな命を吹き込まれた製品群。

①跳び箱をリメイクしたテーブル&ベンチ。   ②廃棄されたLANケーブルから生まれた新素材パスタ・クロースで作った犬のオブジェ。他にサンダルや鞄もある。   ③自動車のシートベルトをリユースしたベルト・シート。   ④ドラムの内部に電球を入れたペンダントライト。

(株)ナカダイのプロフィール

 昭和12年創業(法人化は昭和31年)。当初は金属スクラップの収集販売をメインとしたが、戦後、自動車部品の取扱いで事業を拡大。昭和53年に前橋支店を開設し産業廃棄物の収集運搬業務を開始した後、平成4年には産業廃棄物中間処理業に進出。金属、廃プラなどの総合リサイクルセンターとして事業を展開する一方、同13年からは、一般廃棄物処分業の認可取得を契機にリユース事業をスタート。MRCを新設し、東日本最大規模の中古品オークションを運営する。同23年、「発想はモノから生まれる」を合言葉に、廃棄物から新たな素材を生産するモノ:ファクトリーを前橋支店内にオープン。本文中に見られるとおり、多彩な活動を展開している。 モノ:ファクトリー