1994年6月 No.9
 

 無公害焼却プラント研究の最新報告

  シミュレーションテストで都市ガス並高カロリーガス回収に見通し

 

    資源・エネルギー回収ワーキンググループが、(社)化学工学会に委託して研究を進めている「無公害焼却プラント」のモデルシステムづくり。その平成5年度の研究結果がまとまりました。今回の最大の注目点は、塩ビを含む廃プラスチックを熱分解することで都市ガスなみの高カロリーガスを回収できる見通しが得られたこと。プラスチック廃棄物のサーマルリサイクルにまた新たな可能性が見えてきました。  

 

回収ガスの「高カロリー化」がメインテーマ(平成5年度研究)

  当協議会の資源・エネルギー回収ワーキンググループが取り組んでいる「無公害焼却モデルプラントの研究」は、塩ビを含むプラスチック廃棄物を安全に焼却して、その熱エネルギーを有効利用しようとするものです。
  昨年度(平成4年度)の研究では、プラスチックを直接焼却して熱エネルギーを回収する<焼却タイプ>に比べて、熱分解してガスを回収した後に焼却を行う<ガス化タイプ>のほうが、プラントの建設コストやランニングコストも安く、処理システムとしては有望であることが確認されています。
  しかし一方で、プラスチック廃棄物の組成を塩ビ20〜50%、その他50〜80%とした場合、回収されるガスの熱量が1立法メートル当たり2000kcal程度に過ぎず、実用化するにはあまりに低すぎるという問題が残りました。
  このため、平成5年度は「回収ガスの熱量を高めて付加価値をつけるにはどうしたらいいか」ということが研究のメインテーマとなりました。今回の報告はそのシミュレーションテストの結果をまとめたものです。

  研究では、「試料の組成は塩ビ20〜50%、ポリエチレン50〜80%。処理量5トン/hで連続運転を行った場合」という条件設定に基づき、まず350℃で熱分解して塩化水素を回収した後、次の分解温度をこれまでの750℃から1000℃まで引き上げてガス化を行うという方法を検討してみました。しかし、この方法ではあまり効果を期待できないことが分かりました。

 

メタン化などの工夫で高カロリーガスを回収

  次に、1350℃までガス化の温度を上げると同時に、廃プラスチックの中に30%の廃油または廃タイヤを混ぜて熱分解する方法をシミュレーションしてみたところ、ガスの熱量は1立法メートル当たり3000kcalまで上昇することが分かりました。しかし、都市ガスやプロパンガスに比べればこれでもまだ低カロリーで、広い用途に供するには限界があります。
  そこで、今度は上のやり方に加えて、ガス中のメタンガス濃度を高くする方法を検討してみました。これは、ガス中に約50%含まれている一酸化炭素を、水素を加えることによってメタンガスに変換するという方法ですが、その結果、熱量は5000kcalにまで上昇し、ようやく都市ガスレベルの高カロリーガスを回収できる見込みが得られました。
 

 

広がる可能性、プラ処理協で実証試験の予定も

  このように今回の研究では、塩ビを含む廃プラスチックを熱分解して、一般に使用されているレベルのガスを回収できる技術的な見通しを得られたことが最大の収穫と言えます。また、メタン化のための設備を付け加えてもプラントの建設費は若干高くなる程度で、コスト的にも大きな魅力があることが分かりました。
  以上はまだシミュレーションテストの結果に過ぎませんが、その有望性に注目したプラスチック処理促進協会により、今年度その実験研究が進められる予定になっています。こうした実用化の研究が進めば、ガスホルダーに溜め込んで工場に熱原料として供給するなど、可能性はさまざまに広がっていきそうです。