1992年9月 No.2
 

 第1回「塩ビ3極会議」ワシントンで開催

  日・米・欧の関係団体が塩ビ廃棄物・リサイクル問題で連携へ

  日・米・欧の塩化ビニル関係団体が一堂に会し、塩ビ廃棄物やリサイクル問題 について協議を行う第1回「塩ビ3極会議」が、去る9月2日〜4日まで米国の首都ワシントンで開催されました。日本側の呼びかけに米・欧の関係団体が賛同して開催が実現したもので、会議には日本の塩化ビニル工業協会、米ビニルインスティテュート、欧州塩化ビニル製造者協会の3団体およびそのメンバー企業から総員約50名が参加。国境を越えた塩ビ業界の協力体制作りへ向け、連日、活発な議論や情報交換が繰り広げられました。

 

 

● 環境に優しく再生しやすい特性を評価

  英国のマークス&スペンサー(M&S、本社・ロンドン、資本金3億ポンド)は、年商約58億ポンド(約1兆3千億円、1991年)、英国を中心に280の店舗を持つ最大手のスーパーマーケットチェーンです。このM&S社が、トレー類の素材を地球環境の保護と商品パッケージの効率的利用の観点からPVC(塩化ビニル樹脂)に統一することを決定、併せてトレーの大規模なリサイクル事業に乗り出し世界的な反響を呼んでいます。
  M&S社における塩化ビニルの主な用途は、<straight−on−trays>と呼ばれるもので、商品(主にヨーグルトなどの冷蔵食品)の流通用ケースと陳列ケースを兼ねた機能を持っています。商品が数十個入ったこのトレーはそのまま店内の棚の上に並べられ、空になるたびに棚から取り除かれていくシステムで、同社ではこの<straight−on−trays>用のPVCシートを年間約2000トン消費していますが、これまでは一度使用されたトレーは再利用されずに捨てられるままになってきました。
  しかし、環境問題に高い関心を持つ同社では廃棄物低減の具体的な目標として「包装は包装に戻すべきである」との言葉を掲げて、包装資材のリサイクルに取り組むこととなりました。今回の<straight−on−trays>のリサイクルもその一環として着手されたもので、当初はこれに替わる代替品の開発・再使用も検討されましたが、既に 80種類もの異なったデザインが採用されていることなどもあって方針を変更。解決策として、トレーの素材を、一部に使用されている非結晶性PETや配向ポリスチレンを廃してすべてPVCに統一することで、同じ用途への材料のリサイクルを推進するとの決定がなされました。


 

●  今後のリサイクル運動に一石を投じるか?環境先進地・欧州の選択

  では、M&S社がトレーの素材としてPVCを採用した理由は何なのでしょう。同社の環境部長L.RANDALL氏は「包装材料の使用量の低減、顧客にとって魅力のある安全な営業がいかなる場合でも会社の方針である」と、環境問題に対する基本的な姿勢を明らかにした上で、「PVCは大変環境にFRIENDLYな物質だ」と述べています。既に「塩ビって何」の項でもご紹介したとおり、石油のみでは作られない唯一の硬質プラスチックであるPVCは、他のいかなる熱可塑性樹脂より地球環境への悪影響が少なく、かつ再生がたいへん容易であるという特長を持っています。M&S社がPVCへの統一を決定したのはこうした特性を評価したためで、加えて、英国の小売店協会も好ましい包装材としてPVCを支持していることも、今回の決定の重要な要因になったものと考えられます。
  M&S社では既にチェーン内のリサイクル・システムを確立し、上記のリサイクル事業を開始していますが、トレーの用途も食品用ばかりでなくトイレタリー、ギフトおよびホームケアー商品などにまで広がりを見せ始めています。資源再利用の対応策の一環として環境先進地である欧州の企業がPVCを選択したことは、今後のリサイクル運動のあり方に大きな影響を与えそうです。


  「3極会議」における山口会長の挨拶、および共同声明の概要は次のとおりです。

●  第1回「3極会議」における山口会長挨拶(要約)

  本年6月にブラジルで「環境サミット」が開かれ、地球環境問題に対処するために世界的なパートナーシップの必要性が認識された。「持続可能な開発」の基本となる経済発展と環境保護の両立を達成するためは、経済界は自らイニシャチブを発揮していかなければならない。破棄物処理の問題も緊急な解決が求められる重大な環境問題のひとつだが、我々塩化ビニル工業協会や塩化ビニルリサイクル推進協議会では、塩ビのリサイクルおよび焼却技術についての研究開発を行うとともに、塩ビの有効性などに関して市民に対する情報普及に努めてきた。
  しかし、塩ビの環境問題への取組みを更に進めるためには、一国のレベルだけでなく国際的な連携を取ることが必要である。日・米・欧の代表がこの問題について各国の実情、問題、対策等に関する情報や意見を交換することで、より科学的、合理的かつ現実的な解決策を見出すことができるはずであり、その結果を各国で提示すれば、市民に塩ビを正しく理解してもらうことができると確信する。

● 共同声明の概要

  • 我々は、塩ビ製品が社会の利益に貢献していることを世界中の人達に知ってもらうため共同して一層の努力を行う。また、塩ビ製品の良き提供者となるよう引続き努力するとともに、環境に対する責任を果たしていくことを再確認する。
  • 我々は、環境の保護と経済発展は両立するものであり、それらは基本的に相互に結びついていると考える。そのため、我々は各国の事情に即した塩化ビニル製品廃棄物リサイクルのシステム並びにその技術を開発すると同時に、塩ビ廃棄物の安全かつ経済的に有益なサーマルリサイクルとしての焼却技術の開発を推 進し、エネルギーの回収を図る。
  • 我々は、リサイクル計画を継続的に推進するために不可欠な、塩ビ廃棄物処理に要する費用に関して正確な情報を提供したいと考える。また、第三者による研究を活用して必要な情報を提供し、各国の政府が科学の良識と経済学の常識に基づいて環境対策を実施することを要請する。